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僕らのハチャメチャ海外旅行

作者: 黒床周矢

それが目に止まったとき、自分の中で時間が止まった。


 池の中からワニが飛び出して来たんだからそりゃ驚くよね。ほんと、なんでワニが? と思っていると後ろから、


「ごめんなさいデスわ」


 という声が。振り返って見てみると、そこには同じクラスのスカーレットが走ってきていた。金髪ドリルで走るときすごく邪魔になりそうだな、と思う。


「やあ、スカーレット。なんで急に謝ってきたの?」


「いえ、うちのスカンディナヴィアちゃんがご迷惑を掛けたようなので」


 まさか、このワニがペットとでもいうのだろうか。いや、それ以前にワニを学校に連れて来るなよ、危ないだろとも思うが……。


「なんでワニを連れてきたの?」


「ここの池のお魚さんがお気に入りなので。とっても仲良しなんですよ」


 ……多分それ、食べるためだ。絶対それ食べられてるよ。


「そ、そのスカンディナヴィアちゃん? が遊んだあと魚の数減ってなかった?」


「そういえば、減っていた気がしますわ」


「……」


 もうね、これ言ってて気付かないって頭の中がハッ●―セットなんですかってレベルだよ。これは注意しておかなくてはいけないな。


「あー、スカーレット?」


「はい?」


 はい、というのと同じタイミングに後ろでスカンディナヴィアちゃんの捕食を目撃してしまった。また犠牲がでてしまったぁああ。


「あの、学校にワニは連れてきちゃダメなんだよ?」


「しかし、わたしの中学時代はドラゴンを連れてきている方もいらっしゃいましたし」


 ド、ドラゴン……。常識なんてものは彼女やその周りの人間には通用しないのかもしれない。


「あ、ドラゴンと言いましてもコモドドラゴンですわよ?」


「何それ」


「インドネシアのコモド島のあたりで見られるトカゲですわ」


 トカゲかぁ。ドラゴンなんていうからビックリしちゃったよ。ドラゴンって聞いたらめちゃ凶暴! めちゃデカい! ってイメージがあるからさ。


「しかし、大きさはかなりありまして、一度わたしのスカンディナヴィアちゃんも殺されかけたことがありましたわね~」


 ん? トカゲの話だよね……? 


「あんにゃろぉ……次やったらぜってぇぶっ殺すですわ」


 今、彼女に深い闇を見た! この事に触れるとまずい気がする。


「話は変わりますが、もうすぐゴールデンウィークですし、どこか旅行に行きません?」


「え、旅行ってどこに」


「インドネシアですわ。ご友人も誘っていただいても構いません。も、もっとも……わたくしと二人で行きたいというのならそれもいいのですが……」


 これはラッキーだな! タツオのやつを誘ってやろう。海外旅行したいって言ってたからな、きっと喜ぶぞ。


「じゃあ隣のクラスのタツオも一緒でいいか?」


「え、はぁ。いいですわよ」


 なんだか悲しそうな表情してるけどタツオと面識があるのだろうか?


「それでは、後日また詳しい日程などをお知らせしますわ」


「おう、よろしく」


 今から旅行が楽しみだ。ゴールデンウィークが待ち遠しい。




 その夜、僕はタツオとメールでやりとりをした。


「今度のゴールデンウィーク空いてるか?」


「空いてるけど何かするのか?」


「スカーレットとインドネシアに行くんだよ」


 しばらくして、


「わかった。行くわ」


 とだけ送ってきた。スカーレットも悲しそうな顔してたし昔二人に何かあったのだろうか。気になるところだが自分が首を突っ込むところではないと思い、そのままメールするのを止めた。




 しかし、楽しいイベントがその先待ち構えていると時間は長く感じるものだ。その間はワクワクが止まらない。


 インドネシアに行くことは初めて。いや、海外に行くこと自体僕は初めてだからとても楽しみにしているんだ。パスポートも超高速で取ってきたし、準備もしっかりした。確認すると着替えは全部ある。歯ブラシ、タオルもある……。と、確認していると電話が掛かってきた。誰からだろうか。スマホの画面を見るとスカーレットからだと分かる。


「やぁ、どうしたの?」


「いえ、以前お知らせした持参物の中に水着の項目が抜けていましたので」


 そういえば海にも行くって言ってたから水着が必要だということに気付く。


「教えてくれてありがとう。もう少しで裸で泳ぐところだったよ」


「こちらが忘れていたのが悪いのですし……あと、もし水着がないのであれば一緒に買いに行きません?」


 断る理由もないので一緒に行くことにした。




 翌日、水着を買いに水着専門店であるシー・スネークへやってきた。スカーレットは、まじまじとシー・スネークの看板を見ている。


「どうかしたの」


「いえ、ちょっと昔のことを思い出して」


 昔何があったんだろう。また前の話みたいなことを言いだすんだろうか。


「話を聞かせてよ」


 彼女はふぅと息を吐いてから話を始めた。


「あれは、タツオさんのご自宅での出来事ですわ。中学二年生の時にタツオさんが飼っていた蛇のジェームズくんが亡くなったのです。わたしはジェームズとよく遊ばせていただいておりました。そして、ジェームズがこの世のものでなくなったとき、わたしは生きている意味が分からなくなりました」


「そっか……本当に仲良しだったんだね」


「ええ、よく首を絞められていましたわ」


 なにそれ怖い。コモドドラゴンの件といい、動物に呪われてるんじゃないのかと思ってしまう話だった。


「ほ、本当に仲良しだね。さぁ、お店に入ろう」


「ん、そうですわね」


 その後はお通夜ムードで買い物を済ませたのであった。




「海だ」

「海だ」

「海ですわ」


遂にゴールデンウィーク。飛行機に乗ってしまえば、あっという間にインドネシア。そうして今ぼくの目の前には青く澄んだ海、白い砂浜が広がっている。


 タツオははしゃぎすぎて全裸になり警察に連れていかれた。しかし、スカーレットがあんなのどうでもいいですわ、とかいうので放っておくことにした。その後は彼女と一緒に海で遊び、島巡りをした。


 そうしてすべて周り終えてまた最初の砂浜に戻ってきたが、そこで彼女がこちらにゆっくりと寄ってきた。物凄い寄ってきている! というところで突如砂がボコボコと音を立て隆起してきた。そしてそこからは、


「タツオ!」


 がでてきた。


「いや、檻に入れられたから床を掘ってここまできたぜ。もうこの国には滞在できないし、泳いで帰るわ、じゃあな!」


 といい泳いで行った。ぼくと彼女の今後の展開は想像にお任せしよう。

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