表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋のうた  作者: 潮浜優
4/4

初めて失恋した相手は、彼女の友達だった

違う形で出会っていたら

違う結果になっていたかもしれない

今となっては

彼女がどう想っていたかなんて

知ることは出来ない…

初恋のうた4




初めて見た時、美人じゃないけど、かわいいと思った


その子は俺の女友達の友達


よく一緒に遊んでた子だった




挿絵(By みてみん)




「ねぇー、あたし達ってさぁー」


「うん?なに?」


「どういう関係なのかなぁー」


突然そうシズに言われたのは、もう数回関係があった後だ


「まあ、そういう関係だろ」


あまりそう言うのは得意じゃない

俺とシズは「告白」とかはなく、自然に付き合いはじめた




シズのことは小学校から知っている

小中の頃はただの同級生で、特に話した記憶もない


高校は別で、高校の頃は会ったこともなかった



でも家が近かったせいか、高校卒業してすぐにばったり会った

久しぶりに会ったシズは女らしくなっていた


「懐かしいねぇー」

「シズ、あいつ覚えてる?」


昔話に花が咲く

それから良く会うようになった


シズは大学生、俺は専門学生

学生なんてヒマなもので、最初はただの遊び友達だった





シズには仲の良い友達がいた


「ヒトミと話してたらさぁー、マミったら『それ誰?』って言うのょー、ちょー有名俳優なのにぃー、おっかしいでしょー」


ヒトミちゃんとマミちゃんと言い、よくシズの話題に出てきた



最初に会ったのはヒトミちゃんだ

ヒトミちゃんには彼氏がいて、マルイさんと言う2つ年上の人だった


「ヒトミはねぇー、美人だよぉー」


女が友達を「美人」とか言うのは大抵信じられないけど、ヒトミちゃんは本当に美人だった

マルイさんも気さくな人で、すぐに打ち解けた


そして、ヒトミちゃん達と2回くらい会った後だろうか…



「今日はマミ呼んでいぃー?」


初めてマミちゃんと会うことになった


「マミかわいいよぉー」


シズの車を運転し、彼女が住んでいるというマンションに来ると、エントランスから1人の女性が出てきた

シズが助手席の窓を開け、挨拶している

俺は運転席から挨拶した



「はじめまして、広瀬です、こんばんわ…」



マミちゃんはおとなしい子だった

シズとヒトミちゃんはおしゃべりだったから、予想と違った

セミロングの髪、丸く大きな目、いつも少し微笑んでるかのような表情


(シズの言うとおり、かわいい子だな…)


それが第一印象だった



マンガやアニメが好きで、自分でも絵を描くという


「へぇー、マミちゃんはマンガが好きなんだ」


「う、うん」


「どんなのが好きなの?」


「えっと、今ハマってるのは…」


マンガとかにうとかった俺は、マミちゃんの言うマンガの話はよく分からなかったけど、マミちゃんはマンガの話をする時は楽しそうに笑う


最初はただ、おとなしくてかわいい子だなと思っていた

ちょっとかわいい子なんて世間にはいくらでもいるし、何とも思っていなかった


でもだんだん、シズがマミちゃんを誘おうって言うのが、ちょっと楽しみになっていた




その頃、バイトを探していた

目に付いたのは駅前のカフェの募集


「そう言えば、マミちゃんはアイスコーヒーが好きだって言ってたな…」


(そこでバイトすればマミちゃんが来るかもしれない…)

そんなことを思って面接に行った



シズの友達たちと遊ぶのは楽しかった

特にマミちゃんと3人で遊んでいる時は、まるで両手に花だ


シズはナイスバディだし、マミちゃんはかわいい

男冥利につきるとはこの事だ!


