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№ 22 ケレス、光集まりし場所、地獄と化す

 水鏡の国の稲草島に到着したケレス達は洲之の誘導により、光の神殿へ向かう事となった。

 だが、その途中、ケレス達は何者かによる襲撃を受ける。

 ケレス達は辛うじて光の神殿まで辿り着けたものの、ケレス達の前に現れたのは……。

 ケレス達は水鏡の国の稲草島へと下り立った。

 水鏡の国はヤンの予想通り状況は良くない様で、

人気はなく、数メートル先が見えないぐらいの霧に辺りは、すっぽりと覆われていた。

(霧が深い。しかも、普通の霧じゃなくて、祟り神がいた時の感じがする……)

 そう感じているケレスは他の者と少し離れて歩いていた。

 そして、ビフレスト山の麓までくると、

「さぁーて、花梨様。昴まで戻りましょうか?」

と、スノに言われ、

「ふむ。洲之、頼むぞ」

と、言った花梨は頷いたので、

(何をするんだ?)

と、ケレスがその二人を見ていると、

「じゃあ、杏ちゃん。お願いね♡」

と、言った洲之は杏の頭を撫で、

「〽 愛しい、愛しいハマルの杏ちゃん。

 今日、あなたはどんな雲になる?

 私の望む、ふわふわ浮かぶ雲になる !」

と、急に歌い出した。

 すると、

「メエェー!」

と、杏は鳴き、杏の羊毛が杏の顔が見えなくなる程までどんどん膨れ大きさも十数倍になった。

(ぃいっぃ⁉ 何だ、あれ‼)

 その杏の姿を見たケレスが目を丸くしてそう言うと、

「どうぞ、花梨様。お乗りくださいませ♡」

と、洲之の指示で、花梨が杏の雲の様な体に乗り、

「さあ、皆様もお乗りください……。ケレスさん、もね?」

と、洲之は優しく言った後、ケレスを意地の悪い目で見つめながら言った。

(あれは、何なんだ?)

 そして、ケレスが杏達を詮索していると、

「あれは、ハマルの光渡雲ヒカリワタグモじゃな」

と、ケレスの頭の上から長の声がし、

「ヒカリワタグモ⁉ 何だそれ?」

と、ケレスが小声で聞くと、

「まあ、移動手段の一つじゃ。

 わた雲のわたと、渡るのわたをかけておっての、

ハマるの光輝く羊毛がわた雲の様になり、空を渡れると言う訳じゃな。

あれに乗って、ダーナの者は移動するのじゃ」

と、ひそひそと、長から教えられ、

「あれで移動するのか? どうやって動くんだ?」

と、またケレスが小声で聞くと、

「浮かぶのじゃ!」

と、長は、すんなり答えた。

「浮かぶ⁉ もしかして空を飛ぶっていうのか?」

 それからケレスがまだ長に聞こうとすると、

「ケレスさん? また、一人事? 変な、ひ、と♡」

と、洲之から、クスクス笑いながら言われたが、

「……別に?」

と、言ったケレスは笑って洲之に目を転がした。

 相変わらずケレスの顔は強張ったが、何故か恐怖心はなかった。

「ふぅーーん……。まあ、いいケェード? 早く、杏ちゃんに乗ってね?」

 そのケレスを見て、洲之はつまらなさそうに言ったが、ケレスが杏に乗ったのを確認し、

「さあ、杏ちゃん。いいコねぇ♡ 一緒にやりましょう!」

と、言って、何かを念じると、

「メエェーーーーー!」

と、杏は空に向け叫び、杏はケレス達を乗せたまま、ふわふわと浮上していった。

(長殿の言う通りだ! こいつ、俺達を乗せたまま、浮かんでる⁉

 このまま光の神殿に行くんだ……。

 しかし、こいつ、ふわふわしてるけど足場が抜けたりしないのか?)

