十四歳になりました。
残る猶予は二年。
なにしろ第二王子様は二つ年上ですから同じ学内にいるのはあと二年なんです。
武闘系の講座を減らし芸術学術系重視にシフトしつつひと月に一週間枠で冒険者ギルドで仕事依頼を受ける用の日程をつくります。
片道二日くらいの依頼ならおつかい依頼も受けられるように。
そしてお供はブラウシュナーかニクス兄弟のどちらかが必須で城壁の外に出る時はニオベ様がついてらっしゃいます。
つまり従家の護衛プラス信頼できる女性(フローレンス家が支援雇用している)がいてはじめてお外に出る事ができます。
お守り付き冒険者です。
ゲーム内ヒロイン、どーして単独行動できてたの!?
バイト代良いからと笑ってクオン様やジェニスジェファーも同行してくれることもあります。
それ、ギルド報酬じゃなくてフローレンス家報酬ですよね!?(いいけど)
そしてなぜか第二王子様がごく稀に同じクエストに参加されます。
なぜかというか、騎士団員のブラウシュナーにお兄様の従者として優秀だと定評のあるニクス。優秀さゆえに気に入られているクオン様。収穫祭武神杯で優勝したニオベ様。ある意味戦力過多ですからね。フローレンス家の責任になるという暗黙の了解が胃に重いですが。
大丈夫です。
私、回復枠ですから!
戦える回復枠ですから!
「アガタはニクスが好きなんだね」
さらっと殿下に爆弾落とされました。
「ずっと見ないように見てるから」
そんなに、そんなにわかりやすいんですか。私って!?
けっこう衝撃です。ショックです。突きつけるなんてデリカシーの無さがお兄様級ですよ。殿下。
薄く細められた薄紅の眼差しにひぃと身をよじってしまいます。
「ああ、おびえないで。バラす気はないし。私としては君が私に興味がないことは友人付き合いしやすくて良いと思っているんだから。……もちろん、内緒だけどね」
比較的接近状態での会話です。普通止めます。侍従や付き添い女性が。
それが第二王子様ということもあって誰も止めません。これで王子様に伝わることといえば、『フローレンス家は娘を殿下がお好きになさっても黙認致します』という宣言なんですとね。
だってこの距離婚約者だったとしても『ふしだら』とはなされる距離ですからね!
去年までの十三歳が許される距離と十四歳(もうじき嫁入り可)の許される距離は明確に違いがあるのです。
ゲーム内ではわからなかったですけどね。
距離が近いの全部事故っぽかったのはこういった背景があったからかも知れません。
でもたぶん、裏で『ふしだら』とは呼ばれてたいんだろうなぁ。私の主人公。
「友人、ですか?」
「そう。友人。気兼ねなく会話を楽しむ人間関係を多めに持っておきたいんだよ。私はね。これから新しく気兼ねない友人に出会える機会はきっと少ないだろうから」
「お兄様がなにか?」
ほのめかしていたのだろうか?
「君が私に憧れている。とは兄上に言っていたらしいよ? クオンやディルノから聞く分にも評判はいいし、魔獣暴走時の自身が為せる手段を増やしていく姿勢には会話を楽しめる関係を構築する一番の障害だと思っていた」
どういう意味だよ。王子様よぉ!
王子様に憧れるのは年頃少女の定番だろう!?
私の王子様が実際の王子様身分ではないだけで!
「だから、友人になれるだろう」
にっこり笑う王子様からはどこか腹黒いニオイを感じました。
ええ。
王子様が強引に仲間になりました。
なーんてテロップの錯覚が視界を過った十四歳アガタ・フローレンス薬草収集と魔獣退治の冒険中の一幕でした。




