表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/58

№ 42 ケレス、逆鱗に触れた者の最期を見る

 イヴの冬夏青々はアルトの青く光る弓矢により破壊された。

 そして、ケレスとジャップはラニーニャが身を投げた滝壺へと向かう。

 だが、その滝壺は何故か血の様な赤色で輝いており、

そこから異様な現象が次々とケレス達を押そっていく……。


「ま、まさか⁉ あれがアルトの水の矛?」

 アルトの青く光る弓を見たケレスが目を丸くする程驚くと、

「そうみたいじゃな!」

と、同じく驚いている長の声が聞こえ、

「そんな事より、小童よ! 急ぐのじゃ‼ あの二人を助けるのじゃ‼」

と、長から命令されたが、

「助けるって言っても、あそこまでどうやって行くんだ?」

と、どうする事も出来ないケレスが聞くと、

「ケレス! ジャップ!

 僕が水の盾で道を作るから川をそのまま突っ走るんだ‼」

と、アルトが叫んだ。

 すると、ケレス達の前にアルトの青く輝く水の盾の道が出来た。

「アルト。わかった!」

 そう言ったケレスはその道を渡ろうとしたが足が奪われる程その道は不安定だったので、

「うわっ⁉ この道、大丈夫なのか?」

と、怯えているケレスが言うと、アルトはその場に倒れてしまった。

「おいっ⁉ アルト‼ 大丈夫か?」

 そのアルトにジャップが慌てて駆け寄ると、

「す、すまない……。水の矛でかなり力を使った様だ。

 マナが安定しないんだ……」

と、言ったアルトの眉間にはしわが出来ており、苦しそうに肩で息をしていたので、

「じゃあ、この道は渡れないのか⁉」

と、そのアルトを見て言ったケレスが頭を抱えると、

「道ならば儂が協力して作る‼

 小童達よ! 水の上等考えずあの娘達が落ちた所へ突っ走るのじゃぁ‼」

と、怒鳴った長からは髪を引っ張られ、左肩にいる たぬてぃからは鼻息をフンッと掛けられ、

「痛たたた! わかってる! けど、アルトが……」

と、アルトが気掛かりなケレスがアルトを見ながら言うと、

「ケレス‼ アルトは浦島に任せろ‼

 俺達は姉貴の所へ急ぐぞ‼」

と、ジャップは大声で進むべき道を示し、

「そうだ‼ 早く行ってくれ‼」

と、大声で言ったアルトからも示されると、

「わかった‼」

と、言って、ケレスはそのまま滝壺へ走って向かった。

 すると、今度は水の盾の道は安定していたが、

「ギャオーーーズゥ⁉」

と、悲痛な声を上げたフレースヴェルグがその場に倒れるのが見え、

「へっ⁉ フレースヴェルグ?」

と、それを見て言ったケレスの足が止まると、

「小童‼ 今はあの娘達が先じゃて‼」

と、長にせかされ、

「ああ、そうだな!」

と、言ったケレスは心苦しかったがフレースヴェルグから目を背け、また滝壺へと向かった。

 そして、ケレス達がラニーニャ達が落ちた付近に行くと、

何故か根の一族の女が飛び込んだ辺りは血の様な赤い色で不気味に光っていた。

(何だ、あれ……⁉ 何で、ここは暗いのにあそこは赤く光ってんだ?)

 その赤く光っている部分に底知れぬ恐怖を感じたケレスがたじろぐと、

「こ、これは、マズイ事になった……」

と、長の呟きが聞え、

「長殿? 何がマズイんだ?」

と、聞いたケレスが首を傾げると、

「小童達‼ 今すぐここから離れるのじゃぁ‼」

と、長は声を張り上げて言った。

「長殿? 姉ちゃんを探さなきゃ‼」

 だが、その長の意見にケレスが異議を唱えると、

「それはそうじゃが、さっさと離れるのじゃ! 命を落とす事になるぞ‼」

と、長から怒鳴なれてしまい、ケレスが戸惑っていると、

「ケレス‼ 長の言う通りにすんぞ‼ 何かヤベェ感じがする‼」

と、叫んだジャップからケレスは腕をぐいっと引っ張られ、

その場から一緒に逃げると、急に雨は止んだ。

 それから全く音がない静けさが訪れた。

 だが、

「や、やった……。災い女が消えた……」

と、洲之の呟きが聞え、

「やったぁーーー‼ これで世界は救われる‼

 あのクソ女が死んでくれたおかげだわ!

