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冒険者生活のスタート?

 

 俺の固有スキル『アシスター』



 受付のお姉さん曰く、俺のステータスの異常さにばかり目が行って固有スキル欄を見落としたらしい。


「で、その俺の固有スキルってやつはどんな意味があるんですか?」

「ちょっと待ってください。今読みますね」

 そう言って再び俺からカードを渡されたお姉さんは説明書きを読み始める。



「固有スキル、アシスター。妹がピンチのとき攻撃力、守備力を含めたすべてのステータスが大幅に上昇する……………………………だそうです」







「………………………………………………………………………………しすこん?」

「ですか?」



「いやいやいやいや!! ちょっと考えが短絡的すぎませんか二人とも!!」

 そもそもそれだけでシスコン呼ばわりされるのはいかがなものか。


「お兄ちゃん、私のこと嫌い………??」

「そんなわけない! 大好きに決まってるだろ!!」



 俺が雅を嫌いになることは万に一つもあるはずがない。




「やっぱりシスコンですか」



 うっ……受付のお姉さんが俺をすごい目で見てくるんだが………

 あ、兄が妹を好きなのは、当たり前じゃないだろうか? ね? うん。これが普通だ。よ、ね?


「と、とにかく! 俺と雅はこれから冒険者ってことで! ところで、えっと………………冒険者ってどうやってお金を稼げばいいんですか?」

「はい。冒険者はモンスターを倒していただき、倒したモンスターの一部を売ったり、また、クエストをこなして報奨金を手に入れるという、主に二つの方法でお金を手に入れることができます」


 なるほどな。

 ということは明日からさっそくモンスター退治をしなければならないということか。


「ちなみにモンスターは魔王の城に近づくに連れ、レベルが高く強いですから気をつけてください」

「魔王?」



 なんだ魔王って


「冒険者の目的は魔王の討伐に決まってる、でしょ?」

「この街はそこそこ平和な方ですけど魔王の城の近くの街などは結構な頻度で魔王の幹部などが襲撃してくるようです」


 まじか…………………まあ俺らは生きていくために冒険者になるわけで魔王討伐なんぞ目指してはないけど



「でも、お兄ちゃん。こういうのって、魔王討伐したら元の世界に戻れるのがセオリー、ってよくあるよ?」


 そんなことを思っていると、まるで俺の考えていることが見通されているかのように雅が俺の耳元でささやいてきた。


 何そのセオリー。そんなのいらない。


「み、雅? それはいくらなんでも危険すぎるぞ? それに、そのセオリーとやらがここで通るとは限らないし」

「でも、可能性あるよ? それに他の方法も特に思いつかない………………」


 確かにそうだけれど…………………


「それじゃ、とりあえず目標は魔王、討伐ってことで………!!」


 俺が雅に反論できずに黙ると、雅はやる気満々な様子で今後の目標を掲げた。


 何年も家に籠っていたが、この世界では周りの目を気にしないで済むからだろうか、雅は前の世界よりも生き生きとしていてなんだか楽しそうだ。



 もちろん最初は戸惑ってはいたけど…………




 …………慣れるの早いなぁ。


 まあ、何がどうあれ雅がこんなにも楽しそうにしているのを見ていると少しこの世界に来てよかったとも思えてしまう。

 しかしながらこの世界に危険が多いのは間違いない。やはり早く元の世界に戻る方法を見つけないとな。


「お兄ちゃん?」


 そんなことを考えていると雅が少し不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。


「私、今日はもう疲れちゃった………………すこし、眠たいかも……」

「今日はいろんなことがあったからな。俺ももう疲れたし今日はどこか宿を探して休もうか。そのくらいのお金は足りるだろうし…………すみません、ここら辺にこのお金で2人泊まれる宿ってありますか?」


 食事も終え、仕事探しさえも終わらせることができた俺と雅は今日の活動を終わりにし、宿に着いて受付のお姉さんに尋ねた。





「えっと……………九百リルですか………ここら辺の宿に泊まるのには少し足りないですね」




「「えっっ?!」」


 雅とハモった。

 これは困ったぞ…………今日の宿代くらいはあると思っていたのにまさか足りないとは。


「あっ! でもあそこならなんとかなるかも………」

「ど、どこですか!?」

「一つ空き部屋があるはずの宿屋に心当たりがあります。ちょっと待っててください」

 

 そう言ってお姉さんは奥の部屋に入っていった。

 


「一部屋ありましたよ! とりあえず場所をお教えしますから行ってみてください」


 奥から出てきたお姉さんは俺たちに嬉しい情報を持ってきてくれた。

 どうやら宿主と連絡を取ってきてくれたみたいだ。

 




 地図を受け取った俺と雅は地図通りに道を進みその宿にたどり着いた。のだが、




「ねえ、お兄ちゃん。ほんとに、ここ?」

「残念ながら確かにここだ」


 地図を何度見ても確かに場所はあっている。


「おや? お二人さんが例の客かい? いや、この間部屋で亡くなっているのを確認してね。ちょうど一部屋空いてたんだよ。まあワケあり物件って奴だが、別に自殺とかじゃなく寿命だからあんまり気にすることもないと思うぞ」


 目の前の建物から出てきたこの建物の主人らしい人が俺たちを見るなり声をかけてきた。



 ……………寿命とかワケあり物件とかそういう問題じゃないよね。きっと。




「あのー、一応聞くんですけど…………………亡くなったのって冒険者さんとかじゃないですよね?」




「はははは! なにを言ってるんだ。冒険者? そんなわけないだろう。そもそもなんで人間がこんな所に泊まるんだ? 馬に決まってるだろ」




 そうだよなー。

 目の前の建物はどこからどう見たって馬小屋だもんな。

 もう外からでも馬、見えてるもん。



「それにしてもあんたら面白いな。馬小屋に泊まりたいなんて。ま、当分新しい馬は入ってこないからいつまでも好きに使って構わないぞ。お代はそうだな、一日五十リルで結構だ」



 なんで受付のお姉さん、ここ思いついたのかな!!

 好きで馬小屋に泊まりたいわけじゃないんだよ!



 しかし、お金がないのが事実。




「お兄ちゃん。五十リルは格安。野宿よりはマシ。」



 雅もそう言っていることだし今日のところは仕方なくここに泊まることにしようか。

 まあ確かに野宿よりかはマシかもしれないな。



 そうして、異世界に来て一日目の夜を馬小屋にて過ごすことになってしまった。






 …………………………それにしても、雅ほんとにこの世界に順応しすぎじゃね?


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