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№ 43 ケレス、光からの使者の導きを信じ、未来を切り開く一歩を踏み出す

 これからケレス達にも及ぶ災難を長が話し始めた。

 それにアルトの話も加わり、ケレスはこれから水鏡の国が辿る運命を知る。

 そんなケレスの前に、また何の気紛れ化、ひらひらとあの蝶が姿を現すのだが……。

「小童達‼ 他人事ではないぞ‼

 青龍の奴は今から見境なく攻撃をやりおるぞ‼」

 長は大声でこれから起こりうるケレス達に降りかかる災難を話した。

「他人事じゃない⁉ まさか、俺達もああなるのか?」

 その恐ろしい災難を聞いたケレスが頭を抱えると、

「青龍様はその昔、怒り狂って暴れ、雨を数十年間もの間降らせ海を創ったと聞いた事がある。

 そして、雷を落とし続け土地の姿を変えたとも聞くね」

と、急にアルトが静かに昔話を始め、

「アルト⁉ 何で今、昔話をするんだ?」

と、ケレスが聞くと、

「じゃから、その昔話と同じ事が今ここで行われ様としておるのじゃ‼」

と、長はケレスの頭の上でピョンピョン飛び跳ねながら答え、

「へっ⁉ じゃあ、これから雨が降り続くのか?

 そして、地形が変わるのか?」

と、ケレスは理解したが、

「そんなもんじゃないよ。青龍様はこの国ごと滅ぼして海の底に沈める気だろうね」

と、話を恐ろしい未来へと修正したアルトの眉間には少々のしわがあったが冷静だったので、

「ちょ、ちょっと‼ 何て恐ろしい事を平気で言うんだ⁉」

と、また頭を抱えたケレスが言ったその瞬間、ゴオオッとまた滝の様な雨が降り出した。

「まさか、もう始める気なのか⁉」

 そしてケレスが空を見上げると、空を真白に染める稲光が走り、

その中には青い稲光が走るのも見え、

「か、雷……?」

と、その雷に怯えたケレスが言葉を漏らすと、いくつものドンガラガラッ!と衝撃音と地響きがあり、

「……始まったわい。青龍の破壊行為が、の」

と、それに紛れ静かな長の声が聞えた。

「長殿⁉ 何で冷静でいられるんだ‼ 俺達ここにいたら危ないじゃないか‼」

 あまりにも冷静でいる長に苛立ったケレスはそう怒鳴ったが、

「じゃから、儂が協力しておるのじゃて。

 この青色童の冬夏青々の中におれば小童達は安全じゃ」

と、言った長は冷静なままだったので、

「そ、そうなのか?」

と、その長の言葉に少しほっとしたケレスの口から言葉が漏れたが、

「じゃあ、この島にいる他の奴等はどうなるんだ?」

と、険しい顔のジャップに聞かれ、

「……恐らく全員、海の底に沈められるじゃろう」

と、暫しの沈黙の後、長は感情なく恐ろしい水鏡の国の末路を答えた。

「そんな⁉ 何とか止める方法はないのか?」

 そして、その水鏡の国の末路を聴いて焦ったケレスは聞いたが、

「ないのう。青龍の気が晴れるまではな」

と、長はまた感情なく答え、

「それじゃ駄目だ‼

 ここにはイヴさんや花梨様、それに、うさ爺、イェンさん、

アルトの婆やさんとか、水鏡の国の人とか沢山の人がいるんだ‼

 みんなを見捨てる事なんて出来ない‼」

と、苛立ったケレスが怒鳴ると、

「儂に怒ってどうするのじゃ?」

と、言った長にはまた感情がなかったので、

「そうだけど……。

 何か方法はないのかって言ってんだ‼」

と、さらに苛立ったケレスが怒鳴ると、

「……鎮静の力なら助かるかもね」

と、アルトの静かな声が聞えた。

「鎮静の力って、ダーナの人が使える祈りの力の事か?」

 その救いの声を聞いたケレスがアルトを見て聞くと、

「そうだね。ダーナの一部の者が使えるはずだ」

と、頷いたアルトは答え、

「じゃあ、ここは昴も近いからダーナの人がいる!

