あっしゅさん
あっしゅさんは、どこにいるのかしら?
ゆめうつつなのかもしれない。
あのね、ときどき、あっしゅさんは、ぼくに話しかけてくるの。
でも、ぼくには、あっしゅさんが何を言ってるのか、さっぱりわからないのよ。
ある日のこと、あっしゅさんは、ぼくにこう言ったの。
「あなた、さっきから、ずっとずっと、くちびるを舐めてるでしょう?」
ぼくは、恥ずかしくて、すぐにやめたの。
でも、あっしゅさんは、まだまだ続けるの。
「あなた、くちびるがひりひりするのが好きなんでしょう?」
あっしゅさんの言葉に、ぼくは、どんどん不思議な気持ちになってきたわ。
その日の夜、ぼくは、あっしゅさんのことをずっと考えていたの。
あの時のあっしゅさんの表情が、忘れられなかったのよ。
ぼくは、くちびるを舐め続けたわ。
どんどんとひりひりと痛くなっていくのに。
そして、ぼくは、気づいたの。
「あっしゅさんは、きっとぼくのくちびるに毒を塗っていたのよ!」
ぼくは、すぐに病院に行ったわ。
でも、医者には、何もわからないと言われたの。
それから、ぼくは、あっしゅさんに会わなくなったわ。
でも、あの表情が、ずっと頭から離れないの。
ぼくは、もう二度と、くちびるを舐めないわ。
終