7話 レベルアップ
家に帰ってきた。
さっそく、錬金能力の復習だ。
つまり質量だとか、この近辺にそんなものあるわけないという思い込みがイメージを妨げている。
俺が最初に作った布生地は、
「木からは精々こんなものしかできないだろう」という思い込みの生地だった。
鉄も、わざわざ川砂からとる必要はなかった。
今ここで地面から鉄の棒を作れた。
ついでに昨日と同じ金の玉も作れた。
昨日、彼女は最初に何かを出そうとして、天に手を掲げた。
次に能力の確認をしようと、地面に手を触れた。
ドラゴンとの戦いで、割と離れていても、遠くのものが操作できることもわかった。
空気から、ほぼ全てのものがつながっている。
地面も然り、距離や量は考えなくていい。
ただ、完成させたいものを想像できれば創造できるのだ!万物創生なのだ!
・・という仮説のもと、テントからバージョンアップする。
バス、トイレ、リビング、キッチン、暖炉付きの家に作り変える。
間取りを考えて、完成図をイメージする。
「スゥ・・・」
深呼吸してイメージ開始。
基礎が石の木造建築、木の壁、断熱材を挟んで、木の板の内壁。
一段上がった床、小上がり階段があり、木製の玄関。
玄関入ってまっすぐ廊下があり、右側にリビングと暖炉とキッチン。
左に手前は俺の個室と、奥はカナハの部屋。キッチンの奥にバスルーム。
暖炉の煙突。窓はガラス製。
よし!イメージの練習はできた。
便器やバスタブ、洗面台、ドア、棚、シンクや水道管なんかは後回しにする。
地面に両手を置き、魔法の呪文的なノリで開始の合図を発した。
「生成・・」
『バキバキバキッ、ゴゴゴゴ・・』
いろんな音が聞こえるが、気にせずイメージに集中する。
がんばれ俺の想像力!マイクラしか知らない俺の建築知識で家を建ててみせろ!
この世の物理学者と大工に衝撃と絶望を与えろ!
バキバキゴリゴリと轟音を立てながら、
街づくりゲームの家のように、にょきにょきと家が生成された。
「できたか!?」
外観は・・ああああ!屋根がない!!!
しまった!屋根をイメージし忘れた!
この状態はゲームで見るやつだ。上から丸見えの家・・
内装はどうだ?
玄関を開け、家に入った。なんと室内なのに外と同じ明るさだ。
窓ガラスもある!ガラスとかどっから持ってきた!?
板張りの廊下に、石で組まれた暖炉、間取りはイメージ通りだ。
あとで、シンク、バスタブ、便器を設置する。
まぁ屋根忘れたけど、大成功じゃないか?
「すごい・・・」
後ろからカナハの声がした。
さっき作ってあげた採取用のかごに木の実や果物をたくさん詰めていた。
「さっきの助言だけでここまでできちゃったの?」
「カナハのおかげです。ちょっと不完全ですけど。これで当面の生活はできそうですね」
「わーいおうちだー」
喜んでいるようでよかった。
何はともあれ、屋根を追加生成する。
家の壁に手を当てて、梁、垂木、スレート・・
『メキキキキッ・・・』
家の上に屋根が生えてきた・・
無事に家全体を屋根が覆われた。
トイレの部屋に陶器の便器と給水、排水管、
バスルームに陶器のバスタブと給水、排水管、
結局、一回床を取り除いて、排水管をきれいに引き回して床を張りなおした。
洗面台と給水、排水、前世当たり前にあった家の中の水まわり関係って複雑なんだな。
前世の建築文明に改めて感服した。
お風呂場に水道の蛇口を設置はしたが、お風呂のお湯は当面俺が錬金で出すしかない。
キッチンにステンレス・・合金はできるのか?
