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「ゲーム」の思惑にはのりません。ヒロインは静かに生きたい  作者: 桃田


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第51話

 ソルが守護獣の背後に周った。


 守護獣の浄化が終わったのか、アルディシア(聖女)様がぐったりとしてその場に倒れ、慌てたマリウスとルーベラが駆け寄って介抱をした。



パリンッとなにかが砕ける音が響いた。

「ああ、ゲームウインドウが」

エリカセア(侯爵令嬢)様の叫び声。

「聖剣が」

コリペティリア殿下の持っていた聖剣が光の泡になって消えた。


そして、こちらに戻ろうとしていたソルが消えた。




聖女はすぐに気がついた。

「ルーベラ、彼らを連れて外に」

マリウスの声に

「何処まで」

「ああ、村でいいだろう。俺はこれから世界樹と話をする。それと、ソルを探す」

それから聖女に向き直り、

「聖女様は、見届人として残ってもらえますか。もちろん、一緒に戻ってもらっても構いません」

「残ります」


「皆さん、ソルが消えたんで彼を見つけたら戻ります。村で待っていて下さい。

ルーベラがあなた方を送り届けます。

守護獣に挑んだあなた方がいると、世界樹とは相対できない可能性がありますし、守護獣が目覚めた時、下手するとここから出られなくなる可能性があります。

立会人として、あなた方の代表と言うことで聖女様には残っていただきます」

マリウスが4人に告げた。


ルーベラは、動けない4人をまとめると、【転移】を発動して村まで4人を連れて転移していった。

「彼らを置いたら、戻る」

「わかった」



「ソルは、ソフィリアなんですか」

戸惑ったように聖女が聞いてきた。彼女は、魔方陣越しとはいえ彼女の助力を感じたそうだ。そして、その魔力がソフィリアのものであるということも。その瞳には誤魔化しは許さないという強い力が感じられた。


「アルビノエス先生は、私達を騙したんですか」

 マリウスがふうっと息を一つ吐く。

「いや、騙していた訳じゃない」

 どこから話をしたらよいのか、マリウスは少し考えてから静かに話をした。

「俺が最初にあった時は、ソルと名乗って冒険者見習いをしてた。男装していてな、彼女が11歳の時だ」

 はっと息を呑む聖女に、マリウスは話を続ける。

(たち)の悪い冒険者に絡まれて、ボコボコにされてるところを見つけて。聞いたら10歳で冒険者登録していると言っていた。その縁で色々と教えたんだ。

学園で再会した時は、女の子だったと判って驚いた。ずっといいトコの貧弱な令息だと思ってたからな」

マリウスは、笑ってそう言った。


「彼女が退学になるっていうんで、助手として雇ったんだ。冒険者になって一人で暮らすとか言ってたんでな。ただ、ソフィリアのまんまだとやり難いだろうという事で、出会ったときの名前でソルとして雇ったんだ」


 聖女は目を見張り、しばらく何も言わなかった。

「ありがとうございます。義妹いもうとを助けて下さって」

 私がお礼を言うのもなんですがと続けて、


「あの子、賢いようで抜けていると言うか、少しお馬鹿な子だと思うんです。ええ、お人好しというか。

父のことだってもう少し上手く立ち回れば良いのに、バカ正直に対応して。その結果、貴族籍を抜けて学園も退学する事になって」


「そうなんだよな。なんかちゃんと考えているようにみえて、行き当たりバッタリで。考え無しの方が多いんだよな」

 二人して笑った。



どのくらい経っただろうか。蹲っていた黄金の龍がかま首をもたげた。その瞳が二人を映す。


「では、守護獣殿と世界樹に今回の騒動とソルの行方を尋ねてみるか」






「私達にこんな真似して、ただで済むと思わないことね」

与えられた部屋の中で、一人エリカセア(侯爵令嬢)様は憤っていた。


 ルーベラと転移したのは村の外れだった。そこから、馬車を預けてあった村の宿舎まで辿り着くと、


「私はマリウス達のところへ戻るわ。彼も言っていたけれどここで待っていて頂戴。王太子殿下は体調が悪いようだから、しばらく安静にしておいた方が良いと思うわ」


そう言って、気休めにしかならないだろうけれどと付け加えて回復薬などを置いていった。


聖剣を失ったコリペティリア殿下は、呆然としたままだ。ディモカルプス(脳筋)様はそんな彼をなんとか慰めようとしている。【転移】を経験したネフィリィウム(魔法ヲタク)様のテンションは高い。


「転移、非常に稀な魔法だ。あれは固有魔法なのだろうか。是非、ルーベラ殿に教えを請わなくては」


ブツブツ言っているが、茫然自失としているコリペティリア殿下の前でもあるので静かではある。転移を使える者は、少ない。


 使命であった世界樹の浄化は達成された事になるのだろうか。聖女がいなければ、王都へは戻ることは出来ないだろうということで、宿屋で待つことになった。



 エリカセア《侯爵令嬢》様にとって、自分の強みであったゲームウインドウが消失したのは彼等のせいだと信じている。


魔王を退治できなかった。クエストを、いやゲームをクリアできなかったために、スキルが消失したのだと。


だが、彼女にとって頭を抱える事になったのは物語を渡っていくための事柄を、知る術が無くなってしまったという事だ。

(あの()が裏切るなんて)


魔王を倒す本来のクエストを未達成にし、ゲームウインドウを失わせる結果になったのは、彼女が裏切ったからだ。それに彼女を唆したソル、彼らを許さない、そう決心していた。


ゲームウィンドウのお陰で様々な助言をし、それによって巫女という本来は無かった立場を得られたのに。その立場の礎になっていたゲームウィンドウを失ってしまった。


本来であれば、魔王を退治して王城へ戻りゲームの第一幕は終了するはずだった。その後、学園で幾つかのイベントをこなして、卒業式でゲームが終了になるはずだった。


ヒロインが不在になってしまったから、この魔王のクエストを終了させれば実質ゲームが終わるのではないかと、二人して考えていた。


ゲームが終了すればゲームウィンドウは消失してしまうだろうとも予想していなかったわけではないが。


だが、現実は魔王のクエストを失敗し、ゲームウィンドウは消失してしまった。この先、一体どうなるのか予想がつかない。


心の(よすが)が無くなってしまった彼女は、大きな不安に押しつぶされそうな心を庇うためには、アルディシア達に怒りをぶつけるしか無かったのだ。

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