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27話 レネイ・ソシエ

バンッ!


「カナハ! ハルミチ! おきゃくさんばい!」


翌朝。マグヌスが勢いよく部屋に飛び込んできた。


「お、おう。マグヌス、おはよう……」


お客さん?

ちなみに今日も村長の家に世話になっている。


昨日、カナハと俺はひっきりなしにヒーローインタビューを受けていた。

カナハが御神木復活のために魔力をすべて使い果たしたとか、

研究中の危険な魔法を駆使して、かろうじて魔物を倒したとか。


そんな嘘を並べるのに、なかなか苦労した。


相手はほとんど酔っ払いだったので、

ざっくりした話でも盛り上がって乾杯すれば、なんとかしのげたが。


「カナハ! あさばーい!」


マグヌスが大声でカナハを起こす。

だが昨日もカナハは豪快に飲んだくれて、

豪快な液体魔法を口から放っていた。


「ううう……頭イタイー……」


「俺が会うよ。師匠はいつもこんな感じだから」


「わかった! じゃ、オレ農作業行ってくる!」


「がんばれー」


NPC服に着替え、客間に入る。

そこには眼鏡をかけた女性が座っていた。


「フタマタハレンチさん?」


「フタマタセです」


いきなり失礼なやつだ。

アルマの言い間違えとは違って、なんか腹が立つ。


「わたしは魔道神学院、魔科学研究室副室長。

レネイ・ソシエ。魔法の研究をしながら世界を旅しています」


やばい。本物の魔導士だ。しかもガチの学者。


俺たちの“嘘設定”の、本物が来た。

なんだか自分たちが詐欺師みたいな気分になってくる。


「フタマタセ・ハルミチです。まほ……私も旅をしている者です」

「先日の大樹復活から魔物退治まで、拝見していました」


「あ、はい」

「お二人はどういうご関係です?」


うわー、どうすっかな……。

ひとまず“魔法”というキーワードは封印だ。


「師弟です」

「あなたが師匠です?」


「いえ、私が弟子です」

「今、彼女は?」


「寝てます」

「大樹をどうやって復活させたか、詳しく聞かせてもらえます?」


「師匠の力です」

「その師匠を起こしてもらえます?」


「あのさ……尋問みたいになってるけど」

「ジンモン?」


神経を逆なでする話し方。たまにいるよなこういうの。

俺は立ち上がり、この女を睨みつけた。


……そうだ。ちょっと演出してみたくなった。

能力を使って、この部屋だけ震度2くらい揺らせるか?


ガタガタガタガタッ……


おお。置物が少しガタガタ揺れる。

周囲を揺らすイメージも可能。新発見!


なんだか「ゴゴゴ……」というオノマトペが似合いそうな空気になる。


「なんで初対面の君に、そこまで全部答えなきゃいけないんだい?人に物を聞くとき君はいつもそんな風に無機質に聞くのかい?もう少し、相手の気持ちを考えて話しなよ。話は終わりだ。帰れ」


「は、はい! ご、ごめんなさいぃっ!」


あれ。

ガチで涙目になってる。


彼女はそのまま飛び出していった。もっと食らいついて来いよ。


もちろん半分は演技だ。

つまり半分は、本当にイライラしていた。


俺の答えが言葉足らずで、質問を重ねられたのもあるが……。


あの女は最初から、俺を色眼鏡で見ている感じがした。

ああいうタイプとは、どうせいい話にならない。


だから、もう終わらせたかった。


「ハルミチさん? 大丈夫ですか?

なんだか家が揺れたので……」


アルマが心配そうに部屋へ入ってきた。


しまった。

この部屋だけ揺らしても、家全体に影響あるわな。


「アルマさん、すみません!

さっきの女性が無遠慮だったので、追い返しました」


「ハルミチさんも怒ることあるんですね」


「い、いえ。怒ったわけじゃないんですよ。

お騒がせしてすみません」


「いえいえ。あ! 朝ごはんできてますよ。どうぞこちらへ」


「ありがとうございます! いただきます」


うまぁ。

ホンモノの朝ごはんだ。


小さな器にいくつかの小料理。

バター、バゲット、そして以前マグヌスが作ってくれたミネストローネ。


やばい。

全部うまい。


ここ何日か、この村で本物の手作り料理をいただいている。


「うんまっ! すごくおいしいです!」


「そう言っていただけると嬉しいです♪」


やっぱり本物の料理はうまいなぁ。


アルマは向かいに座り、お茶を飲んでいる。


「アルマさんは食べないんですか?」


「私たちはさっき食べました。うふふ。

農家の朝は早いんですよ?」


「そうでしたね」


もう日は高い。

時間で言うと……十時くらいか。


「バル“ミ”チ~……頭痛いよ~……」


カナハがふらふらと起きてきた。

そういえば、起きてすぐ部屋を出たから、今日はまだ“治療”していない。


「カナハさん、おはようございます。ご飯食べられますか?」

「ううん……いらない……」


俺はカナハの頭に、熱を測るように手を置く。

そのまま痛みを消してやった。


「ふぅう……ハルミチの水飲みたい」

「はいはい。アルマさん、コップをお借りできますか?」


「はい。あ、あの……私もいただいていいですか?」

「え? いいですけど……ほんとに普通の水ですよ?」


「私もハルミチさんの水が飲みたいです」


なんなんだ。おっさんの出した水が、そんなにいいのか。


「アクア」


俺の手から、コップへジョボジョボと水が注がれる。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


二人はごくごくと飲み始めた。


「わっ! 冷たい! おいしい!」

「っああああっ! うまいっ! もう一杯!」


ただの水を出すのも味気ないので、一応イメージはしている。


『山渓の地底を通り、ミネラルをたっぷり含んだ冷たい水』。


ただでさえ、

【おっさんの手から水】ってビジュアルよくないからね。


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