 色々と考えながらケレスは杏の上から下を覗き込んだ。

 杏は浮上しているはずだが下も上も霧が濃く、

ケレスは今どのくらい浮上したのか全くわからなかった。

 息を飲んでケレスが下を覗き込んでいると、

「そんなに下を覗くと、落ちちゃうよ? 誰かさん、み、た、い、に……」

と、言った洲之からケレスは背をポンッと軽く押され、心臓がバクバクするのがわかった。

 しかし、無表情のケレスは振り返って洲之を無言で見つめ、不敵に笑ってみせた。

 すると、

「何なのよ、その顔⁉」

と、言った洲之は一瞬怯み、顔を引きつらせたので、

「いや……。別にぃ?」

と、余裕を見せる為にケレスがそう言ってまた不敵に笑ってみせると、

「何が言いたいの‼」

と、言った洲之の語気が強まったので、

「いやね、おばさんも焦ってんだな?っと、思ってね。

 何もわかってないんだ……。ははっ!

 だけど、何もお、し、え、て、あ、げ、な、い、よ!」

と、ケレスが洲之を小馬鹿にする様に言ってやると、

「このクソガキ……⁉」

と、そのケレスの挑発で ふるえながら言った洲之の顔がもの凄い形相になったので、

「怖い顔だな……。あんたの所には、高杉先生が帰りたくない訳だ」

と、言って、ケレスが追い打ちを掛け、洲之がさらに怒った様に見えたその時、

「ブメエエェェーーーーーーー‼」

と、杏の叫び声と同時に杏の光雲に衝撃が走り、思いっきり揺れ、

「ど、どうしたの? 杏ちゃん⁉」

と、洲之が杏に声を掛けたが、杏は鳴きながら暴れ続けた。

 何が起こっているのかケレスが辺りを確かめると、

杏の金色に光る羊毛が不自然に宙に舞っており、中には血が付いているものもあった。

(どうなってんだ⁉)

 ケレスがそう思った瞬間、また杏の悲痛な叫び声と衝撃が走り、

「う、うわあぁ⁉」

と、叫んだケレスはバランスを崩して落ちそうになったが、

「捕まれ‼」

と、叫んだ高杉が手を伸ばしてケレスの左手首を握り、

「先生!」

と、言ったケレスはその手をしっかりと握り、何とか無事だった。

「礼は、いらん。それより、しっかりハマルに捕まって色!!」

 そして、高杉から引き上げられた後そう指示があり、

「わかった。でも、何が起きてるんだ?」

と、言いながらケレスが杏の羊毛をしっかりと掴むと、

「さあな。兎に角、状況が良くない事だけは確かだ」

と、言った高杉はケレスを守る様に位置を変えたが、また衝撃が走り、

「ブゥ……メエエェェ……ヘエェェ……」

と、か細くなっていく杏の声と共にケレス達は墜落していった。

「げぇぇ⁉ 落ちるぅぅぅ‼」

 ケレスは絶叫した。

 だが、大して衝撃がないまま墜落しており、幸いな事に光の神殿の前に墜落していた。

 そこは相変わらず霧が濃かったが、ビフレスト山の麓よりは視界は良かった。

「あれ? 空から落ちて、こんなもんか?」

 そう言いながらケレスが杏の羊毛の中から辺りを見渡すと、杏の羊毛の光雲はどんどん小さくなり、

杏は元の大きさに戻ったが、

「杏ちゃーーーーーーん‼」

と、洲之の泣き叫ぶ声が聞え、ケレスがその方を見ると、

杏は血だらけになっており、気息奄奄の状態になっていた。

(まさか……、こいつ、そんな状態でも俺達をここまで運んだっていうのか⁉)

 あの生意気そうな杏の今の姿を見てケレスは愕然となったが、

「ガルルル‼」

と、クリオネが光の神殿の方へ威嚇を始め、

「クリオネ⁉ どうしたの?」

と、ミューが言うと、コツコツと足音を鳴らしながらある人物が光の神殿から現れた。

 それは、あの根の一族の女だった。

 その根の一族の女は冷酷な目でケレス達を睨みつけてきた。

「誰? あなたは⁉ ここは神聖な場所よ!

