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01

「はあー、まったりしますね。こういうひと時は本当に幸せです。」


私は幸せな時間を過ごしていました。


私はグリファー伯爵家令嬢のローラです。今年で18になります。


これから五つある公爵家のひとつであるブリテルス公爵家の跡取りであるベルグ様に嫁ぐ予定なのでした。


今日もブリテルス公爵家の別荘の一つであるアルーバ別邸にやってきております。


小高い丘の上にあるこの公爵家の別荘からの見晴らしがとてもいいので、私は最近この場所で紅茶を飲みながら読書をするようになりました。


すると屋敷の中から婚約相手のベルグ様がやってきました。


ですがやってきた彼が私に言った言葉はとんでもないものでした。


「お前との婚約を破棄する!!」


突然の言葉に私は彼に聞き返しました。


「えっ?今なんと仰いました??」


彼は大きな声で言いました。


「お前との婚約を破棄すると言ったんだ。」


私は彼に理由を聞かずにはいられませんでした。


「ベルグ様??婚約破棄というのはどういう事ですか?私に至らない点があったというのですか??」


「至らない点しかないだろうが!!そもそも俺は嫌々婚約したんだ。なんでテメエみたいなダメ女と婚約しなければならないんだ。」


「いや婚約を先に申し込んできたのはブリテルス公爵家の方からでしょう。そしてベルグ様ご自身が決めたとおっしゃっていたじゃないですか。なんで無理矢理婚約させられた事になってるんですか。それをいうならグリファー伯爵家から身一つで嫁がされる予定の私がいうセリフでしょう。」


