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学園は王都から馬車で半日


 学園は城壁都市にある。


 というか城壁都市そのものが学園であり、魔物や事故事件で親を失った子供たちの受け皿でもある。孤児院機能を持つ教会が大小いくつも街中にはある。

 生活を担うために一通りの職業はあるし、そこにアルバイトを組みこめるように余裕ある人員配備を国の予算と貴族有力商人の寄付で賄っている。

 騎士団や魔術協会の出張所もあるし、いわゆる何でも屋である冒険者ギルドだってある。怪我や病気に対応する診療所やケアを行う療養所も。

 冒険者ギルドに登録できるのは十二歳から。それまでは学園からの斡旋となる。ギルドの依頼は壁の外に出る危険なものもあるから子供の安全優先とのことだ。

 無料で寮と受講できるのは一年限りとはいえ学園からバイトを斡旋してもらい受講料と寮費を賄う子供が多い。病気や怪我に関しても十六歳までは国費で治療が受けることができる。ちょっと治療士や医師見習いの実験台になる部分はあるがちゃんと大人の治療士医師の監督の下でだ。

 利口な子供なら成人近くまではこの城壁都市にいた方がいいと考えるんじゃないかなと思う。最悪教会に転がりこめば屋根と食事にはありつけるはずだしね。

 というわけでこの学園都市は存外広いのである。

 貴族寮のそばには温室のある公園があり楽器の練習をしている上級生や走り込みをする戦士系の人々の姿を見ることができる。攻略キャラいないかなと思うけど部屋の窓からじゃ遠くて見えない。見えたら逆もあるからダメなんだけどさ。

 公園の利用者は貴族が多いかもしれない。なぜなら公園の三方に貴族寮があるから。

 なにせ貴族は寄付金持って最低五年の修学が義務付けられている。そこに孤児援助も含まれている。

 私はおかあさまに八年で将来を決めてらっしゃい。と送り出された。今度予算を確認したいと思うけれど、コレおかあさまかしら? お兄様かしら?

 お兄様にお尋ねしたくてもお兄様の寮は第二王子様が住む王室寮。発生する諸雑務を整理する事務方仕事を将来のために引き受けているらしい。

 ものすごく会いに行きにくい。月の半分しか王子様はいないとはいえ。

「王子様に会っちゃったら困るじゃない」

 そうこぼすとお茶を淹れていたメープルがぱっと振り返った。どーしたの?

 薄水色のカップは私のお気に入り。シンプルで扱い易く洗いやすそうなカップだ。私は洗わないけど。

「王子様と将来その、お付き合いなさるのでは?」

「そうよ。将来、ね。今じゃないわ」

 だって今の私じゃ絶対パラメータが足りないもの。

 礼法もだし、モラルも、そして意外に大事な魅力が足りていない。ダンス講座四回の魅力向上は体術講座八回における魅力低下でほぼ相殺される。

 つまり、今じゃない。

 どーして胡散臭いものを見る眼差しを私に向けているのかなメープルよ。

「行き遅れる未来が見えた気がいたします。お嬢様」

 淹れてもらったお茶を受け取る。

 柑橘のジャムを混ぜたお茶はホッとする甘さで……あれ、メープル学園生活二週目も終わってないのになんかスキルアップしてない?

 ズルくない? え? なんで?

「ひどーい」

「ひどくありません。私は行動しないことも大事ですが、行動することも大事だと思います。王子様にお目通り目的ではなく兄君様への面会はかまわないと思いますよ?」

 いや、なんていうか妙なヒロイン効果出ちゃって好感度管理できないとか困るなぁなんて余計な心配がありましてね。なんてメープルには言えないっ!

 だってなによりステータス見えないし、ゲーム中じゃ学園システム簡略化されてたし! 王子様ちゃんとずっと学園に居たはずだったし!

 知っている登場人物は現れないし。あ。でも王子様にはまだ近づきたくない。絶対挙動不審人物になってお兄様に棄てられる。

 ああ、ゲーム通りじゃない。

 違う。

 ここはゲーム通りには動かない場所なんだ。

 ここは今、私が生きている現実。

 だって非攻略キャラが私の一番好きな人だから。


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