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見ていたのは

 


 個室に入る前のじゃれ合いだったらしいがそこが一番アレじゃないですか、やだーって頭を抱えた私、アガタ・フローレンス十一歳です。


「あなた、気が散っていてよ。ムカつくわね」


 はい。ダンス講座で絡んでくる友人、ジェニスジェファー。最近は礼法の講座にも噛みついてくるようになったこの吸収力が怖い雑貨屋(いつか行ってみたい)看板娘ですよ。

 先生方も身分をこえた友情は微笑ましいとなまぬるく見守って下さってます。ええ。同年代の友人のいない私を心配していたとかこぼされたのは聞こえないフリをいたしました。

 ええ、伯爵家令嬢でありながら誰かの取り巻きをするでなく、取り巻きがいるわけでなく異分子でしたね。私!

 泣きませんから!


「聞いてらっしゃるの?」


 イラついたジェニスジェファーの小声に意識を向けると成績上位者の見本演技がはじまるところだった。


「ありがと。ジェニー」


 見逃さずに済んだことにお礼を言うとそっぽを向かれた。黒髪からはみ出した耳の先が赤い。

 ああ、友達っていいなぁ。

 ツンな幼馴染みメープルもかわいいけど、チョロインツンデレを感じさせるジェニスジェファーもとてもかわいい。カワイイは正義だと思う。

 講座が終わった後ジェニスジェファーに「あんた、ちゃんと見るものは見なさいよ!」と集中力について怒られました。

 そんなにわかりやすいかなぁ。それにちゃんと見てたんだけどな。


「ジェニーみたいな友達ができたのが嬉しくて浮かれちゃってたかも。後、講座は聞いてるか……」


 目を見つめて(ジェニスジェファーの目力強いけど)弁明すると、ぱちりと目を見開いたジェニスジェファーがぱっと口元を手で覆い、(一般的じゃないけれど爪をあえて染料で染めているのか、芸細かい)真っ赤になった。何か言葉にならない何かがこぼれてるけれど私はツン強め美少女ジェニスジェファーには似合わない様に首をひねる。いや、ギャップでかわいいけど。


「と、とも、だち?」


 え?

 疑問符!?

 え?

 私だけ?

 愛称まで呼んでわーい、はじめてのおともだち(メープルは姉妹に近い幼馴染み)って思ってたの私だけ?





 せ・ち・が・ら・いっ。




「同じ場所で同じように美しさを目指し、切磋琢磨する好敵手、それすなわち友、そう考えていたもので。さすがに武人思考が過ぎましたわね」


 武人思考、ほら、あの一戦ケン(拳or剣)を交わした相手とは十年の理解もこえるとか先生たち言ってるから。つい、うん、ついね。そうか、女の子の世界はちょっと違うか。が、がっかりなんかしてないから!

 あ。そうか。じゃあ。


「ジェニーだなんて勝手にお名前を略してしまって失礼でしたね」


 あー。先生たちに誤解されてるの良くないなぁ。


「あ、」


 あ?


「ジェニーで結構よ。っと、あの、今度の休養日に町でお茶でもいかがかしら!? 案内して差し上げてもよろしくてよ」

「え?」

「ワタクシもおともだち、をもっと知りたいですし」

「え?」


 あ。声漏れた。


「さすがに人目と身分がありますからワタクシはアガタさんとお呼びしますからね。きよ、今日のところはごきげんよう。次の講座でお会いいたしましょう。……アガタさん」

「え、ぇ。ごきげんよう。ジェニー」


 くろかみエスニック美少女のチョロツンデレいただきましたー。













 ジェニーさん、お友達いないの?


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― 新着の感想 ―
[一言] ようやく最新話まで。あぁ、この自分の想いのため、決行していく感じ。好きっす! 僕の読み込みが浅いのか。作中で初恋の人はまだ語られてないですよね? ドキドキしながら、今後も追いかけて読み進め…
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