30話 主婦の一片
「日も暮れてきましたし、お夕飯にしましょう!」
「はい!お手伝いします。勉強させてください」
二人で、夕飯を作る。とはいえ俺の出る幕はほぼなかった。
一応切る、焼くくらいは手伝わせてもらったが、もうステージが違う。勉強にならない。
川魚の香草焼き。
鶏肉のトマト煮込み。
薄く切って焼いたバゲットの上に、チーズとトマト。
酸味のきいた手作りドレッシングのサラダ。
玉ねぎとお芋とキャベツのコンソメスープ。
早い!
これだけのメニュー二人分をあっという間に作ってしまった。
「お酒もありますね。これがいいかな?」
とにかく貰い物で当分生きていける物量が新しく作った納屋に置いてあり、
カナハの豪快な飲みっぷりのおかげでお酒ももらった。
「すごい量になっちゃいました」
「しかも早すぎる!やっぱり主婦の力はすごいなぁ」
「フフフッ、飲みながらゆっくりいただきましょう」
「はい!乾杯!」
「乾杯!」
――うんま!
「うんま!俺が同じもの作っても、絶対アルマさんのほうがうまい自信ある!」
「愛情が一番大事なんですよ♪喜んでいただけてよかったです」
アルマはそう言って、少しだけ照れたように笑った。
それからは食事しながら、アルマの事、マグヌスの事、村の事、いろんな話をした。
彼女はソレスの街からこの村に嫁いできたらしい。都会の子が田舎に嫁ぐって大変だっただろうな。
「そうだ!明日、近くの街に出かけませんか?、といってもここから30キロほどありますけど」
「いいですね。行ってみたいです!」
「小さな港街です。私も久しぶりに行くので楽しみです!」
食事を終え、アルマはちゃっちゃと洗い物まで済ませてしまった。
「何から何までやらせてしまってすいません。トマトチームなのに」
「フフフッ!じゃぁ玉ねぎチームさんに何をお願いしようかな♪」
「あ!お風呂入れてきます!」
『アルマのお願い』という言葉にちょっと受け入れ難そうな不安を感じたので、風呂に急いだ。いつの間にか『勝ったチームが負けたチームに何でもお願いできる』ルールに変えようとしているアルマがしたたかだ。
風呂をきれいにして、アルマ用のボディタオル、歯ブラシ、
新しいバスタオル、天然由来をイメージしたいい香りのボディソープを用意した。
この前は石鹸だったが、ちょっとグレードアップ成功。
あれ?プッシュボトル?がよくわからない。思わぬところでつまづいた。
完成イメージだけじゃプッシュしても液体が出ない。戻らない。
今はあきらめよう。ただのプラスチックのボトルにボディソープを詰め込んだ。
「お待たせしました。お風呂どうぞ!」
「ありがとうございます。お茶淹れてますのでどうぞ」
アルマは着替えを持って、バスルームに入っていった。
テーブルにはお茶とお茶菓子が置いてあった。
しばらくして、
「ハルミチさんハルミチさん!」
風呂からアルマが呼んでいる。
バスルームに行くと、風呂場の扉が開いていた。
やはり予想通りの肉付きのいい素っ裸のアルマが、いわゆる大事なところを隠しながら、
ボディソープの入れ物を持っていた。
「これ、どうやって使うんですか?」
「アァァアスッ!こここうやってキャップを回して開けてこのボディタオルに乗せてこうやってごしごしすると泡が立つんですほらこれで体を洗いますの」
扉に隠れながら、妙な体制でアルマが視界に入らないように説明した。
「すごい!いい香り!しかもアワアワですね♪ありがとうございます!」
「い、いえいえ!ではごゆっくり!」
ラガラガと扉を閉めて、急いでリビングに戻った。
・・・ドキドキしたぁ。
お茶を飲んで落ち着こう。ちなみに3杯目だ。
あああヤバイ!俺の脳みそがアルマの裸で占有されている。
カナハの裸を見てもこんなことないのに。
『はぁああ、おとこってほんとしょーもな』
ありがとう架空の娘よ。今出てきてくれて助かった。
少し落ち着いた。深呼吸だ。
うち泊ってく?的な軽いノリで受け入れた俺が悪い。
「上がりました!お待たせしましたハルミチさんどうぞ」
「はい。あ、そうだ!ベッドは師匠の部屋を使ってください。こちらです」
「よろしいのですか?」
「はい、何もないですが」
「かわいいお部屋ですね」
アルマは少し楽しそうに部屋を見回した。
「ではお言葉に甘えて使わせていただきます」
「体が冷めないうちにお休みください」
「はい。おやすみなさい。。また明日」
俺は風呂に入り、リビングの電気と暖炉を消し、床に就いた。




