その8
目的地の会場の門を抜ける。やっと着いたか。
「そういや、何で会場が小学校なの? オレら高校生なんだし、普通は市かどっかの体育館じゃないの?」
「え? だって出場者――」
校門に乗り入れた赤のスポーツカーがオレ達のすぐ横に止まった。
「あんた達今着いたの?」
乗っていたのは三神先生だった。スーツを着てはいるが、上着を助手席に放り、着崩している。
「中嶋は?」
「まだ来てないっす」
「あいつやっぱ使えないわー」
「あいつ使えないんすよー」
生徒を使えない言うなよ、しかもやっぱって……。
「じゃあ先体育館入ってて」
車のウィンドウを閉め、三神先生は駐車場目指して車を進めた。
直接体育館の入り口から入り、体育館フロアを覗くと、
「おいハジメ、子供ばっかだぞ!」
「だから、みんな選手だって」
ハジメが鞄から大会の概要が書かれたプリントを取り出し、手渡してきた。取り上げてよく見ると、出場者欄にはジュニアからシニアまでと書かれていた。
「ほら見てみ、子供だけじゃないし」
「じっちゃんばっちゃんがちらほらいるのを、なにがほらだっ」
「ちらほらってなんだよ、お前こそ年寄りくさい言葉つかいやがって。はっはっはっ」
「笑ってんじゃねえ!」
もう一度会場を見渡す。
「他の高校はどこだよ?」
ハジメが会場を見渡す。
「そういやいないな」
「えと、地域の学区からして、ぼくらの他に出場してそうなのは他に一校だけじゃないかな?」
「一校だけ? しかもいないっぽいし」
拡声器独特のでかくてかすれた声がした。
「開会式を始めますので、練習をやめて下さい」
選手がみんな球を打つのをやめ、ステージ付近の台をどかし始めた。
「お前らさっさと着替えなくていいのか?」
後ろから三神先生に声をかけられた。オレ達は荷物を会場の隅に放置し、オレは中学時の卓球用ウェアに、ハジメとケイ君は高校の体育授業用の短パン半袖に着替えた。なんだこのもやもや感は……。
開会式は開会の言葉で始まり、ルール説明、施設の使用について諸注意など、簡素なものだった。整列しても子供や老人しかいない。最後に、団体戦用のメンバー表を受け取りに来るよう言い渡され、ハジメがそれに向かった。
開会式も終わり、体育館の隅に放置していた荷物の元へ戻った。他の出場者もフロアの片隅に場所をとっている。
「ケイ君、返信きた?」
中嶋から返事がきたか訊いてみるが、メールは返ってきていないらしい。
「じゃあ団体は三人で出場だな」
用紙を手にして戻ってきたハジメがそう言った。
「三人でも出れるって?」
「おう、おっちゃんがいいよって言ってくれた」
「じゃああとは組み合わせだな」
今回の団体戦は初戦にシングル、次にダブルス、しめにまたシングルという流れだ。予定では先発のシングルにハジメ、次のダブルスにケイ君と中嶋、最後にオレのはずだった。が、中嶋の欠場により……。
次から大会開始!