ひっそりと
隙をついてソロ探索にまいりました。
武闘系講義における実地訓練を選んだだけなので合法ですけどね。ブラウシュナーもニクスもクオン様も同行不可です。
私、成績は悪くないですし、魔術魔法も使用でき、その上で回復魔法も問題なく使えるいわゆるオールらうんだーというヤツなんですから、ちょっと凄いんです。
いや、別に自信過剰だから鼻を折るために「行ってこい」と送り出されたわけじゃないはずです。きっと聞いても「そんな真似はしない」としか言われないヤツだなんて思いませんとも。
先生方もそんなに非道ではないはずです。ええ。疑ってなんていませんとも!
武術クラスの講師陣で管理しているという修行用迷宮。ゲーム中には特に描かれることのない場所に正直わくわくします。
あのゲーム、フィールド戦闘は初期から解放されていましたが十六から十八までの二年間、王子様と辺境領にいくを選択した場合のみ迷宮対策プレイが開くというご褒美で。まさか辺境以外にもこんなに迷宮が存在しているとは思わなかったです。世界大丈夫ですか? これ。
実は王子様と辺境に行くには嫁ぐ、愛人になる以外にも武人として就職採用される。文官として就職採用される。現地商人として採用されるというルートもあるのだ。エンディングまでの二年間仮雇用の体験就職扱いで転移ゲートを利用して週五コマまでは学園の講座も取れるという。
この場合庶民落ちか王子様の側近有力者の妻となるか二択なのでニクス以外との確率が上がるので避けたいところである。
ほんと貴族令嬢に生まれつくと活躍の条件厳しいなと思うしだいであります。
そんな与太ごとを回しながら蜘蛛型魔獣スパイドルを燃やし、犬型魔獣レッドハウを凍らせて存外サクサク迷宮を進みます。
魔物からのドロップは厳しいですがないわけでもなく不思議な感じ。
燃やした蜘蛛から絹糸やレースのショールを入手って不思議以外のなにものでもない。
レッドハウから落ちた不明肉のジャーキーは人が食べていいものなんだろうか? レッドハウのおやつでは?
樹状魔物ウッドシャウラーを短槍で薙ぎ払い核をぶち抜く。魔法以外の攻撃能力と自身の学習認識能力を確認する機会は何気に少ないので助かる気がする。
倒した魔獣は討伐録という魔法書に記録されていくのだ。表示されるのは魔物の名称と数だけ。もしかしたら講師の先生方は私達のレベルやステータスを数値化して把握している疑惑である。
定期的に自分のレベルやステータス数値社会的評判の階位が知りたくてたまらなくなる。
自分の立ち位置がわからない。
私は目的にどこまで近づき修正すべき誤差と方向性は間違えていないのか。そんな不安に胸を焦がしながらドクガオオガエルを雷撃魔法でせん滅しドロップアイテムを収納鞄につっこんでいく。
迷宮ドロップ品ならほぼ無限に収納できる便利鞄である。(迷宮ドロップ限定なので野外の魔物からのドロップ品は入らない)
魔物の皮革を魔法で加工した収納鞄は下位は迷宮ドロップのみ、上位は迷宮野外魔物ドロップなら無限収納という鞄。数ヶ月以内に上位収納鞄を手に入れたいものです。
不便な点は田畑の収穫分や加工商品の運搬にはなぜか使えないという点。薬や野営に必需道具は別荷物になるのである。ただ、魔物からドロップした武具は鞄にしまえるという利点がある。あと、討伐録は鞄に入れておける。つまりドロップ品を利用している?
思考に沈む私の目の前にあらわれたのはふんわりと夢のような世界。
ふわっと咲く綿の花。蠢くまぁるい赤い果実。
綿の花魔獣バロナフラワーの群生地である。
そして、私はバロナケーキが大好物なのです。
バロナの果実ぅ!
ジャーキー齧りながら個別撃破していきましたが、なかなかドロップせずにゲットできたのはよっつくらいでした。残念!




