冒険を終えて
本日、私は学生寮に帰りつくとニクスからメープルに引き渡されます。湯浴みをして衣装を改めてから今日の感想会を含む夕食会です。気が重いですよ。
貴族ではないクオン様とニオベ様がいるので正装ではなくあくまで清潔な服装が要求されています。ちなみに貸衣装が用意されているのかもしれません。ニオベ様がそんな感じのことを以前おっしゃっていました。
ニオベ様とクオン様に関してはフローレンス家が少々パトロン的な存在でもあります。つまり衣装はフローレンス家持ちですね。
ディルノ君は新興男爵家なので国から多少は支給されているはずではあります。王子様付きですし。
……けっこうちゃんとした装いが必要か。
メープルにおまかせで湯浴み。従者用の講座で覚えたオイルマッサージだとか入浴剤だとかの実験台にされましたよ。浄化魔法を全身に浴びちゃダメなんだろうかと真剣に悩むアガタです。
浄化魔法で身体の表面汚れに老廃物を除去して回復薬と香油の成分を分析研究してつくりあげた水魔法で潤いコーティングが簡単なんだけどなぁ。
この世界の湯浴みって足湯くらいに溜めたお湯で体洗うんだよね。冷めないように魔法で水を温めながら。どうせなら湯船に浮かぶ勢いでお湯と戯れたいんだけど、そういった文化がないんだよね。地味にツラい。
お風呂文化のある文明に所属する人間が描いたゲーム世界なんだからそのくらい便利でもいいじゃない。
不可思議不条理は意外に多い。不衛生さや不思議便利事象や道具。不満が多いようで不便が少ないバランスな世界なのだ。
幸いなことはコルセットは貴族令嬢の制服じゃないってこと。まぁ、正装は重いしキツいし動きにくいんだけどね。
胸元と腕、背中の露出は許されても下半身の露出は許されないのが貴族女性のマナーです。
成人前なので上半身の露出に対しても厳しめな眼差しを向けられるので重いです。
足首までのクリーム色のドレス。飾られたレースには淡いピンク。髪はハーフアップ。必要以上にきらきらしくもなく、使用された素材の高級感に飲まれ過ぎず鏡にうつるアガタ・フローレンスは清楚かわいい。
ああ、お食事会、気が重いです。
「まぁ、かわいいわね」
「ニオベ様」
水色のドレスを着るニオベ様は水の女神様のようだ。上半身も下半身も露出はほぼないシンプル清楚系ドレス。ニオベ様は清貧を好まれるのだ。ただ、体型は性的に男性を惹きつけやすい魅力に満ちている。
ドキドキするギャップ萌えは私の性癖です。ごちそうさまぁ!
「メープルがいろいろと力を尽くしてくれたんです」
ここまで付き添っていたメープルはニクスのそばに立っていて何事か伝えたかと思うと頭を下げて退室してしまった。
男性陣は基本黒の上下。学園支給の制服アレンジですね。
女生徒にはあんまり推奨されない正式会場への制服着用が羨ましいですね。
ツワト様も黒のドレスですか。銀の髪が映えてカッコいいと思います。
高位貴族にはやはり薄い髪色が多いんですよね。王子様紫がかった黒ですけど。
おーじさまの寮のサロンで夕食会です。
ニクスがあたり前の顔で給仕役に立っておりますがニクス、そっち側じゃないでしょ。今日は。
って、お兄様がどーして給仕役に混じってるの。メープルもニクスもとめないの!?
「あら。ガーランド様に給仕していただけるなんて夢のようですわ」
「光栄です。我らが女神様」
ニオベ様がお兄様に微笑んでお兄様もニオベ様に微笑んで返されます。ニオベ様は女神杯連覇している奇跡の女神様ですからね!
あら?
とまどっているの、私だけ?




