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「じゃあなー。」
「おう。また明日。」
学校が終わり、クラスメイトに挨拶をして彼は愛しい恋人が待っているはずの校門前に急いだ。
彼は今日も一緒に帰れるという事実に上手くもない鼻歌を歌いながら心を弾ませていた。
だが、今日は思うように足が動かずあまり前に進めない。そのことを疑問に思いながら彼は構わず足を進める。
あまりに恋人のもとへ急いでいるため、外から聞こえるその愛しい恋人の悲鳴は耳に入らなかった。
その現象がこれから起こることの警告だということに気付かずに…
ーーーー……
やっとのことで校門前についた。
体力全部を使いきったくらいの疲労感を背負いながら、これから恋人に会えると考えるとそんなのぶっ飛んでいった。
校門を出て、帰路につくと目の前には赤い血の海が広がっていた。
そのなかには人間“だった”ものが転がっている。
「なん...だ、こ...れは」
目の前にいるのは、心を弾ませ、鼻歌を歌うほど楽しみにしていた彼の恋人だった。
朝はあんなにも元気だった恋人が、今、目の前ではピクリとも動かないのだ。
彼は後悔や、やるせなさ、絶望感で体を蝕まれた。
「うそ…だろ」
「うそじゃないよ」
後ろから不気味な声が聞こえた。
どこかで聞いたことのあるような声だ。
振り向くとそこには彼自身と同じ姿形をした「自分」らしきやつがいた。
「今おきている出来事はうそじゃない。」
もう一度、信じられないという顔をしている彼に言い聞かせるように強く言う。
そいつは、まるで目の前で起こっていることは当たり前というふうな佇まいだった。
「お前は誰だ?」
「僕?そうだなぁ一言で言えば、君の(影)かなぁ。」
「影?」
「そう。」
いつの間にかあたりは暗闇になっていた、夜になったわけではない。推測ではどこかわからない違う世界に飛ばされたのだ。
「お前は何を知っている…?」
「彼女が死んだ理由。」
そいつは淡々と語り続ける。
「しん…だ、理由?」
「そう、彼女は(影)に喰われた。」
「どうゆうことだ?」
「そのままの意味。誰かの(影)が彼女を喰ったんだ。」
「どうして?」
「誰かが(影)に彼女を喰わせた。君か、彼女に恨みなどを持っている人物が。」
そんな恨まれるような覚えは彼にはない。
「俺の彼女の影はどこかにいるのか?」
「いないよ。彼女自身が死んじゃったからね。」
「ということはつまり…」
「そういうこと、(影)はその人物と表裏一体の関係。人が死ねば(影)は死ぬし、逆に言えば(影)が死ねば人も死ぬ。」
「お前は何故俺の前に現れた?」
「君と契約するため。」
「契約?」
「そう、契約。(影)は人に憑依できるからね、どんな形でも。つまり(影)は人には触れないってこと。」
そう言って彼に触ろうとしている影の手は彼の体を通り抜けた。
「ただ、憑依している間は違う、(影)を利用しているやつは触れられるんだ。」
「その力で(影)を利用しているやつを倒せと、そうゆうことか!?」
「そういうこと。
で、本題は君は彼女を殺したやつを殺したいだ ろ?僕が手伝ってあげる。だから、最後には君 の体をくれない?」
「いいぜ、契約してやる。あいつをあんな目にあわせたやつは俺が殺してやる」
ニヤニヤと(影)は笑いながら
「契約完了だね。」
彼は力を手に入れ彼女をあんな目にあわせたやつをどんなことになろうとも殺めると決意した。




