№ 33 ケレス、成功の先で、何ものにも代えられない褒美を授かる
ケレスは何とか新生ゴンズに箸渡しをさせる処まで喰付けた。
そして、箸渡しは始まったが、
何もかも上手くいくと思っていたケレスの前にとんでもない闇の世界が広がってしまう
ケレスが瞳を閉じてラニーニャと新生ゴンズのマナを感じ取ると箸渡しは始まった。
そして、ケレスの心の中にラニーニャと新生ゴンズの姿がうかぶと、
「ふーん。これが、箸渡しか……」
と、新生ゴンズが辺りを見渡しながらそう言ったので、
「そうです。と言っても、俺の力じゃ少しの時間しかもちませんけど」
と、ケレスは説明したが、
「うるさいな! お前とは話さねえんだ‼」
と、怒鳴った新生ゴンズから鼻息荒くケレスは睨みつけられ、
「はいはい。すみませんねぇ……」
と、謝ったケレスは軽く鼻で息を吐き、
「姉ちゃん。出来るだけ早くしてくれよ?」
と、苦笑いしながらラニーニャを見て言った。
「ケレス君。わかった!」
すると、ラニーニャはそう言って頷き、
「ゴンズ様。あの……」
と、言って、新生ゴンズを見つめると、
「何だ? 言いたい事があるんなら早く言えよ!」
と、怪訝な顔の新生ゴンズはラニーニャに目を転がして怒鳴ったが、
「生まれてきてくれて、ありがとうございます!」
と、言ったラニーニャは微笑んだ。
「へっ⁉」
そして、ラニーニャの微笑みに新生ゴンズが驚きのあまり言葉が出ずにいると、
「私、先代のあなた様の声をもっと聴いてあげたかった。
でも、私が臆病だったから、先代のあなた様を殺してしまった……。
本当にすみませんでした」
と、言ったラニーニャは頭を深く下げ、
新生ゴンズがぼーっとしてそのラニーニャを見つめていると、
「私、がんばりますから。先代が好きだったこの地を再生してみせます!
だから、生まれてこなかった方が良かったなんて言わないでください!」
と、ラニーニャは続けた。
「ちょ、ちょっと待て! どういう意味だ?」
すると、急に我に返った新生ゴンズはそう言いながら何度も瞬きし、
「えっ? だから私、がんばってこの地を再生します。信じてください!」
と、顔を上げたラニーニャがそう言うと、
「そうじゃない! 俺が生まれてきて良かった、だと?」
と、問うた新生ゴンズはわなわなし始め、
「はい」
と、それでもそう返事をしたラニーニャが穏やかな顔で頷くと、
「何でそんな事が言えんだ?
こんな世界になんて生まれて良い事なんかある訳ないだろう‼ えぇーっ‼」
と、新生ゴンズは全身の毛を逆立て怒鳴り、
「ゴンズ様? お言葉を返す様ですが、どうしてその様な事を言われるのですか?」
と、その新生ゴンズの態度にそう言ったラニーニャが首を傾げると、
「お前だって、わかってるはずだ‼
この世界に、いい事なんてないって事をな‼
正直に言えよ‼」
と、新生ゴンズがさらに毛を膨らませ怒鳴りつけると、
ケレスの心は急に苦しくなり、ケレスが経験した事のない気持ちが襲ってきた。
「な、何だ、この気持ち……。
苦しい? 悲しい? そんなもんじゃない……。
目の前が、真っ暗だ……。足先の感覚が、ない……?
体が妙に重い……。これって、絶望なのか?
この気持ちはもしかして、ゴンズ様の気持ち、なのか?
駄目だ‼ ここから離れなきゃ‼ これ以上、この気持ちに触れてたら俺、死んじゃう……」
そう思ったケレスは底無しの闇から逃げた。
このままその闇の中にいたら二度と戻れなくなる。
そう直観したからである。
そして、逃げたケレスはその場に崩れ膝をつき、俯いた。
「ほおーーら、見てみろよ? この嫌な気持ちを!
