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マンドゴドラ2

前回の投稿から少し日が空いてしまってすみません


「お疲れ様でした。それではこちらが今回の報酬1200リルになります」


 ギルドに着き受付に行くといつものお姉さんが、お疲れ様でした、と今回のクエストの報酬を渡してくれた。


「それと今回のクエストはギルド指定のものとなりますので和希さんと雅さんのお二人には400の経験値をお渡ししますね。では、これに手を置いてください」

 そう言って受付のお姉さんは棚から水晶のようなものを取り出した。


 俺が言われた通り水晶に手をかざすと、その青く透明な水晶の表面いっぱいに、まるでコンピュータ言語がものすごい勢いで書かれていくかのように文字が羅列されていき、そしてすぐにまたただの透明な水晶に戻っていった。


「はい。これで和希さんには400経験値が割り振られました。確認してみてください」

「おお! レベルが上がってる!!」

 カードをポケットから取り出し見てみると右上のレベル欄の数字が1から2になっていた。

「おぉ!! ようやくレベルが上がった〜〜!」

 初のクエストってのもあるし、それ以上に今回のクエストは結構難易度が高かった気がするのでかなり疲れたが、それを達成してレベルアップできたのはとても嬉しいものだ。


 それにしてもクエストって素晴らしいな!今までレベルが上がらなくて悩んでいたけど、この調子で頑張ればそのうち普通に野生のモンスターに勝てるようになるだろうか。


「おめでとうございます和希さん」

「おめでとうお兄ちゃん!」


 受付のお姉さんと雅が祝福の言葉をかけてくれた。


「あ、ありがとうございます。雅もありがと。それにしてもこのマンドゴドラを見つけたときはどうしようかと思ったけどなんとかなってよかったわー。ほんと」

「うんうん!」

 

 雅の魔法で凍らせたあと、その氷を打ち破って出てきたときはもう終わりだと思ったが、まさかそのまま力尽きてくれるとは思わなかった。

 氷を砕いて中から出てきたマンドゴドラはその直後大きな音を立ててその場に倒れたのだ。

 どうやら最後の力を振り絞って氷を破壊したようだった。


 雅の魔法がマンドゴドラに勝ったようだ。

 雅すごい! さすが我が自慢の愛しい妹!!


 あとマンドゴドラをどうやって持って帰るか、という問題もすぐに解決できた。

 力尽きたマンドゴドラはみるみるうちに小さくなっていき、手のひらに収まる大きさ、つまり普通の花の大きさになったのだ。

 どうやらもともと巨大な花というわけではなかったようだ。


「そういえば今回のクエストは和希さんと雅さんにとって初めてのクエストでしたね。本当にお疲れ様でした」


 俺に続いて雅にも経験値を振り分けたのち、受付のお姉さんが改めて労いの言葉をかけてくれた。

 うん。本当に疲れる1日だった。

 実際のところ俺は走って逃げていただけなんだけどね。

 雅がいなかったら100パーセントこのクエストを達成できなかったと思う。

 というか一人だったら、クエスト失敗どころかマンドゴドラに潰されて瞬殺だっただろうな。


 それにしても雅の魔法を二度も(二度目は死と引き換えにだったが)打ち破ったマンドゴドラはかなり上位の魔物だったのではないだろうか。

 達成はできたものの、正直初のクエストとしては俺たちにはレベルが高かった気がする。


 普段は薬剤師のおじいちゃんがあのマンドゴドラを採取してるとかおじいちゃん強すぎでしょ。いつもどうやって倒してるのだろう。


 そういえば採取したマンドゴドラを普通に受付のお姉さんに渡したけど、薬剤師の人にはギルドの人が渡してくれるんだろうか?



「ん? 和希さんどうかされましたか?」


 疑問に思ってお姉さんに渡したマンドゴドラを見つめていると、とそれに気づいたお姉さんが不思議そうに声をかけてきた。

「あ、えっと………そのマンドゴドラってお姉さんが依頼人に届けてくれるんですか?」

「ああ、これですか。私はあくまでこのギルドの受付人ですので私が直接渡しに行くことはありません。依頼者が受け取りに直接ギルドへ足を運びに来るか、またはギルドの配達業者が依頼者のところへ配達するサービスもあります。まあ、配達の場合はその分料金が発生しますが。どうかされましたか?」

「ああ、いやちょっと気になっただけです」


 もし、俺たちが直接渡しに行くようだったら、マンドゴドラを普段から倒しているだろう人がどんな人なのか少し見てみたかった気がするが、そういう仕組みなのなら仕方ないか。


「それにしても驚きました!やはりお二人は凄いですね!」

 やはりマンドゴドラは上級のモンスターだったのだろうか。受付のお姉さんは少し興奮した面持ちでそう言ってきた。


 実際のところ雅一人の成果なのだが、お二人と言ってくれるところにお姉さんの優しさを感じる。


「私、こんなにいい状態のマンドゴドラを見るのはとても久しぶりですよ!」

「そうなんですか?」


 いい状態って、野菜とか果物とかと一緒で新鮮ってことだろうか?

 傷がないとか?

 なんだ。マンドゴドラは劣化が早かったりするのだろうか。


「この仕事を始めてもう長いですけど、そうですね。私が覚えてる限りでは一番良いかもしれません」


 なんだなんだ。そんなこと言われたらちょっと照れるじゃないか。

 今までの冒険者たち。ちょっと目利きが悪いんじゃなくて? 冒険者素人、今回が初クエストの俺たちに負けてるぞ??






「マンドゴドラはよく切れますから、だいたいの冒険者たちは風魔法などで真っ二つに切って持ってくるんですよ。まあ薬の材料になるので切れてても別に問題はないんですけどね」




 ……………………今なんて言った?

 マンドゴドラはよく切れる?

 よく切れる??

 で、切れてても問題はない………だと……?



「あ………私、エアカッター使えるんだった……」



 隣で雅がボソッと漏らしたのを俺は聞き逃さない。


「はっ………も、もしかして、知らなかった……ですか?」

 そしてお姉さんが驚いた風に、そして申し訳なさそうに聞いてくる。



 な、なんだと……!


「じゃあ、今日の俺たちの苦労は無駄だったってことか………」


「少なくとも疲れる必要はなかった、かも」


 はぁ……そうか。そうか。

 うん。うん。

 ふぅ。



「そんなの早く教えてくれよーーーーーーーーっっっ!!!!」



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