第14話 お友達は奥が深い?
彼女たちと色々と話をするようになり、授業内容についても話題に上がった。
座学については何ら問題がないのだが、魔法学の実践については、中々難儀しているようだ。皆、生活魔法についてはそれなりに扱えるようにはなっているのだが。
「また、指摘されてしまいました。どうしてもこの部分が上手くいきませんの」
ギネヴィア様が魔力鍛錬の話をした時のことだ。鍛錬は幾つかの段階がある。まず体の中にある魔力を体内に巡らせる。
その魔力を巡らせるルート経絡があり、その経絡を順繰りに魔力を巡らせる。その過程で、彼女はどうも左肩から左手の親指に魔力を流すのが苦手らしい。
「試しにやって見せて頂いてもいいですか ? 」
そう言うと、目の前でやって見せてくれた。それで、少し顔を顰める。
「この二の腕から上腕に至る部分で、どうにも突っかかるような感じがして」
眺めていると、腕に魔力の流れを感じるそれがどうも肘窩の部分で引っ掛かっているような気がした。
なんか、そう言えば、ここにツボがあった気がする。何の気なしに、彼女の肘窩の澱んでいるような気がする部分を掴んで、親指でココかなと思った場所を押してみた。すると、
「すごい、どうなっているのかしら、上手く流れているわ」
上腕に途切れ途切れに流れていたような魔力が一気に綺麗に流れるようになったと言う。
「ありがとう。全身が軽くなった気がするわ」
それは、気のせいだと思う。
「いえ、お役に立てて良かったです」
そのやり取りを見ていたら、周囲から声をかけられた。
「まあ、私も見て頂けないかしら」
ということで、鍛錬のコツについての話に発展していった。
しばらく、皆でやっていたら、何故か人の魔力の流れが見えることに気がついた。急に見えるようになった。これは、みんなも見えるものなのだろうか、それとも時期があるのだろうか。誰もそんな事を言い出さなかったので口を噤む。グレンジャー先生に確認してみよう。
そんな事が切っ掛けになって、休み時間などに皆で一緒に鍛錬をしている。他にも他の授業の内容などについても、情報交換をするようになった。そうした中で、上級貴族の人達の物の見方などを教わったりしてかなり勉強になっている。彼女たちは逆に、下級貴族や平民の視点をもっている私の感覚が面白いようだ。
彼女たちの視野は広い。自国の情勢だけでなく、他国の状況や国交までもその興味は及んでいる。毎日新聞を読んでいるとも聞いた。寮の共有スペースや図書館にも新聞が置いてあるが、それぞれ自分でも購入しているのだという。
ルフィネラ様は数社分の新聞を毎朝チェックしていると言われた。
「あら、各新聞によって提供している記事が違いますし、得意分野がそれぞれにありますのよ。あまり人々に知られたくない事に関する記事は、一社か二社で一度小さく載せられていることとかもあって、面白いですわ」
そういえば、マリウスさんが言っていたことを思い出した。
「常に社会情勢に関しても、情報を集めておけ。どこで、どんな情報が役に立つかわからないぞ」
と。男爵様が国際情勢などを話題にするのは、商売関係だからだと思っていた。でも、それだけじゃなかったんだという事に気がついた。
そうはいっても、いつも小難しい話をしているばかりではない。一緒にご飯食べたり、お喋りしたり。流行のドレスの話やお菓子の話、婚約者の話など女の子同士の会話も盛りだくさん。
そういえば、お菓子の話ではうちのお菓子の話題もでてきた。
「そういえば、男爵家には特別なお菓子があると聞きました」
すごいね、たかが男爵家のお茶会のお菓子まで情報を得ているって。
それではということで、材料を注文して寮にある簡易キッチンでお饅頭を作って、皆さんにご馳走しました。カスタードクリーム饅頭です。ちゃんと求肥で包むのです。
ついでに中華まんのカスタードクリーム版も作ってみました。大変、喜ばれました。調子に乗ってつくった塩っぱいお煎餅は不評でした。何故だあ !
結果、月一皆でお茶会をすることが決定されてしまった。お菓子は、持ち回りで提供することになり、各家のご自慢のお菓子をお取り寄せすることに。私も、カルロスに頼んで彼のお菓子を送って貰おうっと。
友達といるのは、楽しい。確かに魔法を学ぶためにここに来た。卒業したら、冒険者になろうと思っている。そうなったら、同級生とも会う機会もないだろうから、ボッチだって関係ないと思っていた。いや、ボッチだったから言い訳かな。でも、それは随分と視野が狭くなっていたと気が付いた。
そんなある日の昼食時。
「全く。兄は妹離れができなくて困ります」
愚痴をこぼしたのはミリアーサ様だ。
学年で2つ上なのだが、この前ミリアーサ様に言い寄ってきた羽虫を退治すると言って、クラスまで顔を出してきた。相手の男子は相当ビビっていた。
「あら、そんな事言って良いの。先日、お兄様が隣国へ行ったときに素敵なオルゴールをお土産で貰ったと喜んでいたでしょうに。妹離れされてしまったら、もうお土産はないかもしれないわよ」
ギネヴィア嬢がころころと笑いながらそういう。
「そう言えば、ギネヴィア様の弟君が『うちの姉をよろしくお願いします』と先日、言われましたわ。貴方もミリーア様の事を言えないのじゃなくて」
ルフィネラ様も揶揄うようにそう言い添えた。
皆さん、家族とは表面上は仲良くいってるようだ。表面上はというのは、穿ち過ぎかもしれないけどね。いや、貴族に対する偏見かな。
「そういえば、ソフィリア様のお姉様は、大変優秀ですってね。お姉様は、ご自宅ではどんな感じなのですか」
ミリーア様にそう聞かれて、なんと言ったらいいのか戸惑った。あの観察者のような眼差しが頭に浮かんだが、それ以外の義姉を思い描けなかった。