これは、全部お前の気持だ‼
嫌な世界、だよな? なぁーーーんにも、いい事なんかないよな? 絶望しかねえな?」
それから闇から逃げたはずのケレスの耳を新生ゴンズの誰かを陥れる声が通り過ぎた。
すると、ラニーニャのすすり泣く声がそれに続いた。
「ね、姉ちゃん⁉ どうしたんだ?」
その声を聞いたケレスが顔を上げると、そこには泣き崩れているラニーニャがおり、
「ん? 鼠爺さんのおもりっ子……。お前とは話さねえって言ったけど、まあ、聞きなよ。
お前ならわかるよな? 今の、あのダーナの女の心を。
心は嘘をつけねえ。この女はこの世界を一つもいい世界なんて思っちゃねえんだよ。
こんな苦しくて悲しい世界に俺が生まれて何がいいんだ?
冗談じゃねえーーっ‼」
と、同じくそこにいた新生ゴンズは自身の苦しみをもケレスにぶつけてきた。
「姉ちゃん……」
二人の苦しみに触れたケレスはラニーニャを見つめたが、
ラニーニャは泣いたままその場から動けそうになかった。
「さて、もういいか? 俺はこんな世界に何も守りたいもんなんかねえんだ。
さっさと終わりやがれ‼ その女を連れて帰りやがれ‼」
そして、ケレス達から視線を逸らした新生ゴンズが命令してきたが、
「姉ちゃん‼ しっかりしろ‼」
と、ケレスはその命令を弾き飛ばす様な声で怒鳴った。
すると、
「ケ、ケレス君?」
と、はっとしたラニーニャは顔を上げ、
「姉ちゃんが伝えたい事は、こんな事じゃないだろ? もっと、伝えたい事はあるはずだろ?
しっかりしてくれよ姉ちゃん‼」
と、ケレスが思いを伝えると、
「ケレス君……。うん。そうだった!」
と、言ったラニーニャの瞳に力強さが戻り、その瞳で新生ゴンズを真直ぐ見つめた。
「な、何だよ……」
そして、そのラニーニャの真直ぐな瞳に新生ゴンズがたじろぐと、
「ゴンズ様。聞いてください。私の心を!」
と、言ったラニーニャはその瞳を閉じた。
すると、ケレスは感じた。
ケレスの心にさっきとは打って変わって温かく、優しい気持ちが流れ込んできた事を。
「これも、姉ちゃんの気持なのか?」
その温かいものをケレスが心ではっきりと感じていると、
「ゴンズ様。この世界は決して、いい事ばかりではありません。
でも、ほんの些細な事かもしれませんが、この世界はこんなにも素晴らしいんです」
と、ラニーニャの穏やかな声と共に訪れた温かいものがケレスの周りを取り囲み、
「これがお前の気持、か……? お前の心、か?」
と、言った新生ゴンズの周りにもそれが取り囲んでいくのがわかると、
「ゴンズ様にも、いますよ?
生まれてきてくれて本当に良かったって思ってくれている人、精霊。そして、動物、霊獣が」
と、言ったラニーニャは頷き、ケレスの周りに何故か未来や未来の母の姿、
そして、エーリガル達の姿が次々と現れた。
「なっ⁉ こいつ等は誰だ?」
その姿をキョロキョロと見渡しながら新生ゴンズが言うと、
「あなた様の誕生を心から望んでいるもの達です。
それに、きっと他にもいるはずです。
そして、あなた様を好いてくれている者達も」
と、言ったラニーニャは新生ゴンズに微笑み掛けたが、
「俺の誕生をだと? 俺の事を好きだと? 他にもいるだって?
