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15話 久しぶりの二人きり

家に帰ってきた。

昼の熱気が影へと溶け出し、空は深い藍の底へと沈んでいた。


要は夜だ。


荷物を降ろして納屋に入れ、暖炉の火をおこした。


「うう・・サムイ」

「寒くなってきましたね。すぐお風呂入れますね」


「ハルミチ・・一緒にお風呂入ろ?」

「え?なんで?」

ついタメ口で反応してしまった。


「・・なんとなく。一緒に入ったらあったかいよ?」

「そ、そうですね。いいですよ」


どうせこの二人の出会いはすっぽんぽんだし、たまに風呂上がりすっぽんぽんで歩き回ってるし、いまさら裸を気にする間柄でもない。


親子設定は成り行きで崩れ去ったが・・


「先に体洗って入りますね」

「うん」


ううううサムッ!

子供ならまだしも、この風呂場は大人二人で洗うスペースはない。

なので俺が先に体を洗って湯船に入る。


「え”ぁぁあああ”・・・あ”ったけぇぇええ”」

これがおっさんの正しい入り方だ。そうだろ?


ガラガラ・・・

カナハがタオルで体を隠して、なんかしおらしく入ってきた。

大股開きで入ってくると思ったのに。


これ傍から見たら、高校生の娘が仕方なくむりやり

お父さんといっしょに風呂に入らされているようなシーンだ。


『おとうさん、発想がほんっとキモいんだけど・・』

架空のオレの娘が白い目で見ている。


カナハがボディタオルを石鹸で泡立てて体を洗い始めた。


「夜ご飯何にしますか?」

「・・・なんでもいいよ」


あれ?普段はピンポイントでオーダー来るんだが。


「ええ・・それ一番困るやつじゃないですか・・」

「フフ・・それボクも言った気がする」


「そうですね。転生する世界、お任せしますよって言った時」

「そうそう!おかげでこんな世界に飛ばしちゃったじゃん」

「いきなりドラゴンと戦ったのはやばかったですね」


体を洗い流し、カナハは俺に背中を預けるように湯船に入ってきた。

なんだろう、この罪悪感・・


「でも俺この世界でよかったですよ」

「どうして?」

「ベルデ村でしか人に会ってませんけど、この世界の人達いい人だし」

「うん・・・」


気のない相槌が返ってきた。カナハ的にはまだあの人たちは魂レベル低いのか?


「何よりカナハがいてくれるから心強いですよ」

「どうして?ボクは今は何の能力もないただの人間だよ?」


「なんでも受け入れてくれるし、なんかいつも楽しそうだし、見てて飽きないし、オレ一人じゃ不安で寂しかったと思います。」

「普通の転生じゃこんな体験できなかっただろうし、カナハのミスだろうけど、むしろミスってくれて助かりました」


「そっか・・・」

要はおもしれー女だ。しまった心読まれる。話をかぶせよう。


「そ、それに何の能力もないって言うけど心読めるじゃないですか」

「君に奪われた力もあったんだけど・・・」

「・・・ごめんなさい」

「フフ・・」


カナハは俺の腕をつかんで自分の体に回し、寄りかかってきた。


「ボクを守ってね」

「はい」


風呂から上がり、今日の朝、急いで出たために残っていた

マグヌス特製野菜スープとナンがあるのを思い出した。


「これ温めなおして食べてしまいましょう」

「そうだ。料理教えてね」

「そうでしたね。俺も料理得意なわけじゃないけど、知ってる知識教えます」


スープとナンを温めなおし、お茶を入れた。ナンはもう2回温めてカピカピだ。



「人間って大変だね。さむかったり、おなか減ったり」

「そういえばカナハは人間として生きるのは何回目ですか?」

「はじめてだよ」


神様も何度か人間として修行したりするっていうの聞いたことあるけど。


「ずっと上から見ているだけだったけど、いろいろ実際に体験すると、

いろんな発見があって楽しいね」


「天界?にいたときはくたびれてましたもんね」

「あの時は特に魂多かったし・・・」


上の世界は上の世界でいろいろ大変なんだな。


「じゃぁ、明日から料理教室しましょう!」

「うん!たのしみ!」

「ごちそうさま!」


明日もやることがいろいろありそうだ。


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