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34話 ヒューズナセル

思わぬエンカウントはあったものの、それ以降は平和な旅路だった。


彼ら冒険者二人も港町を目指しているということで、

馬車に乗せ、四人で街へ向かうことになった。


「わしはオーケン」

「俺はギムリ!よろしくな!いろいろ助かったぜ!」

「ハルミチです」

「アルマです」


「これはお礼だ!あと馬車代だ!少ないがとっといてくれ!」

「こ、こんなに?でも……本当にいいんですか?」


彼らがくれた路銀にアルマが驚いた。価値がわかる人がいてくれて助かった。


「ハッハ!これが全財産だ。あんたらが来なかったら俺ら死んでたからな。俺らの命の価値だ!安いもんだろ?」

この人達イケメン!


「ひとまずいただいておきます。では街に着いたらこのお金でみんなで生還祝いしましょう!」


「おお!分かってんじゃん!なぁ、あんた俺らのパーティに入らねぇか?」

「今は旅の途中なので。冒険に出ることがあったら、その時はぜひ」


「そうじゃのう!嫁さん連れて冒険はできんからのう!」

「は、はい、主人に今抜けられると、畑仕事が困りますので」


アルマが話に乗っかってきやがった!


「アルマさんはその年頃じゃと毎日自分の畑にも種植えてもらいたい年頃じゃろうしのう!ガッハッハ!ガッハッハ!」

「ギャハハハ!お盛んだな!」

「うふふ!おかげで毎日ヘトヘトです♪」


アルマさん・・その反応はスナックのママですよ。

でもこの人たちと話してると親近感がわく。やっぱオッサンはこうでないとね!


彼らのおかげで楽しい旅路になった。

重量が増えたものの、馬のスピードはそれほど衰えることなく、

なんだかんだで夕暮れには街についた。


これが港町『ヒューズナセル』西にあるヒューズ王国の飛び地である。


ここは低地のせいか、海風のせいか、べルデ村より暖かい。

大きくはないが、市場が立ち並び、多くの人が行き交い、

岸壁には多くの船が停泊し、潮の香り漂うにぎわい豊かな街。

馬車を馬宿に預けた。


「よし!宿をとるぞ!」

「なーにいってんだオーケン!俺たちゃ文無しだぜ?」

「はっ!そうじゃったのう!ガッハッハッ!」


「もしいい宿を御存じなら教えていただけませんか?一緒に宿取りましょう。このお金で」

「いやいや!そこまで甘えるわけにはいかん!」


「そういわずに!とりあえず宿にいきましょう!さぁ!さぁ!」

「う〜ん・・旦那にはかなわねぇなぁ。わかった!案内するぜ」


俺たちは宿屋街に向かった。


「ここなんかどうだい?」

「うわぁ素敵」


「おい!ギムリ!ここは高いぞ!ワシらはこんないいところじゃなくていいだろ!」

「そうだよ!俺たちはいつもの安い宿だ。旦那たちはここに泊まればいい。」


いい宿だ。アルマの安全性も考えていい宿にしたい。


「ここにします!お二人もここにしましょう!さっ入りますよ!」

「旦那・・見かけによらず強引だなぁ」


宿屋に入ると小綺麗なロビーにきれいな女性が受付にいた。


「いらっしゃいませ」

「おう!部屋は空いてるかい?」


「はい!1人部屋は200オルム、あとは2人部屋は300オルムとなっております」

「そうか、そいじゃ2人部屋を2部屋だ」

「かしこまりました」


「え?」

「はい!」

「旦那!どぅした!どっちみち2人部屋のほうがお得だし、そもそも俺らはどんな部屋だってかまわねぇ」

「そ、そうですね。ではそれで」


ここで夫婦別々1人部屋1室ずつとか言えない空気やんかて!


アルマはもう手をつないでいる。

正確に言うといつの間にか恋人つなぎになっている。


前金でお金を払い、部屋に荷物を置いてロビーに集合した。


「よし旦那ぁ!飲み行くぞい!」

「ヒャッハァ!」

「うぇーい」

「はは・・」


アルマがカナハみたいになってきた。俺といるとみんなこうなるのか?


俺たちは酒場に向かった。

「カンパーイ!」

「いやー旦那の技やばかったな!ありゃなんだい?魔法のような魔法じゃないような」

「一応魔法です。新しい魔法の研究中なのであまり見ないかもしれませんね」


「そうだみなさん!おつまみの前にお弁当を食べてくれませんか?途中で食べるつもりだったんですけど・・」

「おお!愛妻弁当か!旦那!いただいていいかい?」


「どうぞ!」

「んまい!旦那は幸せもんだなぁこりゃすげぇ!」


「はい!ハルミチさん」

アルマが卵焼きを俺の皿に取り分けた。


「ありがとう」


「なんだよ旦那ぁ!夫婦なのによそよそしいじゃねぇか!俺たちの前だからって何も気にしなくいいんだぜ?」

「うふふ、私たち、人前ではいつもこんな感じなんです」


アルマの切り返しがナチュラルすぎて怖い。

そうか……よく考えたらアルマ、俺よりずっと年上なんだよな。


俺はアルマのお弁当をつまみながら酒を飲む。


「でも夜はすっごく激しいんですよ!!」

ブフォッ!!


口に入れた卵焼きが向こうの席まで吹っ飛んだ。


「くぅぅうう!そんな話聞かされたらすぐにここ切り上げて女の店に行きたくなっちまうじゃねぇか!」

「ガッハッハ!ガッハッハ!ギムリ!金はないぞ!」

「そうだったなぁ!ギャハハハ!」


彼らからこの世界の冒険譚でも聞こうと思っていたのだが、終始この3人は下世話な話がとまらない。


アルマは、俺との夫婦生活を妄想だけで語り切った。

しかもアルマの妄想の中のオレは、かなりのタフネスでギンギンの設定だった。


「ぶはぁああ”あ”!え”ぁあああ”あ”っ!飲んだ飲んだ!」


俺たちは酒場を出た。


「そうだ。これをお返しします。」


二人にもらった路銀を返した。


「だ、旦那?」

「今日は二人にお会いできてすごく楽しかったので、それだけで俺たちは満足ですよ」


「そ、それはだめだ!俺らの良心が許さねぇ!」

「でもこの後、女の店に行きたいでしょ?さぁっ!どうする!さぁっ!」


「くぅぅうう!だんな!ずるいぜ!恩に着る!この仮は必ず返すよ!」

「楽しんで来てください!」


彼らと別れて、俺とアルマは宿屋に戻った。


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