馬鹿な‼ 何処にそんな奴がいるって言うんだ?」
と、怒鳴った新生ゴンズは全身の毛を逆立てラニーニャを威嚇したが、
「はい。きっと、沢山います。
そういう方達を見てあげないまま、この世界を恨まないで。
嫌いになんか、ならないでほしい!」
と、新生ゴンズに怯まず、ラニーニャが必死に訴えると、
「んうぅ……」
と、ラニーニャの必死の訴えで毛の膨らみが収まってきている新生ゴンズはウロウロし出したが、
「私は、あなた様の事、好きですよ?」
と、ラニーニャがにこやかにそれを言うと、
「なっ⁉ 急にお前は何を言い出すんだ?」
と、言った新生ゴンズの全身の毛がまた膨らんだが、ラニーニャはその場に倒れ込み、
「ね、姉ちゃん‼」
と、叫んだケレスはラニーニャの傍に行こうとしたがケレスも脱力し、その場に倒れ込んだ。
そして、ケレスはそのまま意識を失った。
それからどれだけの時間が過ぎたのかケレスにはわからなかった。
しかし、ケレスは何とも言えない安心感に包まれている感覚で目を覚ました。
「うぅん? ここ、何処だ?」
そして、寝ぼけ眼のケレスがそう呟くと、
「おっ、ケレス。目が覚めたか? お疲れ!」
と、ケレスの頭の上には振り返ったジャップの笑顔があり、
「へっ⁉ 兄貴?」
と、驚きの余り叫んだケレスの眠気は吹き飛び、ケレスは自身の状況を確認した。
ケレスは晴天の中、ジャップの背に凭れたままユルグの背に乗って、
フェンリル山を下山している様だった。
「あ、兄貴! すまない‼」
その状況を理解したケレスが焦って体を起こそうとすると、
「いいから、いいから。そのままでいろよ!」
と、言ったジャップはケレスに背を向けそう言ったが、
「兄貴……。その、あの……」
と、気掛かりな事があるケレスがジャップの背に凭れれずにいると、
「あの後、どうなったか気になるんだろ?」
と、言ったジャップはケレスの心をわかっていた。
「ははっ、そうなんだ。
俺が、もっとしっかりしとけば良かったんだけど。力不足でさ……」
そして、申し訳ない気持ちでいっぱいになっているケレスがジャップの背にそう言うと、
「いいや! お前はしっかりと役目を果たしたよ。凄かった」
と、言ったジャップの声には元気がなく、
「兄貴?」
と、そのジャップに違和感を持ったケレスが首を傾げると、
「話してやるよ。あの後どうなったかをな……」
と、言ったジャップは背を向けたままケレスが意識を失った後の事を話しだした。
ケレスが意識を失うとアクベンスの洞窟の吹雪は収まり、元の静かな洞窟へと戻った。
そして、ケレスはそこでラニーニャと手をつないだまま倒れていた。
「ケレス‼ 姉貴‼ 大丈夫か⁉」
ジャップはケレス達の名を叫びながらケレス達の傍に駆け寄って言ったが、
「ふむ。こ奴等は気を失っておるだけじゃ。
直に意識は戻るじゃろうて」
と、ケレスの顔付近にいた長が冷静にケレス達を見てそう言ったので、
「おい、長……。軽々しく言うな!
二人共こんな顔色で倒れてんだぞ?
それに姉貴の奴、泣いてんだ‼ どうなってんだ‼」
と、怒鳴ったジャップが怒りを露わにすると、
「ふむ……。そうじゃな。悪かったわい……」
と、申し訳なさ気に言った長は俯いたが、
「悪かったですむか‼」
と、それでも怒りが納まらないジャップが長を責め続けていると、
「じゃあ、何て言えばいいんだよぉ?」
と、近付いて来た新生ゴンズが聞いてきた。
だが、
「はっ? お前……、何、言ってんだよ?」
と、言ったジャップが冷ややかな目で新生ゴンズを見ると、
「だから、お前はどうすれば俺を許してくれんだ?
俺だって、こうなるなんて思ってもみなかったんだ‼」
と、新生ゴンズは、おろおろしながらジャップを見つめそう言った。
「はぁ……。俺はお前の成り立ちを聞いて、同情したんだぜ?
でも、そんな事を言う神だったとは……。ガッカリだ」
すると、深い溜息をついたジャップが、新生ゴンズから視線を逸らしたので、
「うぅっ……。ちょ、ちょっと、爺さん⁉ どうすりゃあいいんだ?」
と、うろたえた新生ゴンズが長にそう言って助けを求めたが、
「ふむ……」
と、考え込んでいる長からは何も答えはなく、
「何だよそれ⁉ 俺だけが悪いのか?
