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仕事探し

 異世界に来た、という衝撃の事実からしばらくして落ち着きを取り戻した俺は雅の、

「と、とりあえずそのギルドって場所に行ってみよう? なにか分かるかもしれないし………」

 という提案により、おばさんが言っていたギルドとやらに向かうことにした。


「わぁ………本当にここ異世界なんだ………………」

「だなあ。初めて見るものばかりだ……」


 その道中、俺たちは改めて異世界に来たんだと実感した。 


 まず、普通にそこらに剣や弓などの武器を取り揃えている店が立ち並んでいる。

 ここが日本だったら銃刀法違反で即座に捕まることだろう。

 こんな大々的に店を構えているのを見ると、異世界だと知りながらも不思議に感じてしまう。



 そして次に街を飛び交う単語の数々。

 聞こえてくる単語はどれも聞いたことのないものばかりだ。



 例えば、俺たちの前を歩く二人の男性の会話。




「おい、ジャイアントモールのから揚げ食べに行かね?」

「お、いいな。今日の晩飯はそれに決まりだな! あ、それはそうとお前。最近アソワナ草原でオークの群れが目撃されたらしいぜ。明日あたり一緒に狩りに行かないか?」

「まじか! 行く行く! 明日は一稼ぎできそうだぜ」




「あの人たち、冒険者みたい……………」


 雅の言う通り、前の二人組は腰に短剣や剣をぶら下げている。



「なあ雅。………オークってなんだ?」



「お兄ちゃんゲームとかそういうの知らなすぎ………!」

「ご、ごめん!」



 ……雅に怒られた。


 どうやらオークとやらはそこそこ名の知れたものだったっぽいな。


「もう………オークっていうのは豚の頭を持った二足歩行のモンスターのこと」


しかしさすがは雅。少しあきれた風であったけれども俺の質問に答えてくれた。




 やっぱりモンスターっているんだな……


 モンスターに襲われて死ぬのは嫌だし、あまり関わりたく無いものだ。


「あ、ここだ」

 そんなことを考えているうちに俺たちは目的地の冒険者ギルドに到着した。




「うわ、賑わってるなあ」



 中に入るとたくさんの人たちが酒を飲んだり食事したりとワイワイやっていた。

 これはみんな冒険者なのだろうか。

 先ほどの二人組のようになんらかの武器を持っているものが多く見られる。

 


