第13話 お友達、できました
授業が終わり、これからお昼だ。清掃も使えるようになったこともあり、ちょっとルンルン気分になっていたのだが。
「フン、掃除が上手くなったぐらいでいい気になるなよ。俺たちは、自分で清掃なんてしなくても良い立場なんだからな。
でも、それくらいの腕ならば、学園を出てから、何処かに掃除婦として雇ってもらえるかもしれないな。良ければ俺が口をきいて紹介してやっても良いぞ」
授業の後、なんかグダグダと言ってくる奴がやってきた。自分がしょぼかったので、言いがかりをつけたいのだろうか。彼がどれほどの範囲だったのかは知らないが。
清掃がショボくったって、いいじゃん。ギルドで仕事、受けるわけじゃないんだから。お前の言うようにお貴族様は自分で掃除なんかしないでしょうに、なんて思いながら聞き流していた。
学園内では、身分を振りかざすことは下品とされている。一応は平等扱いになっているからだ。そうでないと先生によっては、身分が上の生徒を扱えないという話が出てくる。それでは困ってしまう。
だから、学園内に階級があるとすれば、先生と生徒だろう。平民だからと先生を馬鹿にした伯爵の息子は、この学園を退学になったそうだ。
そうかと言って生徒同士も完全に平等なんてことは、残念ながらあり得ない。今は良くても、将来の遺恨になりかねない。何か失礼な言葉を返すと後々厄介だ。しかし、授業での忖度はしてはならないと言われている。これ、上級貴族が忖度させると、罰せられるのだ。最悪退学になる。
話が逸れました。
身分は持ち出してないし、忖度しろと言うのでもない。やっかみですね。それならと黙ってジッと静かに、感情を乗せずに見やった。目があったそいつ(ごめん、名前覚えてないや)は、言葉が継げなくなった。次の言葉を待つ風にしてじっと見つめ続けた。
相手の様子を見ていると、なんか蛇に睨まれた蛙? みたいだなあと思っていたら、フイっと顔をそむけて、それ以上何も言わずに行ってしまった。何だったんだろ。目をそらしたのは向こうからだから、勝ったな。無礼にもなっていないはずだよね、ね。
さて、蛇と蛙の睨み合い? が終わり、去って行った後ろ姿を眺めていると、後ろから声を掛けられた。
「貴方、面白い方ね」
振り向いてみると、おお、Theお嬢様という雰囲気だ。確かエスメラルダ侯爵令嬢のルフィネラ様だったかな。女子の名前は把握しています。
彼女は笑いをこらえているようだ。お嬢様は、笑うのも大変なんだな。こういう時は、なんていうのが良いのだろう。
「お目汚しをいたしました」
そう言ってお辞儀をし、去ろうとしたけど。なんか気に入られたようだ。
「お待ちになって。もし宜しければ、昼食をご一緒しませんこと」
引き止められて、一緒にお昼を食べることになった。どうしてこうなった。
さてさて、しばらく二人で歩いていったのだけれども。エスメラルダ様、周囲に人がいなくなる場所に来ると、大爆笑だった。その後、カフェテリアでお昼をご一緒した。それをきっかけにして、よく話しかけられるようになった。
「私、貴方が気になっていましたの。でも、中々声を掛ける機会がなくて。あれは、威圧でしたの ? ヴォルテール様は真っ青でしたわね。あの方は、何かと偉ぶる方ですから、あまり女子には人気がないのですよ」
「威圧ではないと思いますが。他に何か言うことがあるのか、黙ってみていただけです」
いや、本当に観察していただけです。
「まあ、それにしては迫力がありましたわ。何か武芸などを学んでいらっしゃったのかしら」
エスメラルダ様は楽しそうに聞いてくる。
「はい、少しだけですが」
マリウスさんに仕込まれたのは、武芸と言っても良いと思う。正確には喧嘩の仕方だけど。
先ほどの出来事の話をしていると、他のクラスメート達が寄ってきた。
「まあ、ルフィネラ様、抜け駆けはいけませんわ。私たちもご一緒しても」
「抜け駆けではありませんわ。先ほど、少し面白いことがありましたの」
気がつけば皆と一緒にご飯を食べる事となった。
ルフィネラ様もあのやり取りがお気に召したようだ。
「面白かったわ」
とご満悦だったから。ルフィネラ嬢に奴と私のやり取りを聞いて、
「私も見たかったですわ」
なんて他の人達にも言われた。
それが切っ掛けで彼女のお友達、他の女子のクラスメートとも話すようになった。当然だが、皆様は上級貴族だ。少し心配したが、蔑まれたりはしなかった。
「ここでは、両親の爵位などは気になさらないでね。皆、名前で呼んでね」
とまで言ってくれたのだ。
「ソフィリア様って、男爵令嬢にしては堂々としていて、孤高の狼の様に見えましたわ。お声がけしようと思っても、何か近寄りがたい雰囲気があったのですよ。寡黙な印象で。だから、周りの方も、話しかけにくかったのですよ」
メリオスマ侯爵令嬢のミリアーサ嬢にそう言われた。いえ、単にどうして良いか判らなかっただけです。ただ、シャンとして周囲の状況に気を配らないとと思っていただけで。
あれ、森の中にいるわけじゃないから、そこまでしなくてもいいのか。あれ、思ってた以上に緊張してた ?
「そうね。非常に大人びた雰囲気でしたし。殿方のような凛々しさを感じましたわ。あの清掃の魔法も凄かったわ。まるで清浄魔法のようでした」
ピスタチア伯爵令嬢のアクシィア様が褒めてくれた。清掃と清浄、そういえば何か違うんだろうか。後で調べなくては。
「あれは、先生のお力添えもありましたので」
手放しで褒められるのが少し照れくさかった。
「何を仰るの。それだけで、あんなに広範囲にできませんわ。きっと魔力量が多いのでしょうね。誇るべきだわ」
「それだけじゃないですよ。その前日での剣術の授業で、男子がタジタジだったでしょう。いつも横柄な態度のヴォルテール様に一本取ったときは、胸がスカッとしましたわ」
そう続けて言われて、真っ赤になった。いや、褒められ慣れていないので。剣術の授業、そうか思い出した。ヴォルテールって、嫌味を言ってきた奴か。そっか、それで絡んできたのか。
「あら、可愛い。照れてらっしゃるのね」
ケルクス伯爵令嬢のギネヴィア嬢にからかわれた。




