23話 とある魔導士の黙視録
一部始終を見た。いや、正確には遠目でよく分からなかった・・
魔道神学院 魔科学研究室 副室長
レネイ・ソシエ。
魔法の研究を続けながら、各地を巡っている。
港町ヒューズナセルから北へ約三十キロ。
商人たちの噂を頼りに、私はこのベルデ村へやって来た。
――悪魔の解呪を成功させた魔導士がいる。
誇張だとは思う。だが放っておけない。
昨日この村に着き、一晩世話になりながら話を聞いた。
村長の息子は呪いで死亡。
同じ呪いが孫にも発現。
その魔導士は、呪われた子に手を当てただけで解呪し、
さらに呪いから現れた悪魔を“掴んで”焼き消したという。
掴んで、焼いた?
魔法なのか?
村長の話は訛りが強すぎてほぼ理解不能だったが、 明日その魔導士が病んだ大樹を診に来る――
それだけは聞き取れた。
もう一晩泊めてもらい、その魔導士が来るのを待った。
次の日、大樹に村人が集まっている。おそらく今から何か始めるのだろう。
そこに緑の魔導士服っぽい少女と、付き人のおっさん?がやってきて、
みんなが迎えている。おそらくあの二人だ。
いまどき、とんがり帽子の魔道服とか時代錯誤もいいとこだが
なんだろう、雰囲気?たたずまい?ただ物でないオーラを纏っている。多分。
付き人のおっさんは、おとうさん?。ないわ。まったく捗らない。
おそらく料理、炊事、洗濯など、主に彼女の身の回りを世話している付き人だ。
いや待てよ!おっさんに厳しい修行を課せられている、いたいけな少女か・・
ワンチャン捗りそう・・あとで原案をまとめてみよう。
早速大樹を診察しているようだ。もう少し近くで見てみよう。
少女が木に手を当てて、そこに付き人が手を重ねた。
なぜ魔法に付き人がしゃしゃっている?なんなのあのおっさん。
おっさんが祝詞のようなものをあげている。
どこまでもしゃしゃって来るおっさん、なんかだんだん腹が立ってきた。
すると、二人が光りだした!と同時に木が大きくなり始めた!
葉が繁って、一気に紅葉に変わり、実がなった。
ナニコレ。夢でもみてるの?・・・大樹が倍以上の大きさになった。
高さは6、70メートルほどあろうか・・
村人がざわついている。木から何かが放り出された。
アレは!魔神?いや、魔神はあんなに小さくはない。
いずれにしても、アレは人の手に負えるものじゃない!
魔神は、国の最強騎士団と魔導士が百人単位で挑むレベルの戦いになる。
その直近の戦いももう700年前の話。しかもかろうじて封印どまりだ。
魔神までいかなくとも、アレはその縮小版のような姿かたちをしている。
ん!魔導士が倒れた?魔力が尽きたか・・これはもう勝てない。
私のゴーレムもおそらくあんなものに対抗できる力はない。
これはまずい!ここから離れなくては・・・
だいぶ遠くまで距離を取ったが、おっさんが魔物に対峙してるように見える。
なにしてるの?戦う気なの?馬鹿なの?
『ガァアアアアアアッッッ!!!!』
ドンッ!バキーン!ゴッ!ボウッ!!!バチバチッ!ドドンッ!!!
大きな咆哮と大きく鈍い音がほぼ同時に聞こえた。
何が起きてるかここからじゃよくわからない・・え!?
なに!?あの巨大な棘?棘が魔物に突き刺さっている。
付き人が剣を構えた?魔物が燃えている!?なんだあの火花と白い炎は・・
魔物が燃え尽きた!
村人が沸き立っている。あの男が魔物を倒した?しかも圧倒的な瞬殺だった。
実は彼はあの魔導士の守護者?
なんだあの技は!魔導士ではない、魔法じゃなかった。
あのおっさんに直接色々聞かなければ・・と思ったらどこにもない。
が、幸いあの男の名前はこの村で有名だった。
「フタマタ・ハレンチ」
何て名前だ!
明日、今日のこの『大樹復活』を祝って祭りをするらしい。
仕方ない、もう一泊してあの二人と接触する機会をうかがおう。