 ほおぉーーーんと、だあぁーーっい嫌いだった‼

 あんなクソ女がダーナだけでもおかしいと思ってたのよね!

 それなのにさ……。

 ふん! そんな事はどうでもいいわ! 

 喜蝶、死んでくれてありがとう‼ すっきりしたわ‼」

と、喜びを爆発させた洲之の声が聞え、

「洲之のおばさん……⁉」

と、その洲之の言葉を聞いたケレスは呟き、怒りにふるえ足を止めたが、

ケレス達が立っていられなくなる程の地震が起きた。

「うわあぁーー⁉ ゆ、揺れてるぅーー‼」

 そして、訳がわからずジャップの体にしがみついているケレスは叫び、

「こいつは、ひでぇ地震だな……」

と、しゃがんだままケレスを支えているジャップが冷静に言うと、

「こおーーーれ‼ 小童達! さっさと逃げぬか‼

 命が惜しくないのかぁ⁉」

と、ケレスの髪を引っ張り続けている長から怒鳴なれたが、

「長殿⁉ 逃げろって言っても立てないって‼」

と、しゃがんだままのケレスが言うと、

「這ってでも逃げるのじゃ‼ もうそこまで来ておる‼」

と、さらにケレスの髪を引っ張った長から怒鳴なれ、

「来てるって、何が?」

と、首を傾げているケレスが言うと、ケレスの周りの水面が赤く光っていた。

「な、何だこれ⁉」

 その赤く光る水に恐怖を感じたケレスが身震いすると、

「逆鱗じゃ‼ 青龍のな‼」

と、ケレスの髪を引っ張ったままの長は叫び、

「逆鱗? 青龍? 何なんだそれは?」

と、長の話に全く付いていけないケレスが言うと、ケレス達は滝壺の方へと動かされており、

「ひええ⁉ 何だ? 水の盾ごと流されてる??」

と、混乱したケレスが叫ぶと、ケレスはいきなり空へと持ち上げられ、

「ひいぃぃーー⁉ 今度は何だぁーー??」

と、涙が零れたケレスが絶叫すると、ケレスは赤い光から離れた所へと落下した。

 すると、

「ふう。何かヤバかったな!」

と、ケレスの隣にいるジャップが陽気に言ったので、

「あ、兄貴⁉ もしかして俺を抱えてここまで飛んだのか?」

と、何度も瞬きしながらケレスが聞くと、

「おうよ! 一点集中の応用技だ!」

と、ジャップは笑って答え、

「ふいぃ……。小童達よ、もう少し離れるのじゃ」

と、やっとケレスの髪を離した長が言ったので、

「わかった。長殿」

と、何とか歩ける様になったケレスが言うと、

「な、何なの……」

と、怯え切った洲之の声が聞えた。

 そして、ケレスが離れながら洲之を見続けていると、

その洲之は腰を抜かし、ある一点を見て怯えている様だったので、

(洲之のおばさん……。何に怯えてるんだ?)