俺、どうすりゃあいいんだよぉ?」
と、言った新生ゴンズがその場でうろちょろし出すと、
「モウ、モウ、モウ!」
と、ベコがジャップの服の中で鳴いたので、
「おっ⁉ ベコ? どうした?」
と、言って、ジャップがベコを服の中から出すとベコの体が赤く光り、
木漏れ日の様なその光の玉がケレス達に降り注がれていった。
「な、何だ⁉ 今のは?」
その光景に驚いたジャップが叫んだがケレス達の顔色は良くなり、
ケレス達の穏やかな寝息が聞こえてきたので、
「ケレス、姉貴。良かった……」
と、ジャップがほっとすると、
「だああぁーーーー‼ 悪かった。すまなかったよぉ……」
と、大声で言った新生ゴンズが急に泣き出したので、
「ゴンズ……」
と、ジャップは新生ゴンズの傍に近づいた。
「いいか‼ お前達‼ 俺は、世界とか、神とかどうでもいいんだ‼
そんな事は、そっちで勝手にしてろ‼
だが、俺の大事な家族を悲しませんな‼ 傷付けんな‼ こんんな事を二度とすんな‼」
そして、そう怒鳴って新生ゴンズの頭を両手の握りこぶしでグリグリとすると、
「痛いよぉ⁉ ごめんよ……。
もう、あんな意地悪をしたりしないよう‼
だから、二人共、死なないでくれぇっ‼」
と、新生ゴンズは泣きじゃくってはいたが謝罪の意思を見せ、
「これこれ、ゴンズよ!
そんな事では死なぬから泣き止むのじゃ」
と、呆れている長からそう教えられると、
「本当か? 爺さん!」
と、言った新生ゴンズは泣き止み、目を輝かせ、
「モウ、モウ、モウ!」
と、ベコが首を縦に振りながら楽し気に鳴くと、
「だ、そうだ。だから、泣くな。男だろ?」
と、言ったジャップは新生ゴンズの頭をポンポンと叩き、笑い掛けた。
「そ、そうだぞ! 俺はお前達、人の世界で言えば立派な男だぜ?」
すると、そのジャップにそう言った新生ゴンズは鼻を高く上げて見せつけ、
「じゃあ、しっかりと守るんだな!
俺達の世界ではな、大抵の男は弱い者を守ってきてんだ。
それに、弱い者虐めなんかしねぇんだぞ?」
と、言ったジャップが新生ゴンズをじっと見つめると、
「やってやるさ! お前なんかに言われなくともな‼」
と、新生ゴンズがさらに鼻を上に上げそう言ったが、ジャップは何も言わず右手を出した。
「何だ、それ?」
それからその右手を見て新生ゴンズが不思議そうに言うと、
「約束しろよ、男同氏の、な!」
と、言ったジャップは力強く頷き、
「お、おうよ! 約束してやらあ!」
と、言って、新生ゴンズは自身の牙をジャップの右手に擦り寄せた。
そして、ジャップはその牙をしっかりと握り、
「約束だ」
と、優しくそう言うと、
「お前も俺と約束しろよ。そいつ等を守るってな!
そして、また俺の守る世界を見に来ると!」
と、新生ゴンズは少しキザッぽく言ったので、
「へっ、言うな!
約束する。あいつ等は俺が絶対に守ってやる‼
そして、また来てやるよ。みんなでな!」
と、ジャップもキザっぽく言って、もう一度新生ゴンズの牙をしっかりと握ると、
「キイィーーーーー‼」
「ギイイーーーー‼」
と、氷の鬼達が叫び、
「ヒャーーーーーゴ‼」
と、エーリガル達も何かを訴える様に叫んだ。
「な、何だ⁉ お前達は?」
すると、その彼等の叫びに新生ゴンズが動揺したが、
「みんな、お前に協力するんだってよ!
