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ねえ、競争って知ってる?
これは、ショートショートというやつですね。ジャンルはSF。
競争には、偶然の要素が働く。
偶然は、実力が拮抗している場合に、特に強く働く。
初期位置、環境、時の運。
そういった、自分ではどうにもできない要素の違いだけで、全てが決まってしまうこともある。
三億もの小さな細胞が、たった一つの細胞をめぐって競うとき。
何百万もの文化的遺伝子、ミームが発信され、氾濫する情報の流れの中で浮上を狙うとき。
「ねえ、競争って知ってる?
余程の才能がない限り、結局は運で全てが決まる。公平に見えて、公平ではないシステムよ」
あの時、彼女はそう言った。ただ、そう言ったのだ。
そして、彼女は、競争に敗れ、僕は、競争に勝った。
理由などない、偶然。
そこには、達成感などなく、残ったのは、虚無感だけだった。
だって、そうだろ?
私は、宇宙人の道楽で断行された、全地球人類のバトル・ロワイヤルを制した、たった一人の生き残りになってしまったのだから。