4話
フィリベルトにエスコートされた先は、皇帝陛下夫婦の前だった。インメルトラウトは淑女の挨拶をする
「テッキトハウザー王国第一王女インメルトラウト・フォン・テッキトハウザーと申します。」
女に生まれて16年、王女として淑女の教育を受けたのでもうお手の物となっている挨拶を
「ほう、噂通りに美しい姫だな。」
「そうですね。」
顔を上げて両陛下を見る。
継母と同じ40代ぐらいの男女で皇帝ーエトガル・デ・ベレンセナダは、フィリベルトと同母兄弟なのでよく似た顔立ちの美丈夫だ。傍に居る皇妃オーガスタ・デ・ベレンセナダは穏やかそうな美女だ
「僭越至極でございます。」
「こんな若く美しい姫を娶るのだ大事にしないとな。フィリベルト」
皇帝エトガルは、弟であるフィリベルトに言う
「陛下・・・」
「では、式だな。姫の兄上達もまもなく到着する。」
「ありがとうございます。陛下。」
インメルトラウトは最後まで淑女の顔を崩せない。
傍に居るフィリベルトは前世というか前世では戦場でしか知らないので無表情のままだが
(コイツ、どこでもこんな感じなのかよ)
逃げたいがコイツは魔法も優れている
今は女なので素手では叶わない
(くそ、同盟ならまだ前世の母国にして欲しかった
いや、駄目かウゴーロヴィチの王はー)
前世の母国の王族について考えている内に結婚式になってしまう
「ーインメルトラウト・フォン・テッキトハウザー。汝はフィリベルト・デ・ベレンセナダを夫として生涯添い遂げる事を誓いますか。」
教会の司教がインメルトラウトに問う
「・・・誓います。」
インメルトラウトは誓いたくないが誓う。本心からではないのは自分でも分かる
「ーフィリベルト・デ・ベレンセナダ。汝はインメルトラウト・フォン・テッキトハウザーを妻として生涯添い遂げる事を誓いますか。」
フィリベルトにも同じことを問う
「ー誓う。」
「ーこれでフィリベルト・デ・ベレンセナダ、インメルトラウト・フォン・テッキトハウザーを神の許に婚姻が成立しました。」
口づけがないだけマシかー
こうしてインメルトラウトはフィリベルトの妻になったのだが
「俺は、お前に興味がない。」
「・・・・そうですか。」
結婚式の後、祝いのパーティーが終わり、新居となるフィリベルトの屋敷でインメルトラウトはフィリベルトに告げれた。
フィリベルトは帝国の騎士服ー黒の騎士服を着ている。既に礼服は脱いでいる
「あの・・・・」
結婚した夜だぞ?普通はーいやいやコイツに抱かれたくねぇ・・・
「仕事が残っている。」
「・・・は?」
「屋敷の事は使用人に聞け。」
「・・・・」
フィリベルトは夫婦の寝室を出て行った
「仮面夫婦か。」
その方が楽だ。
その日、フィリベルトは屋敷に戻ってくることはなかった。