人気者だな、ゴンズ!」
と、ジャップが新生ゴンズに彼等の気持を伝えると、
「そ、そうなのか?」
と、言いながら新生ゴンズはほくそ笑んだが、
「ゴンズ様。私達も忘れるな!」
と、いつの間にか傍にいた未来が嬉しそうに言ったので、
「人の子か……。わかってるわ!」
と、新生ゴンズは怪訝な顔で未来をチラッと見て言ったが、
「ここに集まりし輩よ! よぉーーく聴けぇ‼
俺は、生まれ変わったゴンズだ‼
てめぇ達をまとめて守ってやるぜ‼ 付いて来い‼」
と、アクベンスの洞窟全体に響き渡る声量で叫ぶと、
「キイイーーーーー‼」
「ギイイイーーーー‼」
「ヒャーーーーーー五‼」
「頼もしいぞ‼」
と、各々は叫び、互いに誓いを交わした。
ここまでジャップが話すと、
「へぇー。そんな事があったんだ。見たかったなぁ……」
と、その奇跡を見れなかったケレスの心に悔しいという文字が刻まれたが、
「まあ、そう言うなよ……」
と、何故かジャップが悔しそうにしており、
「兄貴? どうしたんだ?」
と、聞いたケレスが首を傾げると、
「ん? いや、お前が羨ましくってな……」
と、ジャップは溜息交じりに答えたので、
「へっ⁉ 俺が羨ましいだって?」
と、肩を落としているジャップの背にケレスが驚きを隠せずにいると、
「ああ、そうさ。
お前は、俺にないものを沢山持ってる。だから、姉貴が一番にお前を頼ったんだ。
そして、今回の事も成功出来たんだ……」
と、言った寂しそうな声のジャップは、エーリガルの上にいるラニーニャを見つめた。
そのラニーニャもケレスの様にフェイトに凭れかかってエーリガルの上に乗っていた。
そして、ラニーニャはまだ、意識はない様だった。
「兄貴……。姉ちゃん、まだ眠ってんのか?
てか、何で姉ちゃんはフェイトの傍にいんだよ⁉」
それからそのラニーニャを見たケレスが色々と思った事を口にすると、
「姉貴の奴、まだ眠ってるみたいだな。
それと、フェイトの奴が姉貴は自分が守るって言い出してさ。
絶対、自分が連れて帰るって言い張って、
誰の言う事も聞いてくんねえからフェイトの奴が独占して、ああなってんだ」
と、苦笑いをしているであろうジャップはどうしてこうなっているのかを説明した。
すると、ケレスは何だか嬉しくなり、ふふっと笑ってジャップの背中にさらに強くもたれかかった。
「どうした、ケレス?」
そのケレスに背を向けたままのジャップが聞くと、
「へへっ! 今は兄貴は俺だけのもんだ!」
と、ケレスはジャップの背中をぎゅっと握る事でも答え、
「急に、どうしたんだ?」
と、ジャップが笑いながら言うと、
「だってさ、俺、兄貴がいてくれたからがんばれたんだ!
それに、ゴンズ様にも色々と言えたんだぜ?
姉ちゃんの願いを叶える事も出来たんだ!
これぐらいの褒美をもらっても罰は当たらないだろ?」
と、言ったケレスは体勢を崩さずにそれどころか額迄ジャップの背に押し付けた。
「褒美が俺なんかで、いいのかよ?」
そして、そう言ったジャップは体が揺れる程笑い、
「当然! こんな豪華な褒美は、他にどこにもないさ!」
と、ケレスが力強く言うと、
「ケレス……。ありがとな」
と、ジャップからは心に染みる優しい言葉が返って来て、
「兄貴……。ありがとう」
と、ケレスも優しく心に染みる様な言葉を返した。
それからケレスはジャップの大きな背中にもたれかかったままフェンリル山を下って行った。
だが、あと少しで未来の家に着くころにケレスはジャップに声をかけた。
それは、どうしてもジャップに聞いてほしい事があったからである。
いや~、ケレス君ったら!
今回も凄かったね!
いつからそんなに言える人になったのかしらね?
少しは主人公らしく生長したって事で♪
良かったねぇ、いい褒美をもらっちゃってさ……。
私も大きな背中に身をあずけてみたい……♡
なぁ~んってね♪
そんなケレス君がジャップ君に話した事がわかる次回の話のタイトルは、
【ケレス、白山に笑顔の花は咲く】です!
みんな笑顔になれるといいね!




