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その23

 部室の鍵を開け、中に入る。八月朝の部室は熱気が立ち込めており、窓を開けると鬱陶しく張り付いてくるような生暖かい空気が入り込んできた。

 体操着に着替えて、ラケットを取り出した。ラバーを貼り付ける。ラケットの準備すると、これから卓球するって感じがする。やっぱ落ち着く。

「ういっす」

 ハジメがやってきた。

「あ~つ~い~」

「練習する前からそんなんでどうするんだよ?」

「職員室行かね? 冷房ガンガン!」

「お前何しに来たんだ?」

 またドアが開いた。

「ういーす」

「あれ、タケシ先輩⁉」

「ええ⁉ どうしたんですか⁉」

 今日はオレとハジメの二人で練習する予定だった。この前の騒動のあと、二人で話でもしながら卓球する約束をしていたんだが、タケシ先輩、オレ達の話を聞いて来たのか。

「ちょっくら打たせてもらうぞ」

「いや、いいんですけど、受験勉強とか大丈夫なんですか?」

「ああ、俺もう進路決まった」

「ええ⁉ まだ八月なのにですか?」

「一般入試以外にもやり方はあるんだよ」

 ハジメが神妙な面持ちで言葉をこぼした。

「う、裏口入学……⁉」

「ちげえ! 推薦もらったんじゃ! 大したとこじゃないけどな」

「おめでとうございます!」

 話していると、廊下から何やら笑い声が聞こえてきた。足音が部室に向かってくる。ドアが開いた。

「……あ、れ……?」

 ケイ君と瀧野先輩だった。オレ達がどんな表情をしていたか分からないが、瀧野先輩はりんごくらいに顔を赤くさせていた。

「な、なななななんでででで⁉」

「た、瀧野先輩こそな――」

「きゃああああああ!」

 瀧野先輩が奇声をあげながら走り去っていった。残されたケイ君は、ただただ伸ばした手の行き場を失っていた。

「ケーイ君!」

 ハジメがにやにや笑いながら、

「ねえねえ、何で瀧野先輩と一緒だったの? 付き合ってるの? いつから? 何がきっかけ?」

「そっ、そんなのじゃないよ!」

 あからさまに赤面するケイ君。図星?

「ぼくが自主練してたら一緒に打ってくれて……それより、この人は?」

 タケシ先輩がケイ君の方を見た。

「ぬわっ!」

「ひぃっ!」

「タケシ先輩、からかわないでくださいよー」

「わりいわりい、なんかいじりたくなる顔してたから」

 初対面の人間までもそう思ってしまうのか。

「この人は霧島剛先輩。ほら、人数足りなかったところを先輩一人が入ってくれたって言ったじゃん? その人」

「ああ! その節はありがとうござい――」

「ぬわっ!」

「ひぃっ!」

「だから先輩……」

「はっはっはっ、こいつはからかい甲斐があるな」

 タケシ先輩が豪快に笑った。

「とりあえず練習しようぜー」

「ユウヤ君は、もう大丈夫なの?」

 ケイ君がおどおどしながらそう訊いてきた。

「あー、もう大丈夫……かな」

「あまり無理しないでね」

 こいつら、優しすぎるんだよ。

「あ、ちょっと電話するね、します」

 携帯片手に廊下へ出て行った。ハジメがそろそろとドアの前に立ち、聞き耳をたてた。

「おいハジメ、やめてやれよ」

「しーっ、静かに」

「ほら、お前もこっち来い」

 タケシ先輩までそんなまねして……。

「…………あ、もしもし……はい……瀧野先輩も一緒に……はい……はい……分かりました…………え? ……はい! ぜひ……じゃあ今度……また連絡します……はい、またー」

 電話を切ったらしい、ドアに向かってくる。

「離れろっ」

 タケシ先輩が小声で指示した。

「戻りましたー」

 ケイ君がドアを開けた。

「ほらケイ君、ぼさっとしてないで準備準備!」

 ケイ君が戻るや否や、ハジメが急かす。

「そうだ、さっさと着替えるんだ! さあ早くっ」

「あ、はい! 先輩すみません!」

 盗み聞きした事実をひた隠しするために練習を始めるハジメとタケシ先輩。この二人、なぜか息がぴったりだ。


「っぷはぁ、あつがなついぜえ!」

「タケシ先輩下らないっすよー」

「へっへっ、ラムネはビン入りに限るぜ」

 空一面茜色に染まる。コンビニの前で、オレとタケシ先輩二人はたむろっていた。

「また来週も練習来てくれるんですよね?」

「おう、俺も一会員だからな。お前こそ練習出るのか? 最近さぼってたんだろ?」

「……情報がはやいですね」

「ちょっと耳にした。お前、この前の大会で倒れたんだって?」

「別に体調崩してとかじゃなかったんですけどね……」

「……なにあったよ?」

 タケシ先輩は体もだが、器がオレとは比べられないほどでかい。頼っても、この人ならしっかりと支えてくれる。そういう人だったな。

「……ちょっとってとこです」

 歯を見せながら能天気に笑ってみせた。

「お前は相変わらずだなー」

「そんなことないですよ?」

「おお? 毛でも生えたか?」

「そんなもんとっくです。あと……」

 ペットボトルを口に運び、中身を飲み干した。

「次は勝ちますよ、大会」





もうそろそろ物語りも終盤なのじゃ。

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