 あなたみたいな訳のわからない奴が入っていい所じゃあないのよ! 立ち去りなさい‼」

 その根の一族の女に泣き顔の洲之は睨みながらそう怒鳴りつけたが、

「立ち去るのは、あんた達の方よ。返してもらうわ……。全てね!」

と、静かに言った根の一族の女は洲之を睨み返し、

「はっ? あなた、頭おかしいんじゃないの?」

と、その根の一族の女の言葉を聞いた洲之がそう言って吹き出してしまうと、

「おかしいのは、あんた達の方よ。どうしてくれんの? もう、あのコの声が聞えないじゃない……。

 怖がってた……。最後に、あんな悲しい声してた……。

 許さない……。あのコを苦しめる奴、皆殺しにしてやる‼」

と言った根の一族の女の顔は憎しみに満ち、

それをぶつけるかの様に根の一族の女は持っていた鞭を強く地面に叩きつけた。

 すると、地面が大きく揺れ、四体の巨大なクレイドールが同時に生えたかと思うと、

一気にそれぞれがケレス達に襲いかかってきた。

「うわあぁ⁉ いきなり何するんだ‼」

 目の前に生えてきたクレイドールに叫んだケレスが腰を抜かすと、

クレイドールの拳がケレス目がけ振り下ろされ、

(ヤベッ⁉ 俺、死んだ……)