「そういうところが可愛げがないって言うんだよ!!!」


ベルグが大声で怒鳴りつけます。


「とにかくテメエの顔を見るのが嫌になったんだ!!もうお前はこのベルグ様の婚約者じゃねえ!いいか今日中にここから出ていくんだぞ!!!このダメ女が!!!!」


私は茫然としながらベルグの話を聞いていました。


すると私の後ろから聞き覚えのある女子の声が響いてきました。


「ベルグ様、このダメ女に言ってくれました??」


「おおよく来たイザベラ。ああガツンと言ってやったよ。だから安心しておくれ。」


声がした方を振り向くとそこには知った顔がありました。


貴族学院時代の同級生でもあり、ベルフェルト男爵家の令嬢であるイザベラがそこに立っていました。


「イザベラ??なんであなたがここにいるの?」


「あなたに代わってブリテルス公爵家夫人になるからに決まってるでしょう??」


「なんですって??」


「ああイザベラこそ我が妻にふさわしい女性だ。おまえのようなダメ女とは違う!!」


「ありがとうございます。私がベルグ様の妻になれるなんて光栄です。」


「そうか、イザベラが嫁に来てくれて俺も嬉しいよ!!!」


「ちょっと待ってください。家同士の婚約なんですよ?いくらあなたが次期公爵とは言っても当主でないあなたが好き勝手に決めていい事ではないでしょう。」


「うるさい!!もう嫌なもんは嫌なんだ!!!」


「公爵家の跡取りがそんな感情で動いていいと思っているのですか!!私達の振舞は家臣や領地に暮らす人々に大きな影響を与えるのですよ!!!」


「うるさい!!!俺は次期公爵様なんだ!!!そんなの知った事か!!!とにかく婚約は破棄だ!!!今日中にこの屋敷から出ていけ!!分かったな!!!」


そう怒鳴り散らすとベルグは屋敷の中に戻っていった。


するとイザベラがニヤニヤしながら私に言った。


「ローラは相変わらず、ダメな奴ね。」


「イザベラ??どういうつもり??」


「どうもなにもないでしょう?さっきベルグが言った通り、私がベルグと婚約してブリテルス公爵夫人となる為に決まってるでしょう。」


「ベルグを愛してるというの??」


「まさかベルグの地位と財産が目当てに決まってるでしょう?ベルグ本人には何の興味もないわ。興味があるのは彼の地位と財産だけよ。」


「分かったらさっさとここから出って行ってくれる??もうあんたはここには何の関係もなくなったんだからさ!!」


「イザベラ、部外者であるあなたに出ていけと命令されるいわれはありません。」


「だから!!!ローラあんたは捨てられたの!!!ダメな女なのあんたは!!!さっさと現実を見なさいよ!!!」


「そうだ!!せっかくだから今からあんたの立場を分からせてあげようか!!!」


するとイザベラは突如大声で泣き始めました。


いや顔は全然泣いていなかったので、嘘の大泣きを始めたのです。


「うあーんうあーん!!!ひどいー!!!ローラ様!!!」


そしてイザベラはベルグを大声で呼んだのでした。


「ベルグ様!!!ベルグ様!!!助けてください!!!」


するとすぐにベルグが屋敷より出てきたのです。


「どうしたイザベラ???」


イザベラは泣いているフリをしながらベルグに言いました。


「ローラ様と仲良くしていきたいってお話ししたんです。なのにローラ様ったら、私の事を泥棒女とかゴミ女だとかひどい事ばかり言われるんです!!!」


「なんだと、心優しいイザベラにそんなひどい事を言ったのか。」


イザベラは私から虐められているフリをしたのでした。


私はすぐにベルグに言いました。


「そんな事は言っていません。イザベラの方こそベルク様の財産しか興味がないと言っていました。」


「ひどーい。私はただローラ様と仲良くしたかっただけなのに、なんでそんなひどい事言うんですか!!」


ベルグはイザベラに優しく言いました。


「そうだよな、イザベラがそんな事いうはずないよな。」


ですがベルグは私には大声で怒鳴りつけてきました。


「このダメ女、イザベラをいじめやがって!!!とっととこの屋敷から出ていけ!!」


どうやら婚約破棄は覆らないようですね。


分かりました。それならここまでといたしましょう。


そして私は二人にこう言いました。


「婚約破棄してくれてありがとうございます。あなたと一緒にいると破滅しかありませんから助かりました。それともう手遅れかもしれませんが一応忠告しておきます。イザベラを信用した事を後悔する事になりますよ。」


二人は不思議そうな顔をした後で顔を見合わせるとイザベラがニタニタしながら私に言いました。


「もしかして負け惜しみのつもり??」


ベルグが大声で怒鳴ってきます。


「ふん、後悔するわけないだろうが!!むしろお前のようなダメ女がいなくなるんだから、毎日が幸せになるに決まってる!!」


「そうよ、私はベルグ様に尽くすつもりだから、そんな未来は永遠に来ないですよ。」


「その通りだ!!適当な事ばかり言いやがって、本当忌々しい女だ。このダメ女!!!とっとと失せろ!!」


するとベルグにテーブルに置いてあったカップの紅茶を掛けられてしまいました。


私はそのまま公爵家を追い出されてしまいました。


そしてその後私は実家である伯爵家へと連絡をとり迎えを寄こしてもらうのでした。


グリファー伯爵家の屋敷に戻った私は汚れた服を着替えると伯爵家に昔から仕えているメイドのアンナと応接室で会話をするのでした。


「そんな扱いをされたのですか??」


「ええ、それで戻ってきたのです。」


「なんという事でしょうか?ローラ様にそのようなひどい仕打ちを!!すぐにブリテルス公爵家に抗議をいたしましょう。」


「いえ別にしなくてもいいですよ。」


「そうはいきません。お嬢様が大恥をかかされたのです。たとえ相手が公爵家であろうとも言わなければなりません。」


「あっ!!それはそうとアンナ聞きましたか?お父様の鉱山開発が成功したのですよ。」


「そうなのですか?」


「ええ。しかも魔法石の埋蔵量がとても多い鉱山だったとか。これで魔法石不足も解消できます。これで多くの人達に魔法石を安く供給できるはずです。」


「そうですね今この国では魔法石が大いに不足していますから。」


「しかしお嬢様は本当に先見の明がございますね。王家から鉱山開発の話がきた時はどうなるかと思ったものです。魔物がゴロゴロいる場所での鉱山開発などできるわけないと公爵様はお考えでしたし、私もそう思っておりました。ですがお嬢様は是非やりましょうと言いました。伯爵様はお嬢様に説得されて鉱山開発のお話しを受けたのですし。」


「少し褒めすぎではないですか?褒めても何も出ませんよ。」


「いえお嬢様は本当にすごいお人なのです。伯爵様も過ぎた娘だといつも仰せになっていますし。全くこれほど聡明なお嬢様を追い出すなどブリテルス公爵家も落ちたものです。」


アンナは昔から仲がいいメイドなのですが、私をすぐに持ち上げようとします。


もちろん私を気づかって言ってくれているのでしょうが。


するとアンナは私の顔をじっと見つめると、その少し後で私に尋ねてきました。


「お嬢様一つ宜しいですか?」


「何ですか?」


「お嬢様は悔しがるどころかどこか安心しているようにすら見えるのですが、気のせいでしょうか?」


私は少しため息をしてアンナに言いました。


「やはりアンナに隠し事はできませんね。ええ私はとても安心しています。なにせ婚約破棄をしてくれましたからね。正直な所ベルグの所に残り続ければ恐らく破滅しかなかったでしょうから。まあ私を追い出してベルグ達は大喜びしていましたけど。」


「お嬢様それはどういう意味でしょうか??」


「今は止めておきます。まだ憶測の域を出ませんから。」


すると応接室の外からコンコンとノックがされた。


私はそのノックをした人に言いました。


「開いてますので、どうぞ。」


すると年配の男性使用人が入ってきたのでした。


うちで長年使用人として仕えているトーマスが入ってきたのです。


「お嬢様失礼致します。お嬢様に会いたいというお客様が参られました。」


「お客様??どなたですか??」


「セドリック様とヨーゼル様がお越しになっています。」


「分かりました。」


すぐにローザは二人の待つ大広間に向かったのだった。



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