2話 降りし世界は
降り立った世界は、
木々から生まれし豊かな葉をすり抜けた光が優しく差し込む森の中・・・
は?森の中?
たらちねの母なる腹から生まれる赤子じゃないのか?
しかも自分を見下ろすと素っ裸だ。
見慣れた体で、下半身にも見慣れたパーツがついている。
「あれ?どうして?」
後ろから声がした。
素っ裸の冴えない緑髪の少女が立っていた。年の頃16歳位?
「冴えない女とかひどくない?」
心読みやがった。つまり・・
「あなた、さっきの神様ですか?」
「そうだよ」
神様はすっぱだかで仁王立ちして見せた。
冴えないとはいうものの、眼鏡をかけて、もうちょっと成長すれば
割と好みの女性になるかもしれない。質素な子が好みです。知らんわ。
と素っ裸のおっさんが、素っ裸の少女を見ながら、心の中でノリツッコミしていた。
「・・・おっさんきもい」
心読まれた。めげずに質問してみた。
「俺はどんな姿ですか?」
「君は生前のままだね。」
「!?」
それはだめだ!それはあかん!!
この子を冴えない女とかディスってる場合じゃない。
「そもそもここどういう世界なんですか?」
「君が生前好きだった”剣と魔法の世界”だよ。たぶん」
まじか、読んだり見たりする分には楽しめるけど、
このくたびれた体で、こんな世界で生きていける自信ないよ。
「成人の体だし、生前の記憶あるし、神様まで下界に降りてきてるし、これ失敗では?」
「んん~・・・失敗だね!」
言い切りやがったこのポンコツ。
「アハハ。ポンコツいうなし」
「はぁ・・」
なにはともあれ、この状況が孤独でないことに少し安心した。
「転生なんかみんなやってたし簡単そうだったから、見よう見まねでやってみたんだけど・・・」
どうやら【はじめての転生】だったらしい。しかも生兵法の。
「やりなおせないんですか?」
「むり」
まぁそうだろうな。やれやれ。
「ところで二人とも素っ裸ですよ。まずいですよ。」
「そうだね。まぁこれでも食べて。ちょっと落ち着こう」
神様がそこの木になっていた痩せた青りんごを2つもぎ取り、
ひとつ俺にくれた。
はっ!
リンゴをかじった時に気づいた。
「これ傍から見たら”アダムとイヴ”じゃないですかね?」
「アハハハ、そうだね。すっぱだか恥ずかしいー」
まったく恥ずかしそうには見えないが、
神様は発展途上の胸を隠しながら、俺の衰退しつつある下半身を見た。
ていうかこの人さっき天界?にいた時よりもテンションが高い気がする。
リンゴを食べてよかったのだろうか・・いまのところ特に体も感覚も変化はないが
「神様の力で服とかポンと出せないんですか?」
神様はニヤッとして天に手を掲げた。何か出すのか?
「・・・・・あれ?おかしいな」
何も起こらない。
使えねーなぁと思った。
「今使えねぇなぁと思ったでしょ。」
読心能力はある。
「やたらに心読まないでください」
「読んでない。それくらい顔でわかる。」
何か布代わりになるものはないものか・・
目の前の木に手を当て、思った。
木から布ってできたっけ・・麻っぽい感じでできそうだけど・・
すると、さわっていた木が渦巻のように収縮し、
バサッと麻布のような布になって足元に落ちた。
「なんじゃこれ!?」
「!?その力・・・」
俺が驚いたと同時に神様がつぶやいた。
転生時のギフトか?
「これ神様がくれた能力なんですか?」
「そんな力は与えてない」
神様が、今度は地面に手を当てた・・・何も起きない。
「・・・・やっぱり力を使えなくなってる・・」
「つまり、神様の能力が俺に移ってしまったと」
「そうみたいだね」
え!?
「!!!!」
俺はガクッっと膝を落とした。何てことしてしまったんだ・・
「・・おれが、、神の力を奪った?・・・」
ひざまずく俺の前に神様が仁王立ちした。
「君は・・・ボクの力を奪ったのかい?」
ゴゴゴゴと神様が凄んだ。そしてボクっ子だった。
「い、いえ、決してそんなつもりは」
「ボクは力をなくし、普通の人間になってしまった」
「・・・」
「嗚呼、これからどうやって生きていけばいいんだ・・・」
なんか芝居がかってきた。ていうか普通の人間はその状態で生きるんだが・・
「お、俺があなたを守ります。」
とっさに話のノリで口から出てしまった。
「フフ、フフフフフ、その言葉が聞きたかった。」
「そうだ。君はボクを守る義務がある。そのための力なんだ!!」
「は、はい・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・なぁんてね」
「?」
「そもそもボクの転生の技術不足だったんだろうし、この世界でこの状況で二人とも何の力もないよりマシだね。」
結局この神様は、俺に自分の力を吸われた挙句、共に下界におろされてしまったのだ。
逆の立場なら発狂してしまう状況だ。
「うう・・・ごめんなさい・・」
神様のミスとはいえ、最初のきっかけを作った罪悪感はぬぐえない。
いいだろう、この力でこの子を守ってみせようじゃないか。
「フフ、頼りにしてるよ。そのちから上手く使ってね」
跪いたすっぱだかのおっさんが、
すっぱだかの少女に頭をなでられている。
ポンコツだけど寛大な神様で助かった。
とにかく、大きな布を作り、真ん中に頭を通す穴をあけて、体を覆う服を作った。
「そういえば、”神様”呼びはまずいですね」
「そうじゃのう、われの名前は一応あるぞよ」
突然インチキ神様みたいな口調になった。
この子、見た目に寄らずノリがいい。
「何て名前ですか?」
「われのなまえは《カナハ》なり」
「よろしくカナハちゃん」
「ちゃんをつけるなおっさん。良い名でしょ?君の名は?」
「見た目が前世なので、名前も昔の名前で行きます」