と、瞳を閉じケレスは人生をあきらめたが、ケレスは何事もなく唯、周りで何かが崩れる音が聞えた。

「へっ⁉ ど、どうなってんだ?」

 そして、ケレスが恐る恐る瞳を開けると、クレイドールは粉々になり土壁となっていた。

 その土壁をケレスが瞬きしながら見ていると、

「やれやれ……。乱暴な娘は他にもおったもんじゃ……」

と、呆れきっている長の声が聞こえ、

「長殿⁉ もしかして、助けてくれたのか?」

と、言ったケレスが勢いよく見上げると、

「当然じゃて! この程度、赤子の手を捻る様なもんじゃ!」

と、堂々と答えた長の声が聞えたが、

土壁の向こうで、ズズーン‼と大きな音が響いた。

「何だ⁉ どうなってんだ?」

 そう叫んだケレスはその土壁の向こうを見様としたが、また地面が強く揺れ、

ケレスはその場にしゃがみ混んでしまった。

 そして、ケレスがそのまましゃがみ混んでいると地面が隆起し、

ケレスは他の者から離されたが状況が見える様になった。

 だが、ケレスが見える様になった状況はあまり良いものではなかった。

 根の一族の女の位置はそれ程変わっていなかったが、その前に花梨と洲之、

それに瀕死の杏がおり、それから離された所でミューとクリオネがクレイドールと戦っていた。

「何か、あのクレイドール。前見た時より強そう……」

 苦戦しているミュー達を見てケレスがそう言うと、

「そりゃそうじゃろう。何せ、ここはマナに溢れておるからの。

 それに、あのグラマー娘はかなり怒っておるみたいじゃし」

と、長は分析し、

「どういう事だ?」

と、見上げたケレスが長に聞くと、

「ふむ、あれは、根回し(ねまわし)と言っての、

地のマナを操る技で、マナがあればある程、強力な土人形を創れるという訳じゃ。

 そして、その土人形を操る者の精神によって土人形の強さはさらに上がるのじゃ」

と、長は淡々と説明し、

「じゃあ、ここには世界樹があるから、マズイんじゃないのか⁉」

と、それに気づいたケレスが言うと、

「そうじゃな」

と、長から冷静に言われ、

「長殿‼ そんな呑気に言うな! 何とか出来ないのか?」

と、言ったケレスの語気は強くなったが、

「無理じゃな。あのグラマー娘がやめぬ限り」

と、言った長の声は冷静なままだった。

「そんなぁ⁉ それじゃあ、ミュー達が危ない‼」

 そう言ったケレスは、

「これっ! 待たぬか!」

と、叫ぶ長を無視し、ミューの所へ駆け寄って行った。

 そして、ケレスがミューの所に駆け寄って行く間、根の一族の女は殺意を花梨に向けていた。

「其方⁉ わらわに、何の恨みがあるのじゃ?」

 そう ふるえている花梨に聞かれ、

「あんたの存在、そのものよ……。あんたが生きている限り、喜蝶は、幸せになれない」

と、根の一族の女がその殺意の理由を答えると、

「喜蝶ですって⁉ あなた、まさかあのクソ女の仲間なの?」

と、叫んだ洲之は目を見開き、

「クソ女は、あんたの方よ。私の大事な喜蝶を、怖い目に合わしておいて……。

 それで、どう? 大事なものが傷付けられる気分は?」

と、その洲之に根の一族の女が殺意に満ちた目で睨みながら言うと、

「まさか……? 杏ちゃんをこんな目に合わせたのは、あんたなの⁉」

と、言った洲之の顔が青褪めかけた時、

「ギャオーーーーーーーーーース‼」

という声が響き、突風が吹き荒れ、いきなりフレイスヴェルグが空から現れたかと思うと、

杏を右前足で掴み一気に空へ舞い上がっていった。

「杏ちゃん⁉ 杏ちゃんを放しなさい‼」

 すると、洲之が杏を見上げながら叫んだが、フレイスヴェルグは前足を握り締め、

その爪が杏にめり込んでいき、杏の体から大量の血がしたたり落ち、杏は、ぐったりとした。

「何すんの‼ このクソ共がぁ‼」

 その杏を見た洲之は狂乱し、怒鳴ったが、

「周りを見てみなさい。みんな、あんた達を許さないんだって……」

と、根の一族の女が静かに言うと、ケレスは全身に突き刺さる寒気を感じ、

(この寒気は……。殺気⁉)

と、息を飲んだケレスが辺りを見わたすと、いつの間にか沢山の精霊、霊獣、動物が集まっており、

ケレス達を殺気に満ちた目で睨みつけていた。

「な、何なんだ⁉ こいつらは?」

 そして、その殺意にたじろんだケレスが言うと、

「これは……、マズい事になったのう……」

と、長のぼやく声が聞こえ、

「長殿⁉ 一体、どうなってんだよ‼」

と、ケレスが長を見上げて言うと、

「もう、誰にも止められぬ」

と、長の明らめとも取れる声がし、

「何だよ、それ……」

と、言葉が漏れたケレスの血の気が引いて行くと、

「ギャオーーーーーーーーーーーーース‼」

と、フレイスヴェルグの泣き声が轟き、バシャーン!という音と共に水しぶきが上がったので、

ケレスがその音の方を見ると光の神殿の前の泉は血で染まり、金色の毛が浮いていた。

「まさか……、あいつ、杏を泉に叩きつけたのか⁉」

 その状況を飲み込んだケレスの口からこの言葉が漏れると、

「杏ちゃーーーーーーーーん‼」

と、洲之の泣き叫ぶ声が聞こえ、

「次は、あんたの番よ。偽りの神子様……」

と、花梨を冷たく睨みつけている根の一族の女からその言葉が聞え、

(偽りの神子様⁉ どういう意味だ?)

と、その言葉を聞いたケレスが花梨を見ると、フレイスヴェルグが花梨を目がけ急降下してきた。

 そして、花梨は身動き一つ出来ず、叫んだ。

 叫んだ花梨は、杏と同じ未来を辿るはずだった。

 しかし、その花梨の未来を高杉が変えた。

 高杉は花梨と向き合い、花梨を守る様に立ち塞がっていたのだ。

 だが、未来を変えた代償に高杉の背にはフレイスヴェルグの右前足の爪がめり込んでいた。

「せ、せんせーーーーーーーーいぃーーー‼」

 そして、目の前で起こった事を受け止めきれないケレスは喉が張り裂ける程絶叫した。

 それでも、

「大丈夫か? 花梨」

と、高杉が姿勢を崩さずに優しく花梨にそう言うと、

「伯父様ぁ、伯父様ぁ……」

と、花梨は泣きながら高杉を何度も呼んだ。

 すると、

「邪魔するんなら、あんたからでもいいんだけど? あんたも喜蝶を苦しめたんだから」

と、言った根の一族の女は、高杉にも殺意を向け、

(どうしよう……。このままじゃ、先生まで殺される⁉)

と、ケレスに為す術がなくなったその時、ドスの効いた声がこの場に轟いた。



 ケレス君。

 今回も結構大変だったね!

 高杉さん……、どうなっちゃうの?

 ミューちゃんは?

 クリオネは?

 花梨は?

 そ、それに……、君、次の話でも大変な事になっちゃうんだ!

 てへへ♪

 あっ、でもでも! 会いたかった人とも再会出来るんだよん♪

 それは、誰だって?

 それは次回の話、【ケレス、アマテラスの使いに導かれる】でわかるのだ☆

 って、ケレス君、何所に導かれるんだろう……。


 







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