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近所の迷宮に行きました(キマズイ)

 


 おーじさまの宣言通り冒険仲間は私(回復)、おーじさま、ニオベ様(攻撃魔法使い)、ツワト様(剣士)、クオン様(魔法剣士)、ディルノ君(斥候)、ニクス。

 七人パーティは少し多めに感じます。

 おーじさまとニクスはいまいち戦闘職の、どれに割り振ればいいのかがわからないです。


「フローレンス嬢が、回復?」


 クオン様が疑問符たっぷりに私を見て頭を揺らしました。


「回復薬は不足ないけどいいの?」


 ディルノ君、どういう意味ですか?


「私も回復魔法使えますよ」


 ニオベ様、メイン攻撃&補助が貴女の立場ですよね?


「どーいう意味ですかっ! 私は回復役と言えば回復役なのですっ!」


 プンスカ怒る私を和やかに宥める男ども。私をムードメーカーにするんじゃないっ!


「動くの好きだろう。フローレンス嬢」

「殴るの好きだと思ってアガタさん、向上心高いから」

「もちろん、スタッフで対処なさってくださってよろしいですけれど、回復を忘れても私がなんとか致しますね」


 クオン様、ディルノ君、ニオベ様……。

 お優しくって言葉も出ないわっ!!

 人をなんだと思ってるのよ。切り返しが怖いから叫ばないけどね!


「お嬢様、落ち着いてください。お嬢様」


 ニクスがそう言って私に甘い飴玉をくれる。甘いものを与えておいたら大人しくなる幼い子供じゃもうありませんから、ね。……あ、美味しい。ほんのりと果実とお茶の香りが抜けていく。新作かしら?


「美味しい」

「よかったわね」


 うふふとニオベ様が笑っていて口の中は甘く幸せで。うん。しあわせ。


「本日の目的は迷宮内の魔物を間引きすること。そして、魔物という存在との接触戦闘に慣れることを目的にしている。野外の魔物魔獣は兵士や専門職による間引きからもれた存在。今回のここはかなり初心者向きの案件でなんとかこの人選で許可をもぎ取れた」


 あ、おーじさまが抱負を述べている。そうだよね。たぶん、ブラウシュナーが後ろから護衛している気はするんだけど、気分は大事だよね。お口の中がしあわせー。


「交流をはかりつつ、気を抜くことなく、無事攻略しよう!」



 クオン様とディルノ君が先導し、ツワト様とニオベ様がしんがりをつとめ、私とおーじさまとニクスが真ん中です。どうやらニクスの配役は荷物運搬なのかな?

 そして、会話がありません。

 ディルノ君とクオン様は目で会話をしているようで時々頷きあっています。

 記憶に残るこのダンジョンはさほど広くない地下三階までのシンプル旧時代地下倉庫といったていであったと思います。特に拾い物もなかったよな。シブくてつまんないチュートリアルダンジョンのはず。

 そう、ソロ攻略楽勝の。


「ツノオオネズミが出ると資料には載っていたが迷宮内の個体は外と色が違うらしいし、楽しみだ」


 おーじさまが沈黙に耐えかねたのか小声で話題を振ってきた。

 私採集依頼で薬草採りはしたことはありますが魔物魔獣に遭遇したことはないんですよ。一度たりとも。


「私は魔獣、はじめて見る予定ですよ?」


 たぶん、ブラウシュナーの過保護ですね。

 まさかとは思うけど、クオン様も私から魔物を遠ざけてたりしてるのかしら?

 私だってレベル上げしたいんですけどね!


「不用意に敵性生物に近寄る必要はありません。外見の愛らしいモノも存在しますが、あくまで害獣であることをお忘れなきように」

「ありがとうございます。ツワト様。迷宮魔獣はせん滅あるのみと先生方もおっしゃっておられました」


 グッと拳を握り雪氷公女様とお呼びしておきたいのを必死でツワト様に変換する。お名前呼びなんて身分差と立場と距離感がバグ暴走しそうで気持ち泣きそうです。


「でも、ツノオオネズミはちょっぴりかわいいんですよ。迷宮内の子達は毛艶も良くてふわふわかわいくておいしいのよ」


 にこにことニオベ様がひとまとめにしていいのか悪いのかわからない発言をなさったせいか、次の発言者のハードルが爆上がりしましたよ。




 交流、難しい!!



 ふわふわなのは毛並みですか?

 それとも肉質ですか?


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