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「睡魔」
違和感を感じた。
授業中とはいえ、静か過ぎる。
物事に集中出来るというのが僕の数少ない人に誇れる特技だが、これは幾ら何でも静か過ぎた。
人のざわめく音。
ノートに書き打つす音。
気配の無い、淡い色。
そっと周囲を見渡す。
皆、座位を保ったまま眠りについていた。
確かに睡眠電波を発してると噂の人気の無い古文の先生だけど……それはあまりにも酷い仕打ちでは?
特進科の者はもっと真面目だと思ってたのに。
苦笑しようとした僕は驚愕する。
黒板を前に、先生も寝ていた。
しかも寄り掛かる様に立ったまま。
これは只事ではない。
「皆、おきっ……!」
叫ぼうとした口調がもつれる。
急激な睡魔が自分を襲う。
抗い難い強引な眠りへの招き。
閉ざされていく視界。
断絶されていく意識。
最後の気力を振り絞り外へ目を向ければ、
そこにはいつもの見慣れた街並みの風景ではなく、
曇天の空に稲妻が奔る、
樹木に覆われた古代都市の様な建築物が見えた。
やっと導入部の終了です。
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