36話 朝チュン
『チュンチュン……』
小鳥のさえずりが潮風に溶け、荷を運ぶ足音や呼び声が波間に重なる。
港町は朝の息をひそやかに整え、今日という一日へ、静かに帆を上げる。
ヒューズナセルの朝だ!
アルマの寝言は深夜まで続き、おそらく静まり返った街に響き渡っていた。
アルマが寝静まったあと、いろんな水分でびっしょり濡れたシーツと服を、人知れず能力で洗って乾かしておいた。
結局、俺は一睡もできないまま朝を迎えた。
「!?」
アルマが目を覚ました。
「おはようございます」
「おっ、ぉはようございます…ぁの…」
「お茶飲みますか?」
「は、はい。あ!ハルミチさんの水を……」
「はい、どうぞ」
キンキンに冷えた山麓の湧き水を出してあげた。
アルマはグビグビと飲む。
一杯。
二杯。
三杯…そんなに喉乾いてたの…そりゃそうか。
「よく眠れましたか?」
「は、はい。とても……スッキリしました」
「それはよかった。では、着替えて市場にでも出かけますか!」
部屋の外でアルマの準備を待ち、受付に鍵を返す。
するとロビーでオーケンとギムリに出くわした。
「おはようございます!」
「おお!だんなぁ!昨日は激しかったなぁ!俺らの部屋まで聞こえてきたぜ!」
「いやぁ!一睡もできませんでした!ハハハ」
「アルマさんよぃ!すっかり魂抜けちゃってるじゃねぇか!」
「は、はい、昨日はホントに魂が抜けるかと思いました」
一応話を合わせたアルマ。だっこちゃんのように俺にくっついて、顔真っ赤になっている。
「ギャハハ!タフな旦那さんでよかったなぁ!いい声聞かせてもらったよ!元気な子どもたくさん産めよ!!」
「またどこかで会いましょう!」
彼らと別れた。いい出会いだった。楽しい人達だった。
「ハルミチさん……わたし、昨日酔って寝ちゃったんですよね?」
「はい。アルマさんは昨日酔って寝ちゃいましたね」
嘘はついてない。
「で、でもさっき……ギムリさんが声が聞こえたって……」
「別の部屋じゃないですか?俺も寝ちゃいましたので聞いてないです」
嘘ついた。
「でででもさっきハルミチさん一睡もできなかったって」
「話の成り行きのウソですよ。昨日のアルマさんの妄想話には勝てませんよハハハ」
また顔が真っ赤になった。
昨日ギムリやオーケンと話していたアルマの妄想が、きっと夢の中で叶ったのだ。
ただ俺が狙ってああいう夢を見せてしまったことに罪悪感はある。ごめんなさい。
「とりあえずどこかで朝食食べましょう」
「はい、何故かすっごくお腹すいてフラフラです」
早速港町の華、市場に来た。
すごい活気だ。港町だからと言って当然魚ばかりではなく、むしろ野菜、果物、お肉のほうが比率は多い気がする。
飯屋はどこも混んでいたので、席が多そうな大きい飯屋に入った。
「らっしゃい!」「2名様ごらいてーん」「っせぇええっ!」
店内は競りを終えた漁師や行商人がごった返していた。
大エビ串、青魚のスパイシーグリル、具たっぷりの貝汁、カキのハーブ焼、バゲットを注文した。
「うわぁ!おいしそうですね」
「ささ!食べましょう!」
「いただきます!」
アルマの食べっぷりがすごい!
「確かに食べっぷりがいいと、見てるほうも気持ちいいですね」
「あ!すみません!はしたなくて!」
「いえ、おいしいですし、たくさん食べましょう!」
さて、村でお金を使うことがなかったので、そろそろお金を確保したい。
今手持ちの資源は、金、銀、鉱石、宝石など・・
これらは今でもサッと取り出せるが、金として取り出したものは本当に金なのか、
ついでに純度などが分かるといいんだが。
「アルマさん、この街に宝石商とか武器、鍛冶屋はありますか?」
「はい、港町ですからね。全部あります!」
「そこに寄っていいですか?」
「はい!」
まずは宝石店に行くことにした。