2人に囲まれて、俺はいい気分になっていた





バレンタインデーが少しすぎたある日、みんなで遊んでいる時だった


「じゃあ、あたしからも」


マミちゃんからチョコをもらった


「マジで!俺にもくれるの?」


チョコをもらえば嬉しいものだ

バイト先でも義理チョコをもらった

しかし、マミちゃんからのチョコは格別だった




その頃からシズとはよくケンカするようになっていた

「何その服、センス悪ーぃ!」

「だーれとぉ、遊んでたのよぉー!」


やれその服はセンス悪いだの、どこの誰と遊んでただの、口うるさいのだ


しかし、みんなで遊んでいる時ならシズは言わない、ケンカにならない

「今日はみんなは誘わないのか?」

「今日わぁー、用事があるってさぁー」


だんだんマミちゃんに会いたい気持ちがふくらんでいた




ホワイトデーのお返しを買いに行ってる時だった

シズにはリクエストされていた物があったから、迷わずそれを買った


ついでにマミちゃんにもお返しを買おうとショッピングモールをブラブラしていると、アニメショップがあった


「確かアニメとか好きだったな…」


マミちゃんが「好きだ」と言っていたアニメで、一つだけ知っているモノがあった

当時大ヒットしていたから、さすがに名前くらい知っていた


「確か「みおせん」だっけ…」


そのキャラのストラップを買って、プレゼント用に包装してもらった



3月14日にマミちゃんをカフェに呼び出した

夜はシズと会う約束だったから、昼間に呼んだ


突然の呼び出しだったせいもあるけど、なかなか来ない…

「まったく、女ってえのはどうしてこう時間がかかるのか…」


1時間くらい経っただろうか

『いらっしゃいませー』


やっと来た!


少し髪が短くなっていた

太い肩ひもの付いたチェックのスカート

前に俺が「かわいいね」と褒めた服装だ


1ヶ月ぶりに会う彼女は、ひときわかわいかった


「こ、こんにちは…」


「やぁ、いらっしゃい!」


窓ぎわの席にちょこんと座る

注文はいつもと同じアイスコーヒー


俺はアイスコーヒーと一緒にお返しもテーブルに置いた


「これは?」


驚いて振り向く彼女


「ホワイトデーのお返し」


彼女の表情がほころんでいくのが分かる


「ありがとう…」

その笑顔はずるい!


ふとそんなふうに思った





しかし、その日を境に彼女の笑顔が見られなくなった

みんなで遊んでいても、なんだか浮かない表情


話しかけてもそっけない

服を褒めても顔をそむける


「俺、何かしたか…」

なんだか不安になっていた





4月の終わりごろ、彼女がひょっこりカフェにやってきた

「やぁマミちゃんいらっしゃい!」

「ここのアイスコーヒー、おいしいから…」


いつもと同じように、ニコニコしながらアイスコーヒーを飲んでいる


(よかった、前みたいに笑ってる)

何か嫌われるようなことをしたのかと思っていたから、ホッとした



それから毎日彼女はやってきた

いつもニコニコしながらアイスコーヒーを飲んでいる

見ているだけで、来てくれるだけで嬉しかった


やっぱりバイトをここにしたのは正解だった!




「マミやっほぉー!」

シズが来れば俺が終わるのを待って3人で遊びに行った


でもマミちゃんは俺と2人では遊びには行かなかった、誘っても断られる


アイスコーヒーがおいしいから来てるんだ

俺のことは見てない…


そう思った





「おいシマ、昨日もあの子来てたぜ」


「マジっすか!」


昨日は俺がシフトに入っていない休みの日だ


「シマ、あの子かわいいなぁ、お前の彼女の友達なんだろ?」


「え?あぁ、そうですけど…」


「彼氏とかいるのか?」


「さ、さぁ…」


いないのは知っていたけど、何となくすっとぼけた


「なぁシマ、俺にあの子を紹介してくれよ!」


「え!」


「いいじゃねえか、俺とお前の仲だろ」


「は、ははは…」

何となくコイツと、いや、誰かと付き合うのがイヤだった


「今度お店に来たらさ、な!頼むよー」


「ま、まぁ…聞いてみますよ…」


「よっしゃ!約束だぜシマ!」


困ったな、今度来たら何て言おう…



しかし、その心配は無用だった

その日以来、彼女は来なくなった

毎日、午後2時に来てたのに、会えなくなった




それだけではない、カフェだけじゃなく、ヒトミちゃん達と遊んでても来なくなった…



なぜ来ない?


俺がなにかしたか?


急に会えなくなると、余計に彼女のことを考えてしまう


「そう言えば、最近マミちゃんいないね」

「あー、なんかぁ、忙しいみたいよぉー」


体調が悪いワケではなさそうだ


(俺が嫌われたか?)

