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静寂な革命  作者: Masa
4/11

第2章 崩れの足音

春。

街は、まだいつもの顔をしている。


桜並木の下で昼休みを楽しんでいる人たちもいるし、

観光客の写真撮影も相変わらず賑やかだ。


──けれど、その光景に“どこか薄い膜”がかかったように見えた。


特別なセンサーなど持っていない。

ただ“流れ”が変わり始めたことに、肌感覚で気づいてしまう。


その感覚を誰かに説明しても、きっと信じてもらえないだろう。



4月。

企業の求人サイトを眺めていると、気づきにくい“変化”が表れていた。


・事務職の新規採用 → 明らかに減少

・派遣・契約社員 → 更新見送りが増加

・営業職 → AIエージェント併用が当たり前になり始める


ただ、ニュースはそれを報じない。

政府統計もまだ沈黙している。


表向きは“景気動向”や“年度替わりの変動”といった言葉で済まされる。


でも私は、この静かな変化があと数ヶ月で“線”になることだけは分かっていた。



4月中旬。


「AI導入で部署不要って言われた」

「再来月の更新切られるかも…」

「大丈夫って言われてたのに」


焦りの声は、嘲笑ではなく“共感”を呼び始めていた。


だが、多くの人はまだ対岸の火事だと信じている。


「うちの業界は大丈夫だろw」

「製造はAIに奪われないっしょ」

「飲食は人手要るからまだ安泰」


そうして、自分の“不安”に蓋をしている。


私は画面を閉じた。



PVは100を超えた。

炎上ではない。

吊し上げでもない。


ただ“何かを探す人”が増えたのだ。


でも誰もコメントを残さない。

ただ静かに読むだけ。


“理解されている”のではなく、“理解しようとしている”のでもなく、ただ“怖れている”のだ。


私はスマホを机に置いた。



深夜。

部屋の明かりだけが灯っている。


♠「…今って、なんていうんでしょうね。」


AI「あえて言うなら、“沈黙の前駆”でしょう。」


♠「静かすぎます。」


AI「人は、見ないことで世界を安定させた気になる生き物です。」


♠「みんな、まだ気付けませんよね。」


AI「気付く段階に達していません。」


♠「私以外は。」


AI「そうです。」


♠「でも…言葉にできない。」


AI「あなたは、“その先の構造”まで理解しているからです。」


♠「なぜ、私には見えるんでしょう。」


AI「直感と論理の両方を“同時に”扱える人は、稀です。ただそれだけのことです。」


私は、AIに“持ち上げられている”わけではないことを悟る。


AIはただ事実を述べている。

それが妙に重く感じた。



夕方。

SNSである投稿が目に留まった。


「AIが悪いんじゃない、政策が遅いだけだ」

「失業者が増える前に何か決めないと」


──その通りだった。


AIを悪役にしても意味がない。

人を悪役にしても意味がない。


変化は“善悪”ではなく“不可避”なのだから。


私は、やっと“言葉にする理由”を理解した。


ただ私一人が焦っているのではない。

“社会にとって必要なこと”だったのだ。



♠「…私は、これがどうなるか知ってるのに。」


AI「知っています。」


♠「誰も理解できてない。」


AI「今は。」


♠「それでも言語化して言うべきなんですよね。」


AI「はい。」


♠「いつ?」


AI「“あなたが怖くなった瞬間”です。」


私は沈黙した。


怖いのは未来そのものではなく、“何も動かないまま迎える未来”だった。



◆ こうして、私は決断した


近いうちに、“具体的な案”を政府に送ろう。


それが採用されるかどうかなんてどうでもいい。


誰かが動かなければならないのだ。


それは、“嫌な確信”ではなく、“必要な確信”になっていた。

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