21話 御神木
次の日、ベルデ村を訪れた。
村長の話によれば、この村には大きな御神木があり、
大きな栗のような実を実らせる【つるばみの木】
広大に広がる畑の真ん中に、ポツンと大樹がそびえ立っている。
毎年、その木の実を粉末にして畑にまくと、豊作になるというジンクスがある。
この村特産のお守りにもなっているが、
今年は春から葉が繁ることなく、この時期実るはずの実が実らない。
村長曰く、
「御神木は世界に10本あって、こいがそんうちの一本ですばってんがくさ」
直径5メートルほど、高さ20メートルほど?の大きな木。
樹齢は1万年以上といわれているらしい。
木の根元には祭壇があり、この村以外の周辺の人も祈りに来るらしい。
今年は木がこんな状態なので、早く良くなりますようにと
みんな絶えずお祈りに来て、祭壇にはたくさんのお供え物があった。
「木のお医者さんや、首都の学者さんに診ていただいたのですが
原因は分からないと言われまして・・」
アルマの旦那さんの呪いもそうだったけど、この世界の医者って全然役に立たないな。
「ハルミチ。世界が違うんだし」
カナハに心を読まれた。
「そっか。そうですね失礼しました」
まぁそれだけ未知の病だとも考えられる。
「?」
俺たちの会話に村人が?になっている。世界が違うとかあまりいわないで。
早速カナハが幹に触れ、木を見上げた・・・
しばらくして、
「ハルミチ、君の手を私の手に重ねて」
「はい」
「イメージして・・」
「はい」
マグヌス式だな・・そうだな、御神木の構成を正し、病を霧散させ、
緑葉の葉を茂らせ・・ちょっと待って!いろいろ浮かんだ!声に出したい。
「天と地を結び、世を潤してきたる御神よ。いま病に伏したその御身に、
再び清き命の息吹を授け給え、根は大地を抱き、枝は天を仰ぎ、葉は光を受け、
実を結び、この世界に実りと繁栄、そして尽きせぬ恵みをもたらし給え」
と、つぶやくように唱えた・・・・何も起こらない。
だめか!かっこつけすぎた?割と真面目に願ったんだが・・
いかん!イメージを切らすな。
根は地の底までゴリゴリ届き、病一つなく、天に届かんばかりのモリモリでバッキバキの幹、みずみずしく、フサフサの葉っぱ、あふれんばかりにブリンブリンの実がなる木・・
すると、俺とカナハがなんか白く光りだした。。。
「おおおおおお!」
村人がざわつきだした。
『メキメキメキメキメキメキメキメキメキメキッッ!!!!』
大きな音を立てて、木の幹が膨らみ始めた。同時に高さもぐんぐん伸びていく。
村人たちは慌てて木から離れだした。
俺らもやばいと思うんだが、カナハは目を閉じたまま動かないし、
なんか立場上離れられない空気を感じる。
しかし御神木は俺たちを根の上にのせて大きくなる幹とともに動いている。
わしゃわしゃと緑葉が茂り始めたと思いきや、タイムラプスのように
葉はすぐに黄色に染まり、そして茶色くなっていく、
そして大きな栗っぽい実がなった。
木はさっきの倍以上の幅の幹になり、
高さは見上げても分からないくらい高くなった。
「うぉおおおお!!」
村人が唖然としながらも歓声を上げた。
俺たちを包む光が消えた。
と同時にカナハの手がずれ落ちていく。カナハが倒れた。
「カナハ!?」
まじか!何に何された?!息は・・・ある。
木の幹が紫に光りだし、巨大な物体が木から吐き出されるように飛び出てきた。
『ガァアアアアアアアアアアアアッ』ドンッ!!!
「な、なんだあれは!」
大きな獅子舞?四つ足で、顔が獅子舞のような生物がいた。
ハイエ〇スくらいの大きさで、紫色に光っている。
獅子舞のごとく、なんかメッチャ怒っているように見える。
「カナハさん!大丈夫ですか?」
「わかりません。息はしてますけど」
「俺が担ぐ!家に連れて行く!」
「マグヌス!たすかる!」
マグヌスとアルマが駆け寄ってきて、マグヌスがカナハを連れ出してくれた。
『ワレノ復活ヲ妨ゲルハ、ウヌラカ!』
獅子舞がしゃべった!なるほど!もう理解した。
御神木の養分吸って復活しようとしていた悪魔みたいなもんだな。
やっぱり怒っていた。わかりやすい!
「皆さん!遠くに避難してください!」
「は、はいい〜!!!みゃあ、ここにおったらいかんばい! さっさと離れろ!!」
村人を非難させ、御神木のふもとには俺と獅子舞だけになった。
「オヌシハ・・・ナンジャ」
「フタマタセと申します。この木を復活させたものです。あなたは何ですか?」
『ガァアアアア!!』
ガァアアさんは、突然飛びかかってきた。
いろいろ想定はしていた。この村を狙っている勢力みたいなものがいて、
村長の息子を呪い殺したり、その息子を呪い殺そうとしたり、御神木を枯らしたり、
何かが暗躍してこの村を衰退させようとしている。
いや、衰退させたいのはこの世界か?
こいつは、その勢力に誑かされた魔物のようなもので、
俺に”完全復活”を妨げられて、慌てて出てきた。
「つまりおまえは不完全だ!」
「ムラマサ!」
両手に刀を出し、腰を落とし、刀を構え、
「ケンザン!」
俺に飛びかかろうとしている、最後の踏み込みの瞬間に、
生け花の剣山の超巨大ロングバージョンを、魔物の真下に出した!
ジィャキィッ!魔物に剣山が突き刺さり、血しぶきがあふれ出た。
『ガァアアアアアアアッッッ!!!』
動きが止まった。フハハハ!刀で真っ向勝負すると思っただろ!残念!
「ムサシ!」
2本の刀の刀身を伸ばして魔物の両目に突き刺し、
「インフェルノ!」
刀身から炎を出した。
魔物に刺したままの刀から、ボッと炎が出て、たちまち魔物が炎に包まれた。
魔物が、のたうち回りだした。
『グゥオオァアアッッッ・・・』
苦しませてすまん。楽にしてやる。
「マグナ!」
バチチチッバチバチッ!!ドンッ!ドドドンッ!
刺さった刀をマグネシウムに変化させて、手放した。
魔物はインフェルノから引火したマグネシウムで
白い火花を散らしながら爆散した。
「灰となり、塵となれ」
残っている残骸も消し去った。こういう類は残骸から復活しちゃう。
結局、魔物は一度も強そうなところを見せることができずに、滅された。
こういう時のために日夜イメトレしてたのだフハハハ。
「うおおおおおおお!!」
村人が再び沸き立った。
「ちゃんと名乗れば、名前くらい覚えてあげたのに・・・」
そんなことよりカナハだ!




