双子の姉妹(本当は違いますけど)
ゆるゆる更新していく予定ですので、楽しんでいただければ嬉しいです。
ふわふわのスカートにロングの髪の毛は耳の上でリボンで縛りあげ、軽く化粧をしてもらった顔は、少し不機嫌な顔をしていても笑っているように見える技術が込められている。
同じ顔の妹は自分よりも頭一個分低いけど、女性の平均身長からしたら高めの百六五センチ。
「いらっしゃいませ、ご主人様♬本日のおすすめはメイド特製オムライスです」
可愛い妹と同じ姿の僕は、女の子のような振る舞いになれるまで一ヶ月かかった。
「違うでしょ、舞衣っち」
僕は毎日家で見ている妹の顔がふにゃっと笑うのを見る。嬉しいときの自然体の笑顔が見せられる妹のことを心から尊敬する。
「それは昨日のおすすめで、今日のおすすめは、昔ながらのナポリタンでしょ?」
普段より少し高めの声で僕がそう言うと、お客様はニッコリと笑って僕たちを見比べる。
「流石メイドカフェ【ステラ】の期待の双子メイドちゃん‼今日もすっごく可愛いよ」
裏方希望で面接を受けたはずなのに、このおっちょこちょいな双子の妹の舞衣のせいで、僕までメイドの恰好をする羽目になってしまった。
「期待の双子だなんて‼自慢の兄妹です‼」
舞衣はヒラリとスカートをたなびかせて男性客の机のそばまで行く。基本的に二人掛けの席で全体でも二十人くらいが入れるカフェ。お触り禁止で基本的に利用してくれている方はマナーを守る人が多いから助かっている感じだ。
「そこ、姉妹じゃないの?舞衣っちは妹で私がお姉ちゃんだよね?」
腰に手を当てて大げさに言うと、お客様の目はキラキラ輝いている。僕たちのやり取りに期待をしているのかもしれない。双子の美少女として売り出しているから、じゃれ合っている姿が一番喜ばれている気がした。
舞衣は自分の発言がまずかったのに気が付いたのか、両手を顎の下に置いて、少し体を右に傾け声を振るわせて話し始めた。
「お客様、違うんです。私、男兄弟に憧れがあって、小さいころから姉妹って言うよりも兄妹って言っちゃうんです」
舞衣の発言に常連の男性客がうんうん頷いている。
「そうなんだ。ごめんね、舞衣ちゃんを困らせたいわけじゃなかったんだ。じゃぁ、おすすめのナポリタンを注文しようかな」
「「ありがとうございますぅ♬」」
僕と舞衣は合図もしなしで同時に返事をしてしまう。
こういう所は双子だよなぁっていつも思ってしまう。
「やっぱり朝比奈っちって可愛いね」
可愛い、僕一応男なんですけどと言いたいのをグッと堪える。今の僕はお客様を騙してバイトをしているのだから、正体を知られてはいけないんだ。
声をかけて来た男性客に何度も練習した営業スマイルを向ける。
「……ありがとうございます。それ以上言うと舞衣っちが嫉妬しちゃうから、めっだよ?」
ううう。僕のHPが減っていく。
舞衣はお客様の中を綺麗に渡り歩いている。尊敬する妹だ。
まだまだ続きます !!