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夕食会です

 


 具沢山のスープと数種類のパンと数種類のパイがテーブルには好きにとれとばかりに並べられています。

 それぞれのグラスの中身は色が違い丸い氷が照明に煌めいています。

 メニューはともかく贅沢なことです。

 おーじさまもちょっと庶民よりのメニューにわくわくしているように見えます。

 わかります。温かいお食事って珍しいですよね。具沢山スープとかも。

 実は具沢山だとしても固形物残っていないスープに慣れているのが高位貴族や王族ってモノですからね。


「さて、予想外のこともあったがみんな怪我もなく戻ってこれた。まずは食事にしよう」


 号令は一番偉い王子様がグラスを軽く掲げる。いわゆる乾杯。

 その後は食べながらの歓談という流れだ。

 ディルノ君がツワト様にスープの野菜は簡単に潰れるところを見せていたり、スープを含ませたパンを食べて見せたりしていた。


「旅先などでは堅パンしか手に入らないこともありますからね。食べ方は試して知っておいた方がいいと思いますよ。……一般ご令嬢は嫌悪感を示されやすいのですが、フローレンス嬢は気になさらない気がして仕方ありませんね」

「美味しいパンでおいしいスープをいただくことは美味しいですものね」


 ん?

 ちょっと待て。

 私、クオン様に貴族令嬢らしからぬ。って言われている?


「畑を育ててくださっている方々と大地と天候などの神の恵みに、皆様方の研究の成果ですもの。ぜひ全部の種類を食べてみたいですわ」


 にこにことニオベ様聖女。

 そーですよね。

 美味しいものはここまで成し得た方々すべてに感謝を捧げつつ、ダイエットとは無縁に食べますよ! あとで訓練すればいいんですよ。


「研究?」

「はい。そうですわ。人々の発見と努力と成果をより突き詰める研究を繰り返した恩恵を今、私達は味わっているのですわ。ツワト様」

「ああ、確かにそうか。作物も人の努力あって収穫されるか」

「そうですわ。もっと叡智の高みに、魔力を研鑽するように皆様が己が道に邁進なさった結果ですもの」

「私が強さを求める為に研鑽を重ねることと変わらぬことなのだな」

「まぁ! その通りです。すぐにわかっていただけて嬉しく思いますわ」



 ニオベ様の言葉に疑問を抱いたのか妙に尋ねてかまわないのであろうかという空気をまとわせたツワト様があっさりニオベ様の論に納得し嬉しそうなニオベ様マジ女神。ニオベ様ちょっぴりあった遠慮の壁が溶けさったようでにこにことツワト様の手を握ってしあわせそうです。

 ツワト様も勢いに押し負けてぎこちなくも微笑んでおられます。その後、ニオベ様に『不用意に他者の体に触れてはいけません』と苦言されていましたが。

 これが歓談への流れか!?

 真似できない!


 あ。このパンしっかりめで中に干し果実混ぜてある。こーいうしっかりめのパンにチーズとかバターのせてあとお肉とかものせて食べたらおいしそう。

 あの大皿にハムの薄切りが見えるからハムのせてスープの具材のせてチーズをそえて火魔法で炙ればいいんじゃない?

 ニクスにパンをひろめに切り分けてもらって、取り皿にハムとチーズをとってもらう。なぜか不審そうな眼差しで渡してくれない。なぜ?


「なにをなさるおつもりでしょうか?」


 なにを?


「スープの具材をのせて焼く?」


 つい、ニクスに問われるとストレートに答えてしーまーうーーーっ!

 ニクスと遠巻きに眺めてらしたお兄様の眼差しが半眼ーーー!

 ここでやることじゃなかったかもしれないけれど、ここでしかできない、出会えないおいしさな気がするのに諦めるしかないのか。令嬢のこの身が憎い。

 ニクスとしばし見つめあう。なんだか背中に冷たい汗が滴る感じ。


「調理師の方にお願いしましょう。お嬢様、お料理の火力をご存知ですか?」

「ご存知でないです」


 ススっと寄ってきた給仕の方がニクスの持っていたお皿を受け取り一つ頷いて去っていった。厨房の方かな?



 適温適切調理されたピザパンもどきはおーじさまにも好評でしたよ!



 美味しいは正義!


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