と、その洲之を見ながらケレスが考えていると、

「お、おい、長! 何で滝を水が登ってんだよ⁉」

と、ジャップの驚いている声が聞こえ、

「水が滝を登ってるだって?」

と、言ったケレスが滝を見ると、滝を赤く光る水がもの凄い速さで登っていくのが見えた。

「どうなってんだ⁉ 水が滝を登るなんて⁉ 有り得ない‼」

 その滝を見て混乱したケレスが叫ぶと、

「ジャップ! ケレス! こっちに来るんだ‼」

と、叫んだアルトが浦島に乗ってケレス達に近づいて来たので、

「アルト⁉」

と、言って、そのアルトにケレス達も近づくと、

「君達、早く浦島に乗ってくれ! ここは危険だ!」

と、言ったアルトの顔には焦りの色が出ていた。

 そして、ケレス達が浦島に乗ると、浦島はアルトの冬夏青々に守られた。

「アルト。もう、大丈夫なのか?」

 それからジャップがそう聞くと、

「ああ。ベコ君のおかげだよ」

と、答えたアルトは右肩に乗っているベコを優しく撫でたが、

モウ、モウ!」

と、ベコがいつもとは違う鳴き方をすると、

「とんでもない事になってしまった! もう誰にも止められないかもしれない……」

と、言ったアルトの顔は険しいものへと変わり、

「とんでもない事?」

と、言ったケレスが息を飲むと、

「そう。青龍様が怒ってる。僕達の行為が青龍様の逆鱗に触れたんだ‼」

と、頷いたアルトは今起きている事を話し始めたが、

「青龍様の逆鱗に触れた⁉ どういう事だよ?」

と、言ったケレスが理解出来ないまま赤く光る水は滝を登りきり、全て空へと舞い昇っていった。

「いっ⁉ あの赤い水が空にまで登った?」

 すると、そう言ったケレスが空を見上げた時には赤く光る水は暗く重い雲と混じり、

空全体が赤黒い雲へと染まった。

 その後、その雲から地響きがする雷がゴロゴロと鳴り、空気もふるえだしたので、

「何が起ころうとしてるんだ?」

と、悪い予兆を感じたケレスの口から言葉が漏れると、

赤黒い雲を割いて空をも覆う巨大な赤き龍が顔を覗かせた。

 その龍の目は見開いており、口の間からは牙が見え、所々その間から炎が溢れ出し、

その顔は怒りに満ちているのがわかった。

「あ、あれって、龍⁉ 空想上の生き物じゃなかったのか?」

 その龍の恐ろしさにケレスが竦み上がると、

「あの御方が青龍様だよ」

と、言ったアルトは冷静だったので、

「青龍様だって?」

と、そのアルトの冷静さで少し落ち付きを取り戻したケレスが言うと、

「そうだ! 僕達の国の守り神である、龍神 青龍様さ」

と、言ったアルトは頷き、

「あんなのが守り神なのか⁉

 ゴンズ様とか、グラニュー様とは大違いだ!」

と、言ったケレスの顔が引き攣ると、

「本来の姿ならそんな事は言わないだろうね」

と、アルトは溜息交じりに言ったので、

「じゃあ、本来の姿はどんなのなんだ?」

と、青龍の姿を想像できないケレスが聞くと、

「姿自体は僕も見た事はない。

 だが、君達も一度は見た龍神の滝から光の神殿までの美しい川と泉が青龍様そのものなんだ」

と、険しい顔のアルトから教えられ、

「はあ。わかった様な、そうでない様な……」

と、言ったケレスの左口角がピクピク動き出すと、

「グルルゥゥ……」

と、赤き青龍から空気を震わす呻き声が聞えた。

「青色童‼ 呑気に話しておる場合ではないぞ‼

 儂も協力する‼ 早く、もっと強固な水の盾を作るのじゃ‼」

 すると、その呻き声を聞いた長が怒鳴ったので、

「長殿⁉ そんなにヤバいのか?」

と、命の危険を感じたケレスが聞くと、

「な、何よ? 私が何をしたって言うの?

 私は災い女をこの世界から消したのよ?

 それをあなた達だって望んだでしょ‼ 何も言わなかったじゃない‼

 代地、それを世界が望んだのよ‼

 だから、怒られる理由がわからない‼

 私は褒められても、何でそんな事を言われなきゃいけないの?

 えっ⁉ ちょっと、や、やめなさい! 私は……」

と、洲之の慌てふためく声が聞こえたが、

「グオォーーーギャーー‼」

と、赤き青龍が口が裂ける程大きく口を開けて叫び、その声が轟くと、

洲之目掛けその轟の様な爆音と共に青紫に輝く雷が一瞬で落ちた。

 そして、その落雷の衝撃は空気を辿ってケレス達にも伝わり、ジンジンと衝撃が暫くの間残った。

「やりおったわい。青龍の奴め……」

 それからその衝撃が薄れてきた頃、そう言った長の小さな声が聞こえ、

「まさか、洲之のおばさんは……」

と、言ったケレスが洲之の末路を想像し言葉を失うと、

「生きてはおらぬじゃろうて……」

と、長は冷静にその末路を答え、

「そ、そんな……」

と、それを聞いたケレスは愕然となり、それ以上何も言えなかったが、

これはまだこれから起こる災難の序章にしかすぎなかった。


 ケレス君、今回も大変だったね!

 でも、あんまり君の活躍を描けなかった……。

 何か最近君より他のキャラ達の活躍が際立ってるね~。

 そろそろ主役を……。

 えっ⁉ 嘘 嘘だってぇ!

 あぁっ⁉ でも、次の投稿する話は【番外編 龍宮 アルトの憂鬱  11】なんだよね♪

 と言う事は、こっちを本編にして……。

 ……あんまり意地悪するとケレス君がいじけるので、

次話のタイトルになります!

 で、次話のタイトルは……、

【ケレス、光からの使者の導きを信じ、未来を切り開く一歩を踏み出す】です!

 同じ日に時間をずらして投稿するので、よろしくお願いします☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