見た目はそれっぽいが、これがステンレスかどうかは分からない。
そもそも陶器だってなんで出来るのかわからない。
暖炉の横がグリル台で、グリルの上に煙突とつながるフードをつけて、
暖炉の煙突と合流させているので煙対策は一応やってある。
俺とカナハのそれぞれの部屋に木製ベッドと綿布団を設置した。
タオルとか、石鹸とか、ボディタオルとか、素材はよくわからないが、
とにかく完成したものを頭にはっきりイメージすれば出来ることが分かった。
「カナハは本来どういう風にこの能力使ってたんですか?」
「島を植えたり、山を生やしたり、湖掘ったり・・」
「さすが神の力、スケールでかいな・・」
そう考えるとオレの使い方は、きわめて邪道だな。
「生物の創造はできてましたか?」
さっき、ステーキ食べたいと思い、牛肉をイメージしてみたが生成できなかった。
植物由来はだいたい作れるが、動物由来の素材は未だ生成できてない。
「うーん・・・生物の創造は私の役目じゃなかったからなぁ・・」
なるほど。できないことがあるのに、むしろホッとした。
これで生物の創造ができたら全能神だ。
川から水をひく。川から家までごりっと溝を掘り、
川べりに石を積んで、支流を作った。
水も作れる(多分どっかから持ってきてる)が
俺が常に白い小僧の像のように、水を出し続けるわけにはいかないので
自然の恵みをお借りする。
ぐるっと家の横を通り、
一旦家より高い貯水タンクをトイレの隣の空きスペースに設置。
手動ポンプで引き上げる。水道の専門知識なんかないので、当面は自然落下給水だ。
余った水と、下水を本流の川に戻す上下水道を作った。
電気がほしいな・・いや、できる!
「川ができたんだから、水車にモーターつければいいのか」
水車用に支流を作り、そこに小さな水車を置いた。
モーターを作る。
ラジコンレベルの知識しかないが、これで明かりをつける程度の十分な電力はあるはずだ。
モーターは昔よく分解してメンテしていたものなので簡単に作れた。
水車とモーター、回転数を稼ぐギアをそれぞれにかませて設置し、
家まで2極ケーブルを這わせてリビングに設置した白熱球をつなげた。
LEDライトをイメージしたが、そもそも構造を知らないので、
見た目それっぽい物はできたが電気はつかなかった。
「!?あかるい!」
カナハがきゃっきゃと飛び跳ねた。
「電気つきましたね」
あまり発電量がないので当面はリビング、バスルーム、トイレのみ
随時電力が足りなくなったら増やして行くことにする。
あとはろうそくを作って、ランタンで凌ごう。
気が付くと2日目の夕暮れ。
食料はいまのところ錬金で作る必要がある。
ひとまず、塩、胡椒、砂糖を生成して料理できる体制を整えた。
塩はピンクだったり茶色だったり、砂糖も基本白くはない。
色のイメージまでしてないので天然の色なんだろう。
でもこっちのほうがおいしそうに見える。
昨日の木の実の粉末に砂糖を加えて砂糖入りクッキーを生成する。
木の実クッキー2.0とリンゴスムージー(砂糖入)
「いただきます」
今日は、違和感ない食べ物だ。でも晩御飯には寂しいメニュー。
「あま~い」
こんな食事でも、彼女はとてもうれしそうだ。
暖炉に薪をくべ、火をおこし、晩御飯に甘いものを食べている。
これはこれで、それなりに温かい。
一人で転生しなくてよかった。
それにしても今日はすごい勢いで能力を行使したが、魔力切れ的な感覚はない。
「今日オレめちゃくちゃ力使ったはずなんですけど、この力の源はどこなんですか?」
「この星だよ」
またスケールのでかい話になって来た。
「そうでもない 前ハルミチが生きた世界だって『力』、『現象』、君たちが作り出していた全ての『物』の源泉は星のものだったでしょ?」
なるほどたしかに。
しかしカナハが言ってた『すべての物は有限ではない』という話とは繋がらない。
「ごちそうさまでした」
「ふぁ・・」
カナハが眠たそうだが、一応聞いてみた。
「そうだ、今日からお風呂入れますよ」
お湯はひとまず錬金で出すけども。
「!?はいる!」
バスタブに手をついてお湯を貯めた。
「はいれますよー」
「わーい」
「入り方わかります?まず服を脱いで、体を洗って入ってくださいね」
「あのさ、ボクのキャラを徐々にアホの子設定にしようとしてない?」
頬を膨らませた。
「そ、そんなことないですよ。じゃぁごゆっくり~・・」
ラガラガとドアを閉めて、風呂場から出た。
まだ転生2日目だが、カナハは最初会った時より明るくなった気がする。
天界で会った時の彼女は、それこそ前世の世界によくいた人類
覇気のない、生きる屍のようだった。
俺が無意識にアホの子設定で接していたかもしれないが、変わっていってるのは彼女のほうだ。
この世界を楽しんでいるように見える。
そうだな。楽しく生きられればいいな。
俺も風呂に入り、床に就く。
今日からは個別の部屋でひとりで就寝できる。ちょっと寂しい気もするが・・・
昨日の彼女の温かい柔肌がほわわわーんと脳裏に浮かんだ。
今思ったことも、カナハに心読まれてるのだろうか・・受信範囲を知りたい。
『おとうさん、ほんとキモい!』
脳内の架空の娘に蔑まれながら眠りについた。