 きゅ、きゅるるるるぅぅぅ


 そんな中、隣から可愛らしい音が聞こえてきた。

 ふと見ると雅が顔を真っ赤にしてうつむいている。


「お、お兄ちゃん。お、おなか、すいたかも………」


 さっきの音は雅のお腹から鳴ったものだったようだ。

 そういえばまだご飯食べてなかったな………

 食べる前にここに連れてこられたんだった。


「そうだな。まずはここで腹ごしらえするか!」




 …………と、ご飯を注文しようとしたが、一つ重要な問題に差し当たった。





「お、お金が無い………………!」


 いや、正確にはあるっちゃある。

 ………日本円が。


どうやらここでは通貨が違うらしく、円ではなくリルというらしい。


 どうしよう。ご飯が食べれない。



「ねえ。ポケットの中に少し入ってた」


 途方に暮れていると、雅がポケットの中からいくらかの金貨を取り出した。


「え?」


 俺もポケットの中を調べてみると数枚の金貨が入っていた。

 二人で合わせて三千五百リル。

 何とか今日の夕食代と宿代は大丈夫だと思うけど…………



「これから先のことを考えるとこれじゃあ足りないよなあ………」

「お金、稼ぐしかないね……………」



**********************************************






 夕食としてジャイアントモールのから揚げを食し、俺たちは仕事探しを始めた。

 といってももう日もほとんど沈み、今日のところはどこで仕事を見つけることができるかを探すくらいになるだろう。



「あの、すみません。ここらへんで仕事を探すにはどうしたらいいんでしょうか………」


 俺はとりあえずギルド内の受付らしきところに行って聞いてみた。



「あ、はい。お仕事ですか? でしたらここで適性検査をしてもらうことで、あなたに合ったお仕事を見つけることが可能ですよ」


 するとそこで何やら仕事をしていたらしいお姉さんが手を止め、そう言った。



「え、ここでできるんですか? 今すぐ?」

「はい。できますよ。今すぐ」


 お、これは今日のうちに仕事を見つけ終わることができそうだぞ。


「じゃ、じゃあお願いします!」

「お願いします」



 俺と雅はさっそく適性検査を受けることにする…………って



「雅は働かなくていいんだぞ? 俺一人で大丈夫だ」

「だめ………お兄ちゃんが働くなら私も働く」

「いや、でも雅にはまだ…………」

「働く」

「えっと………雅?」

「働く」




 …………………………これは言うことを聞いてくれそうじゃないな。



「あー……え、えっと…………俺たちはどうすればいいんですか?」


 俺は雅の説得を諦めてその適性検査のやり方について尋ねた。


「はい。ではこちらに氏名を記入してください」


 そう言って受付のお姉さんは俺たちにそれぞれカードを渡してくる。


「記入が終わりましたらそのカードに手をかざしてください。私が魔法でカードにあなたたちのステータスを写し出しますので」


 氏名を書き終え、言われた通りにカードに手をかざすとお姉さんはぶつぶつと呪文を唱え始めた。



「おぉぉ!」

「わぁぁ!」

 それと同時に手の下のカードがピカピカと光り始める。


「はい、これで適性検査は終了しました。カードを拝見させていただきますね」

「あ、ど、どうぞ」



 これで俺に合った職業が見つかる。

 どんな職業に向いているのだろう……

 収入は安定していて、最低でも普通に生活できるほどあればいいかな。

 あと、なるべく安心安全な職業であるとなおさらいい。

 特に雅には危険な仕事をしてほしくない。




「和希さんのステータスは…………えっ?!」


 俺がカードを差し出すと受付のお姉さんはそれを見てそんな驚愕した声を上げた。



「ど、どうしたんですか? 俺のステータスに何か問題でも?」

「あ、えっとその………」


 お姉さんは何か躊躇ってから


「その……非常に申し上げにくいのですが和希さんのステータスは俊敏性が平均より高いくらいで、あとは大幅に平均値を下回ってます。これはどの職業にもあまり向いていません」



 なん……だと……………!?

 どの職業にも向いていない………?


「え…………ほ、本当にどの職業にもつけないんですか? 何か一つくらいは………」

「強いて言えば冒険者が可能ですが………ただ攻撃力や防御力も低いのであまりお勧めしません…………」


 俺の苦し紛れの質問にお姉さんは申し訳なさそうにそう答えてくれた。


「す、少し考えさせてください……」

 

 これはお姉さんの口から聞きたくない情報を聞いてしまった。

 ど、どうしよう………生きていくためには働かないとだし、でも唯一の可能な冒険者になったとしてもお姉さんの口ぶりからしてすぐに死んでしまいそうだし………………………


「こ、これは!!」


 俺が自分の未来を決める重要な問題について真剣に悩んでいると雅のステータスを見たお姉さんがまたもや驚きの声を上げた。



「攻撃力と魔力が非常に高いです! 魔力が高いので知識さえつければ魔道具を作り店を構えることが簡単にできると思います。でもここまで平均値を大幅に超えた攻撃力と魔力を備えているならば、私たちからすると、是非とも冒険者として魔王を討伐して欲しいのですが………」

「わかった。私、冒険者になる………!」

「ちょーっと待った!!」



 なんで危険な道を選ぶのかな?! 絶対、魔道具? で店構えた方がお金にもなるし安全じゃん!


「雅? 魔道具の方にしないか? ほら冒険者ってあれだろ………モンスターと戦うんだろ? もし雅に危険なことあったらどうするんだよ」

「大丈夫。魔法を使えば近接戦闘も避けられるし、そのぶん、危険も減るから。あとお兄ちゃん、冒険者しか道ないし……………できれば、私もお兄ちゃんと一緒のほうがいいと思うし……」


 

 お兄ちゃんと一緒の方がいい………だと……………………!?

 かわいい妹にそんなこと言われたら否定できるわけがない!

 まあ、こんなかわいい妹を街で一人にさせておくのも危険だしな。


「わかった! 一緒に冒険者になろう! 雅は俺が守ってやるからな!」

「ん? なに言ってるの、お兄ちゃん?」


 俺は意を決して雅を守ると宣言したところ、雅が頭にはてなマークを浮かべてそう問うてきた。




「私が、お兄ちゃんを守るのっ! お兄ちゃん、激よわ、だから………」

 


「…………………………………………………」




 そうだった。

 俺、激弱だった……

 俺が雅を守るのが兄として当然のはずなのに……おかしいなぁ………………

 俺のステータスなんでこんなに低いんだろう………


 俺はもう一度自分のカードを見る。

 やはり攻撃力、防御力、魔力などなど、俺のどのステータスも、ほかの人のを知らない俺自身から見てもかなり低いことがわかる。



「………………ん?なんだこれ?」



 自分のステータスを上から順に見ていくとカードの一番下の端に他とは違った欄を見つけた。



「ん? こ、固有スキル……………? アシスター………?」



 

 

 

 

 

 

 










 

 

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