表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/42

新しい友人(予定)

 


「ニオべねえさんがすまない」

 教養の講座の教室でそう話しかけてきたのは教会でニオべ様の袖を引いた年上の男の子だ。

「その、貴族の令嬢にいきなり話しかけるのは失礼になるらしいが謝らないままでいるのも無礼だと思ってな」

 講義前の僅かな時間で特攻し、とりあえず謝罪をという心境はわからないでもない。緊張する会話時間は強制解除できる状況にしておきたいよね。わかるわかる。

 ツンっとメープルに袖をつつかれた。

 あ!

「気になさらないで。正式の講座の前に魔法を教わることができるのは私にとって有益ですし、共に学ぶ場ですから、またお声がけくださいね」

 令嬢モードで言葉を出したけど、彼、私のちびっこ捕獲の図見てるんだよね。

 あー、どっちかっていうと口止め要って感じかな。

「昼食を一緒にいたしましょう。貴方のお名前もお聞きしたいですもの」

 サラッと拒否権なく提案し、私は受講のため席につく。

 これぞ貴族の強権。わがまま令嬢の有り様でしてよ。高笑いする度胸はないけどさ。

 そしてメープルが横で不満そうにむくれていた。やだ。かわいい。

「手配大変かしら?」

「問題ありません」

「問題は名も知らぬ相手との食事?」

「はしたないと見られますよ」

 えー。でも交友関係はひろげないとー。

 そう言えばゲームではメープルみたいな付き人っていたっけ?

 部屋の掃除とかしてくれるメイドはいたっぽいんだけど。これがゲームと現実の誤差かな?

 ゲーム中は壁的モブ?

 えー、メープルかわいいのに。

 そんなことを考えながら授業に集中する。今日の先生は王国の歴史。魔物の暴走についての雑学でした。

 我らが王国のはずれ辺境公の守護する土地には魔物の発生地たる迷宮があり国の重要な産物特産地である。現辺境公は前王様の弟、つまり現陛下の叔父君である。

 ゲームでは辺境公の御令息が第一王子の側近として王都に召還され、第二王子が辺境公を引き継ぐために迷宮の土地に赴任するのだ。王子様攻略している場合妻として愛人として側近としてお供する事になる。その場合、超高難易度ダンジョンが楽しめる。

 第二王子の愛人を目指す私は迷宮魔獣が暴走した時、近くにいて貴族の一員、辺境公(おそらくその時期には現王弟になられている方)の愛人として戦場にある予定なのだから魔獣暴走の前兆とかわかるなら知っておきたいなぁ。

 なんていうか、やっぱり戦闘力はどんな手段であっても高めておかないとな。ゲームでは魔獣と戦って負けてもなんか無事に帰ってきて数日無収入治療費支払うことになるだけだったけど、たぶん、現実なら死ぬよね。

 全分野に才能の種を持つヒロイン転生にものすっごく感謝する。


「アガタ君、君の意識はどこかな?」

「魔獣の暴走で起因となる可能性の高いものの候補と暴走のそばにいた時私自身にできうることとはなにかです」

 講師の先生がふむと指し棒を手のひらに打ち当てる。アレ痛くないのかなぁ。

「まず、子供である君たちに出来ることは逃げることだ。理想は大人の誘導に従っての避難。魔獣の注意をひかぬよう安全性の高い場所に避難したあとは大人しく待機することになる」

 くれぐれも勝手な行動をとらないようにと念押しされる。

「今ではなく成長した後は戦う術を持つ者は魔物を間引いていく努力を。いざという時に身を守る技術を鈍らせないように。行動出来なかったという後悔はなかなか消えません」

 聴きいっている生徒の様子をぐるりとみて軽い咳払い。

「そして戦う者は別に戦闘技術を持つ者だけではありません。戦う者の補助に回復支援魔法は必要ですし、後方にいて戦闘後疲れた彼らを待つ環境も大切なのです。心安らげる祈りの場所、清潔な水を扱う生活魔法、安心できる食事。そのような時に蓄えられた薬品に武器。そして事後の復興の技術もまた共に戦う国の一翼なのです」

 一旦、呼吸を整えて先生が手をうつ。

「そのすべてに金銭と命が動きます。商人とその地区を管理する役人、領主さまが忙しくなります。そしてその忙しさは国王陛下へと。みなさんの今を思う行動は大きくすべてに関わるのです。どうか、みなさんが自身の出来ることを常に求め、自身を伸ばされることを私は望みます。さて、時間ですね。今日の講義はここまでです。お疲れ様でした」


 暴走については先生も思うところがあるのでしょう。とても熱がこもってらっしゃいました。

 魔獣を間引く戦闘力は一応身につけたいですね。強くなるとストリートファイトを申し込まれるという難点はありますけど。

 アレ、いいお小遣い稼ぎなんですよね。勝てれば。

 さーて、ニオべ様の弟君とランチタイムですぞっと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