◆Bad END◆ 嘘の代償
「……私はパンプ王国の田舎から来た、ただの――」
そう答えた瞬間、ドサッと何かが落ちる音がした。
どうして、視界が横になってるの? 目の前にあるのは、床……?
もしかして私、倒れちゃったの?
立たなきゃ。……でも、力を入れたいのに身体が動かない。首すらも動かせなくて、視界も変えることができないよ。
椅子を引く音がして、靴と床がなるコツコツという音が近づいてくる。私の傍に誰かが立つ気配がした。
「やはり、あなたも何者かに差し向けられた間諜でしたか」
「……」
間諜って……スパイってこと?
違うって言いたいのに、唇が動かない。まるで何かに固定されたみたいに、少しも意思通りにできない。
何が、起こってるの?
「どこの手の内の者かは知りませんが、今回のはいただけませんね。悪趣味が過ぎます」
今まで聞いてきた彼のセリフの中で、一番冷たい声色。私からは見えないけど、彼の瞳も氷ってしまいそうなくらいになってるのかな?
「穢らわしいので、今すぐにでも処分したいところです」
処分? 処分って、なに……?
もしかして、殺されるってことなの?
聞きたいのに、口からは声にならない息しか出ていかない。身に迫った恐怖に、背筋が寒くなる。
「まさか」とか「ありえない」って思うのに、それを強く否定できない私がいる。
「……しかし、あなたはあいつのお気に入りです。なので、下手に手を打つと、尋常でない被害がこちらへ及びます。全くもって、厄介なこと極まりありません」
あいつ? あいつって、誰……?
わからないことが多くて、混乱する。心なしか頭の中がボンヤリしてきたような。
レイモンドさんは不服そうな声で、悪態をついている。
「……なので、それを逆手に取ることにします。あなたの身柄はあいつに引き渡すことにしましょう。それならば彼も満足する上、不穏分子を二度とこちらへ近づけるようなこともないでしょう」
待って。話に出てきた『あいつ』って? 誰のことなの?
私を引き渡すって、どういうこと?
……私はこれから、どうなっちゃうの?
「それでは、ご機嫌よう」
レイモンドさんのあいさつと同時に、バチンと電源を落とされたみたいに何も見えなくなって。耳からも音が入らなくなった。
その一瞬の後、私の意識も闇に落ちていった……。
はーい、バッドエンドです。
次は正常ルートになります。
次回は24日(水)0時投稿予定です。
それでは次回も。よろしくお願いします!