(でもなぜ?)


「なら思い切って…」




その日、俺はマミちゃんに電話した



『もしもし…』


少し元気がない声…

俺は不安を打ち消すために、カラ元気を出して話した


「やぁ、マミちゃん!マミちゃんから連絡くれるなんて嬉しいよ」


『うん、着信が…あったから、』


良かった、普通に話してくれる

嫌われたワケじゃないかもしれない


「マミちゃん、最近来ないじゃん、どうしたの?」


『うん…いそがしくて…行けなくて…』


忙しいのか、そうだよな…シズもそう言ってたし…


「またお店に来てよ、マミちゃんなら特別サービスするからさ」


『うん…ありが…とう』


君がアイスコーヒーが好きだから、この店にしたんだ


「ウチのアイスコーヒー、美味しいって言ってたじゃん」


『うん…』


アイスコーヒー目当てでもいいからさ


「またマミちゃんに会いたいよ」


『うん…』


明日会いたい、今からでも会いたい


「だからさ、明日おいでよ、俺シフト入ってるからさ」


『うん…』


やっぱり少し元気がない……


「……マミちゃん大丈夫?」


『うん…だい じょうぶ…』


とにかく明日!明日会える!


「じゃ、また明日!」


『………』




翌日、俺はバイトを楽しみにしていた

今か今かと待っていた


しかし、午後2時を過ぎても、外の看板に明かりが灯っても、彼女は来なかった


次の日も、その次の日も

シズといる時も、みんなで遊んでいる時も…


彼女が来ることはなかった




会えなくなって気づいた


(俺、彼女が好きだ…)





もう別れようと思った

シズとは別れようと考えていた

会っていても、最近はほとんど会話もない


メシ食って寝るだけだ…




「ねぇー、別れよぅー」


あの電話から1ヶ月くらいしたころ、シズから言ってきた


「そうだな…」


俺たちの関係はとっくに終わっていた





元カノの友達

俺とはただの知り合い


きっと彼女は俺なんか見てない


別れたばっかりで節操ない


でもガマンできなかった




別れて一週間後、俺は彼女に電話した


トゥルルル、トゥルルル…


女の子に電話するのに手が震えたのは初めてだ


ツッ

出た!


『…もしもし』


「ひ、ひさしぶり…」


『うん、』


「げ、元気?」


『元気、だよ』


「あのさ、俺…」


『シズと…』


「え?」


『シズと別れたんだって?』


「あ、あぁ」


『そっか…』





「マミちゃん!」


『ん?』


「俺と、」



『……』



「付き合おうぜ」



『な、んで…』



「す、好きだ、俺マミちゃんが好きだ!」



『……』


「だから…」




言葉が続かない

一瞬の沈黙が永遠に感じる…


「だから!!」




『ねぇ』


「な、なに?」


『あのね…』



ゴクッ




『あたし…』


『も…とか、言えないよ…』




え???



『だから…』


「マミちゃん!」


『バイバイ』


「マ、マミちゃん待って!」


ツーツー





それ以来…



『電源が入っていないか、電波がとどかないところにあるため....』



『おかけになった番号は、現在使われて…』



電話がつながることはなかった…





彼女が住んでいるマンションに行ってみた

部屋までは知らないから、ポストをしらみつぶしに探したが…


広瀬真実という名前は見つからなかった





「シマ、そんなに落ち込むな!」

「そうそう、女なんていくらでもいるさ」


初めて経験した失恋

専門学校の友達がなぐさめてくれる


「彼女と別れたからって、そんなに落ち込むなよ!」

「俺が誰か紹介してやるからよ!」



俺が落ち込んでいたのは、シズと別れたからじゃない



でも、本当のことは誰にも言えない


俺はマミちゃんともう一度、


もう一度…あの笑顔が見たかったんだ…



挿絵(By みてみん)



ご覧いただき、ありがとうございました

「初恋のうた」はこれにて完結です


ちなみに主人公のモデルの広瀬真実(仮名)は、その後結婚して幸せに暮らしています


誰と結婚したか?

どんな馴初めだったのか?


そのお話しはまた今度…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