38話 肉体改造
次は鍛冶屋だ!
「ほんとにアルマさんの行きたいところないんですか?」
「私はもうお腹いっぱい!ハルミチさんの行きたいところについていく!」
話し方の距離が縮まっている。話し方が変わるだけで一気に若く見える。
さらに縮まると「ついていくバイ!」になるのかな。
鍛冶屋では鉄鉱、銅鉱、あわよくばハガネを売りたいが・・・
「……ありがとさんっ!!」
結論から言うとハガネは売れた!!結構な値段で買ってくれた。
武器屋は…自分で武器出せるし、もういいや。
「村のみんなへお土産買って帰りましょうか!」
お菓子、干物、乾物、食器、工芸品、調味料、
カナハには……コレだな!酒!各酒造飲み比べアソート!
本当は酔うとめんどくさい人なのであげたくないけど。
「すごい買い込んじゃったね」
「これで足りますかね…」
「うふふ!村人全員に配る勢いだね」
カナハ以外は誰にあげる用とか決めずに買ってしまった。
「ではそろそろ帰りましょうか。カナハも心配だし、マグヌスも心配でしょ?」
「…うん、そうだね」
アルマは眉毛を八の字にして上目遣いで微笑んだ。
馬宿で馬と荷車を受け取り、荷物を積み込む。
「さぁ!出発だ――」
「海賊だぁあああああ!」
ドンッ!ドンッ!ドドンッ!
「きゃぁあああああ」「うあああああああ!」
ええええええ!?今から帰ろうとしてたのに!タイミングわっる!
これ、イベントとかじゃないよね。【海賊フェスティバル】とか。
ドンッ!バキバキッ!ドドン!バコン!
船が片っ端壊されている。少なくともフェスティバルじゃないな。
馬宿が比較的高台にあるので、沖の状態が見えた。
おそらく海賊であろう船が、沖にボーリングのピンのように
きれいに6隻ほど並んでいる。もうすぐ上陸しそうだな。
……この世界の海賊、そんなに統率取れてるのかよ。
ん?港の両翼から警備船みたいなのが4隻出てきた。足りねぇだろ!
ドドドドンッ!
陸の砲台がようやく反撃しだした。
港には警備隊ぽい隊列と、冒険者の集まりみたいなのが上陸を待っている。
今、砲撃で壊されているのは船だけ。
陸には撃っていない。
――つまり、狙いは“上陸”。
さてどうするか・・対人戦のシミュレーションとか全くしてないな。
俺は――剣道段持ちだ。……だからなんだ。
死ぬ直前は五十肩で鉛筆すら振り上げられない状態だった。
いや、でも――
・刀は出せる
・でも振る力がない
・アルマのベアハッグにすら耐えられない
つまり!俺の体をマグヌスのようにムキムキのバッキバキにすればいいのか!
いや、筋肉ムキムキは俺のキャラじゃない。ていうか好みじゃない。
「ハルミチさん?」
「はっ!アルマ!そうだ!君はこの馬宿の建物の中に!」
「ハルミチさんは?」
「俺は……最適解で動く」
「わかった。ハルミチさんなら大丈夫と思うけど気を付けてね!」
アルマは馬宿の事務所みたいな建物に入った。俺への信頼が心苦しい。
どさくさに俺もアルマへの話し方が近くなってるし……まいいか。
なにはともあれ肉体改造だ!1に股関節!2に股関節!
大太刀を支える上腕二頭筋、上腕三頭筋、前腕筋、
グレイハウンドのような走るスピードを支えるしなやかな大腿四頭筋、
下腿三頭筋、ハムストリングス、しなやかな各関節!そして股関節!
アルマのベアハッグに耐えることができる、骨密度1000%の骨、
強靭な胸筋と背筋と腹筋、しなやかな腱、俺の体を細マッチョに!
「フォルテ!」
うおっ!なんか来た!グモグモ来た!なんだか体がまっすぐなった。腰が安定した!
ていうか体が軽くなった!若くなった!活き活きする!うおおおおお・・・・
まいいや。ためしに武器を出してみよう。
「釘バット!」
ヴォッ!!!!!
おお!風がおこるスウィング!筋肉がしなる!
刀を人に使うのは、まだ少し抵抗がある。とりあえず――この釘バットでいい。
俺のフィジカル強化の試し相手になってもらおう。
よし!準備完了!
そして俺はどこにも行かない。
『ここでアルマを守る』これが最適解だ。




