37話 値千金
宝石商に来た。
「らーっしゃいっ!」
店主は俺たちの身なりを一瞥すると、即座に“細客”と見切った顔をした。
……まぁ、仕方ない。
店内をざっと見渡す。
指輪、ブレスレット、イヤリング、ネックレス、ブローチ――
さらには燭台やシャンデリアまで並んでいる。
在庫を一掃できれば、老後は安泰だろうな、という品揃えだ。
「すみません。旅の途中で見つけた石と鉱石を鑑定していただきたいのですが」
「いいよぉ。見せてみてー」
「ありがとうございます。こちらなんですが……」
まず手のひらサイズの金の鉱石(っぽくゴツゴツ加工したもの)を店主に見せた。
「ん?・・んんん?」
店主は最初こそ裸眼で見ていたが、
すぐにルーペを取り出し、細部を食い入るように観察し始めた。
この世界には金貨があるので、金が貴重なのはわかっている。
果たしてこれが金であるかどうか。彼が信用できるかどうか、
まずは一個だけ出して、様子を見る。
「これ……どこで手に入れたの?」
「山の奥で迷ってしまって。洞窟で一晩過ごしたときに、そこに転がってました」
「ふむ……」
さぁ…これはどっちの反応なんだ。
「やっぱり金なわけないですよね!ごめんなさい!私が“金だ金だ”ってはしゃいじゃって、無理やり連れてきたんです!」
アルマが営業スマイルでフォローに入る。
……あざとい。かわいい。
「そ、そうだよな!すみません店主、お忙しいところを――」
俺は塊を引っ込め、そのまま店を出ようとした。
「いやいや!ちょっと待って!」
来た。
(オープン・ザ・プライス……!)
「それ、売ってくれない?間違いなく金だよ。しかもほぼ“1000金”だ」
この世界では“24”が“1000”表記らしい。
この店主、信用してよさそうだ。
もう後は何がいくらになっても構わなかった。銀と、エメラルドも売った。
想定外の結構なお金になった。ちなみにダイヤはただのガラス石と判定された。
まぁ、武器とかには使えるだろうから、むしろ価値がわからないほうがいいのか。
「アルマさんアルマさん!貴金属は興味ありますか?」
「え?は、はい、もちろん」
「どういうのが好きですか?」
「そ、そうですね……こういうネックレスとか。あ!こっちのほうが可愛い!」
「店主、こっちのネックレスを下さい」
「ぉお!まいどありぃぃい!」
「ハルミチさん?」
「店主、また来ます!」
「是非!今後ともごひいきにー!」
店主は最後に初めての笑顔をくれた。
「アルマさん!どうぞ!」
俺はアルマにネックレスの入ったケースを差し出した。
「え?」
「駆け引きしてくれて助かりました」
「ほ、ほんとにいいんですか?」
「はい!アルマさんには助けられっぱなしですね………アルマさん?」
アルマの目に、じわっと涙が溜まっている。
「ア……ァルマァア”ア”ア”ッッ??!!!」
すごい力で抱きしめられた。カハッ!!マジでお、折れるぅっ!
「ありgあtおうぅう”!すgkうrえsいいい!」
「よぉおっ!よろこんでぃいっ!ただけてう”っ!れしいds」
通りすがりの人たちが、ニヤニヤしながらこっちを見ている。
「はやく!つけて!はやくはやく!」
「ちょ、ちょっと、じっとして――はい、つきました」
「どう?似合ってますか?」
「とても似合ってますよ」
「ありがとう!ハルミチさん!」
アルマは俺に値千金の笑顔をくれた。