 鎮静の力で何とかしてくれるんだ!」

と、ほっとしたケレスは言ったが、

「それはどうかの? あの怒りを鎮めるのはかなり骨が折れそうじゃて。

 祖奴等なんぞに青龍の怒りを鎮められるとは到底思えぬがの?」

と、感情なく言った長が水を差し、

「そ、それじゃあ、方法はないって言うのか⁉」

と、言ったケレスが頭を抱えると、

また何処からともなくアマテラスの使いが光の粉を撒きながら ひらひらとケレス達の前に現れた。

「きれーな蝶だな! お前、何処から来たんだ?」

 すると、そのアマテラスの使いを見たジャップは嬉しそうに言ったが、

「アマテラス様の使い⁉

 何でまたここにいらしたんだ?」

と、驚いたケレスが叫ぶと、

「アマテラス様って、あのアマテラス様か?」

と、きょとんとした顔のジャップが聞いてきたので、

「そうだよ! それ以外に誰がいるんだ‼」

と、その顔にイラっときたケレスが怒鳴って答えると、

「ふーーん……。じゃあ、こいつは以前、お前を連れて来た奴って事か?」

と、まじまじとアマテラスの使いを見ているジャップにまた聞かれ、

「多分そうだけど……。それが何だって言うんだ?」

と、答えたケレスが首を傾げると、

「じゃあ、お導きとやらがあるんじゃねえのか?」

と、何かを閃いた様な顔のジャップは陽気に言った。

「お導き?」

 それからそのジャップのひらめきに期待したケレスがジャップの言葉を待つと、

「アマテラス様の使いはね、その名の通り、アマテラス様の使者でね。

 アマテラス様の意志を伝える為に人の前に現れるとされているんだ」

と、ジャップではなく淡々と話すアルトの声が聞こえ、

「はあ……。それで?」

と、期待外れのケレスが溜息をついて聞くと、

「アマテラス様はこの世界を光の力で見守り、

その御力で世界が良い方へ向かう様に導いてくれているのさ。

 そして、彼はその意思を伝える為にここに来た……」

と、アルトが希望を持てる事を冷静に説明したので、

「じゃあ、アマテラス様の使いが来たって事は、何か良い方法があるって事か!」

と、言ったケレスの目が輝くと、アマテラスの使いは ひらひらと何処かへ飛んで行ってしまった。

「ま、待って! 俺達どうしたらいいんだ?」

 そんなアマテラスの使いをケレスが慌てて追い掛け様とすると、

「追いかけよう! 浦島、頼む!」

と、ケレスに賛同したアルトは言ったが、

「小童達、行ってはならぬ‼」

と、それに賛同しない長が怒鳴ったので、

「長殿⁉ 何言ってんだよ‼」

と、驚いたケレスは声を荒げて言ったが、

「青色童も言ったであろう? 龍宮の娘達が間違っておった、と……」

と、言った長の声は静かだった。

「そうだね……」

 すると、そう言ったアルトの声も静かになり、

「では、その者達を助ける必要はなかろうて」

と、言った長の声がその言葉の様に冷たくなったので、

「お、おい、長殿⁉ 何でそんな冷たい事を言うんだ?」

と、同様したケレスが聞くと、

「小童よ……。龍宮の娘はわかっておったはずじゃ。青龍の声を、な。

 それを聴かず、己が望みを叶え様とした結果が青龍の逆鱗に触れた……。

 己の国を滅ぼす事へと繋がったのじゃ。

 その様な者達を救う必要が何処にあると言うのじゃ?」

と、長は淡々と答えたが、

「けど、アマテラス様の意志は違うんじゃないのか?

 俺達にみんなを救ってほしいから使いをやったんじゃないか‼」

と、怒鳴ってケレスが長の答えを否定すると、

「それはどうかの?

 本当にアマテラス様が祖奴等を救う気があるのならば、己の力でこの雨雲ごと払えばよかろう?

 精霊神の長ならば、その様な事、いとも簡単に出来ようて?

 それをせぬという事は、小童達諸共海に沈める気かもしれぬぞ?」

と、冷静に言った長からそれを否定され、

「まさか……。アマテラス様がそんな事を考える訳ないだろ‼」

と、考えがなくなったケレスは怒鳴る事しか出来なかったが、

「考えているやもしれぬぞ?」

と、言った長はまだいくらでもケレスの希望を打ち壊せそうだった。

 そして、希望が見えなくなったケレスは目の前が真っ暗になった。

 ケレスの目には闇が宿ってしまったのだ。

 このままだと長の言う通り、自分達だけは助かるかもしれない。

 だが、ここにいる他のものはどうなるのか……。

 それなのにアマテラスは何もせず唯、空の上から見守っている。

 そんなアマテラスの考えがケレスには全くわからなかった。

 だから、ケレスの目にはもう光が宿りそうにはなかった。

 だが、

「……それでも俺は行くぜ。長」

と、その闇を照らす一筋の光となるジャップの低い声が聞こえ、

「赤色戦士……」

と、長の苦々しい声も聞こえると、

「その青龍とか、アマテラス様の考えなんて俺にはわからんが、俺は姉貴を助けに行きてぇんだ!

 俺には、わかる! こいつに付いて行けば、姉貴に会える!

