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体を動かす前の食事とは

 


 軽く消化の良い物がいいと思います。

 メープルとクオン様の挨拶を見守ったあと、再び食堂へと歩みをすすめます。

 クオン様が昼食に少し抵抗がある表情をしてらっしゃるのは一般的に食事は朝と夜の二食制だからでしょう。幼い子供や裕福で余裕あるものが間食という贅沢をすると人は認識しているのです。

 ですが、ですが、これから私は体術の講義です。カロリーは摂った分消費するのです。つまり、カロリーゼロ!

 マイナスにしてはならないのです。

 メニューは魔獣の肉を加工したいわゆるサンドウィッチ。

 綿を採取出来る植物型(雑食性の植物です)の魔獣が交配を行うために作り出す移動種子個体を狩り、その果肉を挽肉バーグにしてソースを絡めたものをスポンジケーキのようなパンに挟んである加工食品が定番です。ナイフとフォークでいただきます。コレ体力が上がりやすくなる気がするんですよね。

「昼からバロナケーキ……」

「甘くはありませんよ?」

「当たり前だろ」

 私ケーキと言われると甘いものを連想してしまいますのよ。

 けっこうしっかりした肉である。そして味は濃いめ。薄味スポンジにこぼれた肉汁というべきか果汁というべきかわからない汁、もといソースを吸わせて余すことなく完食する。

 運動の前にはバロナケーキ!

 なんだかんだぼやいていた気もするけれどクオン様も完食モードです。

「どの魔獣で作るのが最も美味しいかの実験作だそうですよ。目指せ秋の収穫祭料理の部らしいです」

「収穫祭……」

「はい。この国で大々的にやるお祭りで下は十歳から上は制限なしで祭り会場にいるだけで参加できるというお祭りです。今年から私も見に行けるので楽しみなんです!」

 十歳で参加しようものならぼろ負け確定ですけどね。

「王国の女神杯でしょ。王国武神杯でしょ。絵画コンクールにお料理コンテスト。小さなものなら王国大図書館を使った指定本を見つけ出す競技とかもあるんですって。見つけた本の指定場所を朗読し終わってゴールですって」

 メープルも少しは楽しみなのか小さく笑っていた。

「クオン様にも興味のありそうなお祭りがあればいいですね。あ、私、ニオべ様には是非女神杯をお勧めしようと思いますの!」

 武神杯でもいけると思いますけどね。

「思ってたよりよく喋るよな」

 クオン様が呆れた色を滲ませてしみじみとおっしゃいます。

 えー。好きなことを解説しているからっていうのもありますけど、出来るだけ情報を多く贈りたいと思って……うん、失敗した?

「舞台に立つような催し物には参加すれば上位賞金参加賞があります。クオン様も良い記念にもなるでしょうし、良い話題のタネにもなります」

 メープルがミルクティのおかわりを淹れながら珍しく後押し。

「賞金……」

「武神杯でしたら優勝で二万ゴート。一般寮における一年間のお家賃は三千ゴートです。と言えばわかりやすいですか?」

 あ、現実ではそんな金額なんだ。

 てかゴートっていうんだ。貨幣単位。

「二万ゴート」

 とりとめのない会話で軽食を終え、それぞれ次の講座へとむかう。

「フローレンス嬢」

「はい」

「土曜日の教会奉仕活動、送迎をするから。よろしく」

 は?

 なんでいつ、そんな話しになった?

 ちょっともやったままに体術で発散いたしました。


 講座の隙間時間にニオべ様とお茶しているとニオべ様がお願いしたらしいです。

 女の子一人ではあぶないでしょうと。


 そしてニオべ様はおもしろそうだから武神杯に出場を目指すそうです。


 喜んで応援いたしますーー。

 女神杯と武神杯の二杯とってー。とついはしゃぐと頬に手を当てて、「がんばちゃおうかしら」っておっしゃいました。


 萌える!


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