2 日本じゃないなんて!
眠りから覚めると、そこは一度見たことのある天井だ。といっても自分の家とか、仮眠室の天井みたいに見慣れたものではない。
「夢じゃないのかよ……」
周囲を見渡してみると、机の上に置いたままだった食器達はなくなっている。あの女性が片付けてくれたんだろうか。情報収集もしなけければいけないな。
ひとまず部屋から出たいな。もっと詳しく周りを見たいし。
「あの~誰か居ませんかー」
部屋の中から助けを求めたけど、うんともすんとも返事はない。許可なく他人の家を歩き回るのも非常識極まりない。でも! 朝一番はトイレに行くのが私のルーティンだ。妙に腹も痛いし、誰かが来るまで耐えきれない!
気がすすまないけど非常時だ。お天道様も許してくれるはずだ、きっと。
「誰か居ませんかー。トイレお借りしたくて」
ドアを開け、廊下で声を出してみた。けれど何一つ物音もしない。
探索していると、あの女性と似た少女を発見した。手足が細すぎるのは気になるけど、娘さんか?
「お嬢さん? ちょっと、トイレを借りたいんだけど場所知ってるかな?」
「……↓」
指を下に向けている。一階にトイレがあるということか。いやー最近の子供は賢いな。
「ありがとう! じゃあね」
急いで階段を降りる前に、もう一度廊下を見ると少女はいなかった。恥ずかしがり屋さんでも頑張ってくれたのか、ありがたい。
「はぁー。これをしないと一日が始まった気がしないよ」
「あら、トイレに行きたかったの? よく場所が分かったわね。朝ご飯あるからこっちに来なさい」
強引な方なのか、私の手を引っ張り連れて行こうとする。なぜか力が強いので引っ張られるしかなかった。湊くんを思い出してしまう懐かしさだ。
食事は昨日と同じのシチューとパンだった。
「そういえば、娘さんと一緒に食べないんですか? さっき会ったんですけど」
その言葉を言った瞬間、空気がピリッと頬を切り裂いた気がした。……聞いてはいけないことなのかな。
「……あなたって旅人なのかしら。わたしの家に泊まっても良いけど、農作業手伝いなさい」
「まぁ旅人?ですかね。あとこの世界のことも知りたくて──」
なんだか露骨に話変えたな。さすがに異世界から来ました。なーんて信じられないし、旅人って言ったほうが良いかな。運動なんて大学のサークル以来かぁ、大丈夫かね。
「先に自己紹介でしょう? わたしはジュリナ。あなたは?」
「望月かなえです。一応医者と旅人やってます」
「医者だなんて凄いわね。……あと失礼だけど、あなたの顔って変ね」
まるで普通なことのように悪口言われた。平たい顔族とも言われるし、気にはしないけど真正面から言われるなんて世話ないぜ。
当面の目標は情報集めて、日本に助けを求める。空港も見つけて日本へ直行して、湊くんと仕事する。ま、長めの休暇ってことにしよう!