第12話【ようじょ】剣道体験3日目【縮地を極める】
若干遅くなりました!どうぞ。
3日目だよ!!
今日は湊士君と一緒に道場へ歩いて向かっている。
ちなみに私達が剣道を教わっているこの道場は少し遠いが家から歩いて行ける距離にあるのだ。
どうやら湊士君のお母さん、翼さんは現在妹ちゃんのお世話が忙しいらしい。
私の母に息子を頼むと涙ながらにお願いしてた。
いや、今生の別れでもないんだから落ち着いてよ翼さん。
この人も大概残念美人だなと思った。
「ねぇ、深月ちゃん」
「どうしたの?」
不意に湊士君が私に声を掛けてきた。
「どうして、深月ちゃんは剣道やろうと思ったの?」
…なんと答えたらいいのやら。
生前やってたから?
通じないだろう。
何となく興味が沸いたから?
なんかふわっとした理由だなぁ。
「なんか剣道ってカッコイイじゃん!」
考えに考え抜いた結果、年相応にふわっとした理由になった。
精神年齢的に悲しい。
というより女子が剣道カッコイイと思っても自分からその世界に突っ込んでいくだろうか普通。
心の中では冷や汗をかいていたが湊士君は納得したようで、
「そっか」
と言ってそのまま歩き出した。
聞いといてその態度はなんか釈然としないんだけど…
後ろでお母さんはなんかニコニコしながら「あらあら」とか言ってた。
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私は今、悩んでいる。
何を悩んでいるかと言うと、速さが足りないのだ。
これだけ聞くと「は?」ってなると思うので具体的に言おう。
速さが足りないのだ(変化なし)
もっと詳しく言うと、前回の稽古で私がバッシバシ1本取ってた相手が学習したらしく私の八艘飛びの射程外から打ってくるようになったのだ。
私は身長が小さいので相手の間合いに合わせてしまうと竹刀が相手に届かない。
かと言って私の間合いに入れば相手はこれ幸いと打ってくる。
カウンターを決めようと思えばやれるのだが今はまだ反射神経が追いついていないから上手く合わせる自信が無い。
ならどうするか。
そうだ、縮地だ!
縮地をしよう!
だが、やり方が分からない。くそ、こんな事なら前世でやり方研究しとけばよかった。
縮地ってなんだろう。
相手にめちゃくちゃ高速で間合い詰めてくイメージがあるんだよなぁ。
なら、前に出した足が地面に着く前に後ろの足を前に出せばそれは縮地の亜種では無いだろうか?
果たしてそんなのが出来るだろうか。
いや、やれる。今の私なら!
運動能力が前世より爆上がりして、体の軽い今なら!
ここで軽く説明。
剣道において1本を取る為には部位に当てるのは最低条件として、他3つの条件を達成しなきゃいけません。
1つ目は掛け声、やぁ!という掛け声の後に面、篭手、胴の打つ場所を竹刀で叩くと同時に大声で叫ぶ事。
2つ目は踏み込み、右足で床を思いっ切り踏みます。
3つ目は残心、打ち終えた後に相手の方を振り返る。
この3つが必要なんだよ!
それを踏まえて縮地亜種をしようか。
じゃあ、手順1。
左足を前に出しまーす。
「ヤァァァ!!」
「(あれ?小鳥遊、左足が出てる。やっぱり剣道初めてなんだ)」
手順2。
後ろの右足で前に飛び、左足を浮かせまーす。
「(近付いてきた!ここで面を打とう!)ヤァァ!!」
手順3。
浮いた左足が、床に着く前に右足を前に出しまーす。
「え?!近」
「どおおおおおお!!!!!」
スパン!と竹刀が防具を打つ音が綺麗に鳴る。
「………無理」
相手の彼のそんな呟きは私の耳から左から右に抜けていった。
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〜三人称side〜
「98……99……100」
ぶん、ぶんと空を切る音がする。
彼は静かに竹刀を振っていた。
彼女は今も練習で大暴れしている。
横に飛び、上に飛び、時には2歩を1歩で飛び。
彼は知っている。
自分に彼女と同じ事は出来ないと。
だが、彼は彼女と対等でありたいと幼いながらも考えていた。
何故自分がそうでありたいと思っているのかはモヤッとしているが、そうする事で自分の中で何か納得がいく気がした。
ならば、どうやって彼女と同じ場所に立つか。
賢い彼は1つ閃いた。
今の彼女を見ていると、その攻撃を受けきれているのは自分を指導してくれる先生しかいない。
同年代で彼女の技を受け止められる人物はここにはいない。
ならば……
彼は素振りをしながら彼女の一挙手一投足を観察し始めた。
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