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メープルは

 


 ついてこないだろうな。

 何処へって辺境公の所領に。

 そうなると専任のメイドか使用人を雇えるようになっておいた方がいいのよね。

 実際、辺境に行くときには移民受け入れ多くなるし。恩赦も増える。理由としては辺境の迷宮が誇る死亡率の高さと野外の魔獣湧きの多さにある。常に狩人募集中なのだ。

 つまり危険地帯につき雇用が高難易度である。

 でも必要である使用人。

 してもらうことは家の管理。庭師と料理人と掃除人、あと一応付き人メイドかな。

 学生でいい候補がいれば勧誘しておきたいところだよね。家の関係の人達は家についていて私に仕えているわけじゃないから。私個人で人を雇う必要性の可能性だ。もちろんお父様やおかあさま、家がつけてくださることも考えられるが、私の狙いは『辺境公になられる未来の王弟の愛人の末端』である。

 貴族の娘として不名誉と言われかねない立場なのは自覚している。

 貴族愛人なので名目上の夫必要だしね。

 子供を身籠もることがあったとしても愛人の子は認知されない。名目上の夫は愛人とその子供を認知保護する立場の人間である。基本的には名目上の夫には比較的高位貴族が選ばれるのだが、今純愛が流行っているせいで『貴族の第二夫人、第三夫人枠』がつくり難いのだ。だからといって正妻に据えるには問題が多い。そうなると爵位を譲渡した隠居貴族が書類離婚して『愛人』を『正妻』とするのだが、また問題も多い。しかし王家の血を放置することもいただけないというイバラの道となっている。

 王家との関わりを重要視するならたぶん実家が相手を用意してくれるのではという安直な想いはあった。不安がないわけじゃない。

 そして私がそんなことを考えているのは未来の王弟辺境公とのお茶会の席である。


「うん? 候補はやはりニクスだろ。まぁ現地なりでそこそこの功績をたててもらう必要はあるがな。赴任してしまえばこっちのもの。自由恋愛推奨で身分に囚われない想いを解放させればよいのだ!」

「その心は?」

「俺は彼女だけでいい。しかし関わる者達にも幸せになってほしい。有能な人員は必要だ。ならば俺様が恋の身分差を乗り越えさせる橋になろうかと」


 おーじ様は悪い人ではないがちょっとネジがズレている気がする。


「おーじ様、好き。友愛ですが」

「ああ。好ましく思っているよ。同志として」


 爽やかな笑顔に思う。


「顔はいいのになぁ。顔だけじゃだめなんですね」

「アガタ嬢、心の声は伏せたまえ。傷つくから」


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