 だから長が何と言おうと俺は行くぜ‼」

と、さらに闇を振り払うジャップの陽気で力強い声が聞こえ、

「勿論、僕も行くよ。

 ジャップ一人には任せられないからね」

と、アルトの涼し気な声も聞こえると、

「……おい、アルト。俺が信用ならねえのかよ?」

と、眉を顰めたジャップがアルトを横目で見ながら言ったのがはっきりと見えた。

「そうだよ? 君は無謀な所が多い。

 だから、僕が付いてあげてるんだ。感謝したまえ!」

 それから涼し気な顔で言ったアルトが、ふっと笑ったのも見え、

「アルト……。お前、結構言う様になったな……」

と、言ったジャップの眉間のしわが増えるのも見えると、

「そんな事より、ジャップ早く行くよ!」

と、言ったアルトの眉間にもしわが出来たのが見えた。

「長殿……。俺も行くよ。

 アマテラス様にどんな事を求められてんのか俺にもわからないけど、俺達は姉ちゃんを助けに行く!

 その為に俺はここにきたんだから!」

 そして、その二人を見て瞳に光が戻ったケレスがそう言うと、

「勝手にせい! 儂は知らんからな‼」

と、剥れた長は怒鳴ったが、

「ウモウ、ウモウ、ウモウ♪」

と、ベコがいつもより大きく楽し気な声で鳴くと、

「おっ⁉ ベコ、お前も一緒に来るんか? 長を見捨てて!」

と、言ったジャップはベコに笑い掛け、

「んなっ⁉ ベコ‼ 貴様ぁ、どちらの味方じゃ?」

と、長がケレスの髪を引っ張りながら言うと、

「ゥモォーーウ!」

と、ベコはまた変わった鳴き方をし、

「だよな! ベコは俺達の味方だ!

 臍曲がりの長なんかほっといて、さっさと行こうぜ!」

と、ジャップが陽気に言うと、

「そうだね。ベコ君は頼りになる。これからも頼むよ?」

と、アルトがベコを優しく撫でながら語り掛けたので、

「ぐぬぬ……。人の子等めぇ……。ベコを手懐けおって‼」

と、言った長がケレスの髪を引っ張ったまま体をふるわせたが、

「……長殿、痛いよ。そろそろやめてくれないか?」

と、ケレスは冷静に言った。

 それから、

「長殿。一緒に行こう!

 もし、アマテラス様が俺達を殺すんなら、それはそれで仕方がない。

 別に長殿が気にする事じゃない。

 だけど、ここに来る時に言ったろ? 俺は最後までみんなが助かる方法を探すつもりって!」

と、ケレスが笑って言うと、

「……じゃったのぅ。それに、儂もそれに同意した」

と、言った長はケレスの髪を引っ張るのをやめ、

「頼むよ、長殿! 頼りないと、また たぬてぃが狙ってんぞ?」

と、ふふっと笑ったケレスが言うと、

ケレスの右肩にいる たぬてぃが尻尾を左右にピンピンと動かし獲物を狙う姿勢になっていたので、

「むわあぁーー‼ やめぬか‼ 儂も行く‼ 小童達とな‼」

と、それに気付いた長が叫ぶと、たぬてぃはチッと舌打ちをし後足を折り畳んで自分の体の下に入れ、

上体を真直ぐにし胸を張って肘をケレスの肩に付けて前足を前に突き出して座った。

「い、い い 今、こ奴、し、し 舌打ちを⁉」

 すると、その たぬてぃの態度に長は怯えたが、

「さあ、行くぞ!」

と、ケレスが叫ぶと、浦島はアマテラスの使いを追って滝壺へ泳いで行った。

 それから滝壺に近づくと、龍神の岩がある島の様子がわかってきた。

 だが、龍神の岩は落雷の影響で粉々に砕けて跡形もなくなっていた。

 そして、真っ黒になっているその場所には洲之の姿は何処にも見当たらなかった。

「洲之のおばさん……。何か、哀れだったな……」

 その無残な光景を見たケレスが眉を顰めて呟くと、ズゴゴゴーーンッ!とまたすぐ傍で落雷がり、

「ひいいぃ⁉ こ、これ、大丈夫なのか? 関電とかしないよな?」

と、すっかり怯え切ったケレスが、しょぼしょぼと瞬きしながら言うと、

「そうならない様に、僕達が冬夏青々で守ってるんだ」

と、溜息交じりにアルトに言われ、

「そ、そうだよな! 信じてるぜアルト!」

と、左口角がピクピク動きながらもケレスが言うと、龍神の岩があった島にまた数回落雷があり、

「とは言っても、怖いものは怖い‼」

と、その落雷を見たケレスは思わず言ってしまったが、その島の隅に二人の人影が見えた。

 ケレス君、今回も怖がってたね。

 でも、そんな事じゃ次からどうするんだい?

 折角、良い事を言ってたけど、次も青龍様のお怒りは続くぜ!

 果たして、君は生きてラニーニャちゃんに会えるかな?

 でも、その前に大変な事になってるみたいよ?

 それがわかる次話のタイトルは、

【ケレス、光からの使者の導きで強力な協力者を得るだ!

 ……早口言葉みたいな強力な協力者って誰の事?

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