真に強すぎるチートのせいで、話が続かなくなってしまいました
ファンタジーもの…に見せかけた、風刺かもしれません。
電車の飛び込み自殺の巻き添えを食って、私は死んだ。
そして、神なる者から、ある能力を授かって、転生した。
勇者となった私は、その能力のせいで、世界のありとあらゆる悪を、一瞬で滅ぼしてしまった。
その能力は、「私の敵を、そもそもなかったことにする力」と、「世界に散らばるすべての敵を感知する力」。
チートは、強力過ぎた。
ほのぼの生活?
あれも、ほのぼのに見せかけていても、ハプニングが起こる。
ところが、全ての悪が消えてしまったこの世界では、ハプニングなどおきようがなかった。
真に強すぎるチートは、話を続かなくする。
チートと言いつつ、所詮は神ならぬ人間の扱える能力だから、何とかお話になるのだ。
それは、中途半端な強者、と言ってもいいかもしれない。
結局、最強の神が自ら戦うことが少ないのも、そういう理由なのだろう。
しかし、その中途半端な強さにあこがれること自体が、人間の弱さなのかもしれない。
結局、人間は人生を持て余し、快楽と快感を追っているから、適度な快感が得られる程度の、何とも言えない微妙な強さに憧れるのだ。
真の最強は…最弱の屈辱感こそないが、退屈だ。だから、私は語るのを終えよう。
グッド・バイ。