1 サイン-sign- ②
四畳半ぐらいの広さの自室に戻ると電源入れっ放しのテレビゲームの続きをやり始めた。
四畳半といっても、小学生の時でさえほとんど使っていない学習机や、本棚やクロゼット、ベッドの大きさを引いたら自由なスペースはほとんどない。他にも脱ぎ捨てられた服とか飲食の残骸とかゲーム関係のもので溢れ返っているため、かなり狭く感じられる。
部屋の入り口から二、三歩進んだところに腰を下ろし、コントローラーを手に取る。卓上に衣服の山が形成されている学習机のすぐ手前に四十インチのプラズマテレビが置かれていて、そこから本体を繋ぐコードが何本か延びている。一日中運転しているエアコンのお陰で快適な生活を送らせてもらっているが、電気代なんて気にしたことがない。
ポーズ状態を解除して戦闘を開始するが、基本的な攻撃を二、三回繰り返せば敵のHPはあっという間に減っていく。少しも反撃できず、十秒程度で相手は地面に倒れる。画面は変わって最大連続攻撃数や獲得した、レベル上げに必要な経験値を表示する。思わずため息をつき、俺はコントローラーを床に放り出した。やっぱり二周目は飽きる。暇潰しのためにも明日新しいのを買って来なければならない。
セーブもせずにハードの電源を切り、部屋の明かりも消してベッドに横になる。体内のエネルギーを使うことなどほとんどしてないのに寝られるのかと訊かれそうだが、昨日はオールしていた。疲れてなくても、眠気は十分にあるのだ。案の定、睡魔はすぐにやって来たが、部屋のドアが開く気配で現実の世界に引き戻された。
「お兄ちゃん、お風呂入る?」高い声がして、薄ら目を開けると妹が入り口に立って俺を見ていた。扉の隙間から廊下の光が漏れ、それがちょうど俺の目の位置に重なって眩しかった。
「あ、ごめん。寝てた?」
光から逃れるように、俺は反対側に寝返りを打ち、毛布を頭まで引き上げた。その状態で頭を左右に振る。
「お風呂、どうする?」
俺はまた同じ動きをする。
「……わかった。お休み」
妹はそう言うと静かに扉を閉めた。再び部屋は完全な闇になったが、一度どこかへ行った眠気はそう簡単には戻ってこない。しばらくは時間任せにして、寝たくなるのを待つしかない。俺は仰向けになって真っ暗な空中を見つめた。




