お兄様はおかあさま似です。
柔らかな銀髪、薄い青い目、白く透き通る肌。お兄様は黙っていると生きてるのか精巧な人形なのかと悩まざるを得ない美人です。
成長度はあれど、平均値よりちょい上の私とは違いますね。
「キャスティリア様と仲良くさせていただいたようだね」
妙に毒と棘を含ませても聞こえるお兄様の声。
「まだ主流ではない魔獣の肉をすすめたと聞いたけれど?」
「美味しいですよね。バロナケーキ。私、食堂では優先的に食べてます」
お兄様、額に手を当てて俯いてもかっこいいですね。王室料理人と辺境公使用人(推定)がいたから問題があるとは思わないんだけどなぁ。むしろ辺境公が選んだ取り巻きとか側近はなんでいないのって疑問の方が強いし。
魔獣のお肉は魔力体力の増進増強に有用で影響を受けやすい幼児に与えることに関しては確かに要注意と習いました。素材としてクドさもあり、あまり好まれないことも確か。
バロナケーキは香辛料と素材の淡白さで食べ易いんですよね。効力も一時的なものだし。(食べただけでは効果がなく、活動する必要がある)
「ゲテモノ喰い令嬢と呼ばれかけていることを自覚しろ。殿下は面白がっているが、当家の評判としては良くないからね」
「美味しいのに」
「現場でアレンジするのやめなさい」
「だって、そこに素材がもったいない状況であるんですよ」
「素材じゃなくて調理済み料理。通常ホストと料理人に失礼だから」
だって、美味しくいただきたい。
こんこんとお兄様からお説教され、お作法の家庭教師の方にも嘆かれながらお説教されました。「パーティ会場でバクバク食うな」(超訳)と。
やっぱり私に貴族夫人生活って無理っぽいよなぁとため息が出る。
講座コマをとって身につけてもカタチ、ガワはできても本来の部分がボロを出す。
ヒロインスペックと私自身の誤差。
その誤差が貴族令嬢としての合格範囲から逸脱してしまっているんだろう。
「殿下の愛人を目指すなら形式ばかりとはいえ貴族の夫人になるのだからそこは押さえておきなさい」
お説教の中にそんな言葉も含まれていた。
お兄様の中でニクスは候補に入ってる?
このままだと貴族位を引き継ぐのはブラウシュナーでニクスは平民になる。家を継ぐのはブラウシュナーでなければ、ニクスは王子様と一緒に私の夫として辺境に行くことはできない。そして、貴族でなければ王子様の愛人の夫としてふさわしくないのだ。
思わぬ難関に気がついた私はうだうだと新年を過ごした。




