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「ゲーム」の思惑にはのりません。ヒロインは静かに生きたい  作者: 桃田


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第16話 夏休みったら、夏休み

 友達ができて、勉強は大変でも何か楽しくなってきた。それに、なんといっても魔法が楽しい。まだまだ基礎だけど、一つずつ覚えていって、出来ることが増えてくる。


そうやって前期が終わった。学期は二分されていて長期休暇は夏と春だ。8月上旬から9月いっぱいまでが夏季休暇だ。短期で年末年始もあるけどね。学期は前世の大学と同じような感じかな。


「ソフィリア様は、夏はどうされますの ? 」

「王都にある家に帰ります。義姉あねの事もありますし、長期休暇でしなくてはならない事がありまして、それに集中しようと思っています」


「そう、なら夏季休暇中はお会いできないのかしら」

 少し残念そうにエスメラルダ様に言われた。

「そうですね。皆様は領地に行かれるんですよね」

「ええ。王都に戻るのは休暇明け前かしら」

「それでは、新学期に」


 皆さん、長期休暇ではそれぞれ領地に行ったり、避暑地に行ったりするそうだ。お互いに訪ね合う予定も立てているみたいだ。皆さんからお誘いがあったが、今回は丁寧にお断りした。王都から離れられない用事があるからと。


 この長期休暇は、冒険者ギルドで仕事をするつもりだ。帰った直後は様子見して、大丈夫そうだったら、前と同じようにアンに留守番をお願いできるだろう。


 家へ戻ると男爵様が迎えてくれた。想定外で、びっくり。お茶を飲みながら、学園の話をした。姉は帰っていないようだ。


男爵様おとうさま、お仕事は大丈夫なのですか」

「おや、心配してくれるのかい。娘が久々に帰ってきた時ぐらいは、こうして会うぐらいは問題ないよ。今日は、夕食を一緒にとろう」

 穏やかな表情で男爵様はそんな事を言ってくれた。

「ありがとうございます。嬉しいです」


 明日から仕事でまた暫くは居ないと付け加えて言われた。だけど、時間があれば一緒に食事をしたいとも。学園に行く直前は、あまり話す機会もなかったのを気に掛けてくれていたようだ。なにか申し訳ない気持ちになる。


 それで申し訳ないとも思ったのだけれど私にも冒険者のお仕事がある。だから、学園でお友達ができて、そのお友達と約束することもあるので、前もって一緒に食事をする時は事前に言ってほしいと言ってみた。


「友達ができたのか、それは良かった。勿論だとも」

 男爵様が嬉しそうにそう言って、夕食を共にとれる時は前日に教えてくれるということになった。少し良心が痛んだが仕方ない。


 この日の夕食は母が同席していなかったのでどうしてかを聞くのがなんとなく聞きそびれていたら、そんな私に気がついたからだろうか、


「そうそう、お前に弟か妹ができるよ」

 母は、そのため部屋にいるそうだ。なんと、なんと。


「そ、それは、嬉しいです」

 引き攣った笑顔になっていなかったか、心配だ。


男爵様は、子供が出来たことをとても喜んでいたのが印象的だ。でも、義姉の話は一言も無かった。義姉は、やっぱり帰ってこなかった。


 その後は、男爵様は相変わらず忙しそうだし、母も殆ど顔を合わさなかった。男爵様とのお茶の後に、母のところには挨拶に伺った。


「ごめんなさい。具合が悪いの」

 ベッドに寝ている母は、こちらを見もせずそう言った。


「判りました。お体を大事にしてください。失礼します」

 そう返してすぐに退いた。母は前のように殆ど干渉してこないようだ。


 折を見て、義姉の経費の定期的な振り込みが成されていない件について、男爵様に話をしてみた。義姉は奨学金を貰う特待生になっていることも話した。

 この奨学金は普通の貴族の子女でも、お家の都合で利用する者はいる。うちは経済的に問題がないのに、姉が特待生という事で少々男爵様にとっては不面目ではあるはずだ。学費は支払われていても、それ以外の経費の振り込みが無いため、義姉が手続きをとり特待生となったという経緯を話した。母が手を回しているのだと思ってはいたけれど、それは口にしなかった。


「手続きのミスかなにかかな。アルディシアには申し訳ないことをした。私の方で直ぐに手続きをしておこう。ソフィリア、君の経費の振り込みは大丈夫だったのかい」

 と、男爵様が手続きをしてくれると言ってくれた。


 これで、義姉の金銭的な問題はなくなると思いたい。母は妊娠中で動けないだろうから、邪魔はできないと思うんだけどな。

実家からお金が届くようになったからといっても、奨学金を返せっていう話にはならない。この学園の奨学金は、返却義務がないからだ。特待生ということで、その気があるのであれば上の学院に行くために貯金しておくという手もあるだろう。



 休暇中はギルドのお仕事を再開。男爵様とのお食事は、連絡があるので、なんとかなるだろう。休みの間は稼ぐのだ。マリウスさんと別れる時は学校の長期休暇での仕事の短期営業を知らなかった。だから、もう会えないと思っていたけれど、マリウスさん、いるかな?


「鉄級になったけど、下水道掃除もやりますよ、是非。学校で清掃を習ったんです。自分の魔法で清浄を使ってみたいので!」


 そうミリィさんに言うと、満面の笑顔を見せてくれた。

「他の場所だと、清掃でも良い所もあるけれど。下水道掃除は清掃だけだと足りないのよ。清掃は、綺麗にお掃除したのと同等だけど、清浄は浄化作用も含まれるから。ほら、小さな魔石が落ちてたって言ってたでしょう。あれは浄化作用で、そこにいたスライムなどが消滅したからなの」


「大丈夫です。清浄もできます」

 あの後、調べたのさ。そして練習もした。ということで、今度はミリィさんと一緒に、確認のため近くの下水道の入り口まで行き、清浄魔法を使う。即座にOKがでました。


「ソル君て、なんて有能なんでしょう。これからも期待してるわ」

 依頼料に清浄魔法の魔方陣符代も含まれるようになり、ちょっと割高でお仕事を引き受けられるようになった。ミリィさんの覚えがますますめでたくなった。


 冒険者の仕事は順調で、お金が貯まっていくのが嬉しい。お小遣いも貰ってはいるけどね。先々のことを考えると、自分の自由になるお金はある程度持っていた方が良いから。

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